江戸時代から続く穴場 。北アルプス・大滝山へ【山と溪谷7月号】

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月刊誌『山と溪谷』2025年7月号の特集は、「知る。歩く。北アルプス」。発売中の7月号から、大滝山のコースガイドを紹介です。大滝山は北アルプスのなかでも人が少なく、静かな山歩きができますが、そんな大滝山の登山道のルーツはなんと江戸時代にあることが分かりました。

文・写真=三宅 岳

伸びやかな稜線が続く大滝山の山頂部
伸びやかな稜線が続く大滝山の山頂部。その向こうは常念岳方面の山々

常念山脈(じょうねんさんみゃく)といえば、燕岳(つばくろだけ)や蝶ヶ岳(ちょうがたけ)などにぎやかな山が多い。一方で、穏やかで静かなのが、蝶ヶ岳と徳本峠(とくごうとうげ)との間にある大滝山(おおたきやま)。山頂からは槍・穂高連峰などのすばらしい展望が楽しめる。大滝山には北峰と南峰があり、その間、樹林を背に立つのが、小体な大滝山荘である。開設期間が短いので、同じ経営母体で比較的近い蝶ヶ岳ヒュッテが満員の時でも、大滝山荘なら宿泊可能、ということも多々ある。

一方、その歴史は蝶ヶ岳ヒュッテよりずっと古い。地元、小倉(おぐら)地区の人による創建はなんと1922(大正11)年。1932(昭和7)年ごろに、蝶ヶ岳ヒュッテを作った中村義親(なかむらよしちか)さんの父親である中村喜代三郎(なかむらきよざぶろう)さんが引き継いで以降、中村家代々で経営を続けている。

鍋冠山付近の針葉樹林
鍋冠山付近の針葉樹林。鬱蒼とした木々の中、登山道が続く

なお、三郷(みさと)スカイラインから鍋冠山(なべかんむりやま)を経て大滝山へ至る現行登山道のルーツは、江戸時代の「飛州新道」(ひしゅうがいどう)にまで遡る。岩岡村(現・松本市)の庄屋、伴次郎(ばんじろう)と小倉の中田又重(なかたまたじゅう)が中心となり、16年もかけて開通にこぎつけた苦難の道。江戸時代の終わりごろ、播隆上人(ばんりゅうしょうにん)が槍ヶ岳に登った際にも利用された由緒ある道なのだ。

MAP&DATA

高低図
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最適日数:1泊2日
コースタイム: 【1日目】5時間50分
【2日目】4時間15分
(いずれも鍋冠林道登山口~冷沢分岐までのコースタイムは含まない)
行程:【1日目】
鍋冠林道登山口・・・冷沢分岐・・・鍋冠山・・・大滝山荘(泊)
【2日目】
大滝山荘・・・大滝山・・・鍋冠山・・・冷沢分岐・・・鍋冠林道登山口
総歩行距離:約14,400m
累積標高差:上り 約1,260m 下り 約1,260m
コース定数:36
アドバイス:林道から登山道に入る冷沢分岐付近で、一時期道迷いが多発した。水分補給などで沢に向かい、そのまま違う方向へ進んでしまうパターンであったようだ。分岐では鍋冠山・大滝山方面を示す道標に従うこと。

山と溪谷2025年7月号より転載)

この記事に登場する山

長野県 / 飛騨山脈南部

大滝山 標高 2,616m

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。

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雑誌『山と溪谷』特集より

1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。

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