北アルプス・燕岳で絶景テント泊
北アルプス燕岳(つばくろだけ、2763m)で絶景を楽しむテント泊。
文・写真=興津 剛
こんにちは、ビストロきっちょむ登山隊の興津(おきつ)と申します。山に登りだして、今年で15年。山の魅力を伝えたい!という想いで、日本中の、時には海外にも登山に行って、その様子をレポートにして、自分のサイトに掲載しています。今回からご縁をいただいて、山と溪谷オンラインさんでもレポートを書かせてもらえることになりました。
自分のサイトのレポートは少しラフな文章で、パジャマのまんま机にふんぞりかえって書いているんですが(笑)、今回は日本の山岳史に燦然と輝くヤマケイさんに書くってことなので、洗濯したての勝負パンツに履き直して、正座で真面目に書きたいと思います!
話は突然ですが、ちょっとこだわりが強いおそば屋さんとかで、食べようとしたら「最初は塩だけでお召し上がりください。そうするとそばの風味がよくわかりますので」とか言われるのって、得意ですか? 私、そういうの本当に苦手なんです。「好きなように食べさせろよ、うるせーな!」って思っちゃうタイプなんです(笑)。
山でも「その山に行ったら、あそこに行け!」とか「その山に行くなら、こっちのルートがいいぞ!」って言ってくる人って、いますよね? やっぱり、私はそういう人も大嫌いなんです。うぜーなぁ、って思っちゃいます(笑)。山の魅力って、人それぞれ、自分の好きなように楽しめることだって、思うんです。山頂まで行かなくてもいいし、疲れたら途中で帰ってきちゃってもいい。その自由さ、優しさが私は大好きです。そんなふうに、自由で優しいレポートを書いていければいいなって常に思っております。
この日は大天井岳(おてんしょうだけ)に行くはずだったんですが、バスの乗り換えなどでだいぶ入山が遅れてしまったので、急遽燕山荘にテント泊することにしました。燕山荘に泊まったのは今回が5回目。燕山荘に来た、通りかかったのは15回目とまぁまぁ来てます。そんな燕岳・燕山荘ですが、来るたびに思うことがあります。それは「絶対に泊まったほうがいい!」ってこと! 泊まると夕焼け、朝焼けのすばらしい景色に出会うことができます。もちろん日帰りでも最高なのは間違いありませんよ。でも「日帰りで行ってきました!」っていう人がいたら、必ず言っちゃうなぁ、「絶対に泊まりで行くべきですよ!」って(お前がうぜー!笑)。
現在、燕岳の登山口となる中房温泉までは、途中の道の路面崩落によって、一般車では行くことができません。お盆前までには復旧するって話のようですが、それまではマイカー組も、穂高駅などからバスでエントリーする必要があります。この日のバスの始発は、安曇野の里を6時25分(7月12日以降はさらに早い時間のバスが出るみたい)。
バスに揺られ山道を進み、崩落現場の手前まで来ると、バスを下ろされて崩落現場を過ぎて、その先へ。燕山荘などの車両が待っていて、ピストンで登山者を運んでくれていました。が、平日だったのに、乗り換え地点は大行列。乗り換えるのに1時間以上かかってしまいました。ここの乗り換えが先頭の方でテンポよく進んで、サクサクと登っていけるのなら日帰りでもいけるみたいですが、普通の人が余裕を持って日帰りで帰ってくるのは、ちょっと難しそうでした。
この季節の燕岳へは残雪ももうないので、チェーンスパイクなどは使用せずに行けます。このルートは何カ所もベンチが設置されているので、そのベンチで休憩しながら少しずつ進めます。第3ベンチから富士見ベンチの区間が一番傾斜があって大変ですが、この区間さえ登ってしまえば……
途中の合戦小屋では名物のスイカを食べられます! 塩をかけてスイカを食べれば、パワーと塩分を回復!
合戦小屋を過ぎると、天気がよければ槍ヶ岳が見えます。少しずつ樹林帯を抜けてきて景色がよくなってくると、テンションが上がってがんばれますよね! 合戦沢ノ頭までくると、完全に視界は開け、燕山荘も見えます。こうなったら後は景色を楽しみながらのビクトリーロードです!
つまり「合戦小屋まで来たら燕岳に着いた!」と断言しても過言ではありません(笑)。
なーんて、言っておきながら、燕山荘への最後の登りはまぁまぁつらいです。最後は階段地獄ですが、なんとか燕山荘に着いたぜーー! この顔、めっちゃいいね(笑)
燕山荘から見る燕岳。本当に美しいですよね。これは生成AIなんじゃないか!って疑っちゃうほど、完璧な景色。
燕山荘から燕岳へと歩き出すと、すぐにイルカ君と出会えます。このイルカ岩はもう完全にイルカにしか見えませんので、これは生成AIです(笑)。
燕岳からは、どこまでも続いている裏銀座の山々を見ることができます。ずーーーっと、歩いてみたくなりますね。
燕岳の山頂に到着。三脚を置くことができないほど狭い山頂。
山頂の直下にはベンチになる岩があるので、三脚を立ててメンバーで記念撮影。
この日はテント泊。燕山荘までのんびりと戻ってきたら、特等席で乾杯!
少しずつ陽が傾く中、燕山荘のベンチで絶景レストランがオープンしました。営業時間は17時〜18時。不定休。アクセスは穂高駅からバスと徒歩で6時間!(笑)
夕焼け色のイルカ岩と槍ヶ岳。この時間になると宿泊の登山者しかいないし、お泊まり組はだいたい小屋で夕日を眺めているので、イルカ岩まで来ると貸切です。
周囲に我々だけということを確認し、ドローンを出動。こんな景色が撮れちゃうドローンは、完全に反則です(笑)。※ドローン飛行許可申請は取得済み
19時12分日没。でも本番はここからなので、まだ小屋に戻っちゃダメです。
日没から5分後。槍ヶ岳の空が燃えてきました。
10分ほどで夕焼けタイムも終了。でも余韻がすばらしくて、ずっと空を眺めたままでした。
さらに10分後、ブルーモーメントが訪れました。青い世界と燕岳。
この日はほぼ新月。真夜中には天の川が見えたって!(俺は寝てたけど(笑)。)
朝にはこの朝焼け。朝早起きしたごほうびがすごすぎました。
どうでしょうか? やっぱり泊まりって最高だ!って思っていただけましたか? 私が泊まりを押し付けてくる、うざいおじさんになっちゃうのもわかってもらえたんじゃないでしょうか(笑)。
道路の崩落事故があって、ちょっと行きづらくなってしまっている燕岳ですが、逆に少しすいてていい!って考え方もできると思うので、よかったら行ってみてください。
え? もちろん、泊まりで!(笑)
(山行日程=2025年6月27~28日)
この記事に登場する山
プロフィール
興津 剛(おきつ・つよし)
静岡県静岡市出身。本業は登山隊の隊長。 副業はフォトグラファー、キャニオニングガイド、WEBデザイナー。2011年より山のHP「ビストロきっちょむ登山隊」を運営。最近では登山ツアーや、ポップアップカフェなど、みんなで「ワハハ!」ってできるイベントを定期的に開催中です。山に行かない日はジョギングと水泳をして、ダイエットに励む日々。今年の目標は、あと2kg痩せたい!
今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。
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