大自然に包み込まれる雲ノ平テント泊

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読者レポーターより登山レポをお届けします。yamatsuzukiさんは2泊3日で憧れの雲ノ平(くものだいら)へ。

文・写真=yamatsuzuki

1日目:折立~太郎平小屋~薬師岳~薬師峠キャンプ場

初めてソロで2泊3日の山行です。しかも、ずっと訪れてみたかった雲ノ平。不安もありましたが、それをはるかに超えるワクワク感で当日の朝は気合充分です。7時前に折立(おりたて)登山口からスタートします。登山口にはトイレ、自動販売機、水場があって安心です。

折立登山口のトイレと自動販売機
登山口のトイレと自動販売機

登山開始からしっかりと登りますが、とても整備された登山道なので歩きやすいです。しばらく樹林帯を歩くと景色が開けて、さらに気持ちよく歩けます。

景色が開けてからは日差しが強くなるので、日傘を使って日焼け対策しながら歩きます。今回の山行中は風も穏やかだったからか、日傘を使用している方が多い印象でした。とにかく晴天で景色は最高です。

折立登山口からの整備された登山道<
整備された登山道

登山開始から約2時間半で太郎平小屋に到着。テント場はそこから薬師岳(やくしだけ)方面に約20分歩いた薬師峠キャンプ場です。

太郎平小屋からテント場へ
太郎平小屋からテント場へ
薬師峠キャンプ場
薬師峠キャンプ場

この日はキャンプ場で受付をして、テントを設営して薬師岳に向かいました。トイレや水場も近くにあります。水が豊富なので水分補給も安心です。

薬師岳への登山道は急登が続きます。特に前半は岩場が続くので、足場に注意しながら丁寧に進みます。山頂までのルートには影ができる場所はほとんどないので、汗だくで登りました。

薬師岳への岩々した登山道
岩々した登山道
薬師岳山荘手前からの山頂
薬師岳山荘手前からの山頂

薬師岳山荘からの急登を登りきると、三六〇度の絶景が目の前に現われて大興奮です。前回はガスで景色がまったく見えなかったので、すばらしい絶景が見られて本当にうれしかったです。

赤牛岳から槍ヶ岳までの絶景を望む
赤牛岳から槍ヶ岳まで
薬師岳山頂
薬師岳山頂
薬師岳山頂から剱岳を含む立山方面を望む
山頂から剱岳を含む立山方面

しばらく山頂で絶景を堪能して下山しました。テント場に戻って昼食を食べて夕日の時間までは休憩です。

太郎山で夕日が見たくて18時ごろにテント場を出発。きれいな夕日に癒されて1日目は終了です。

太郎山からの夕日
太郎山からの夕日
夕日で焼ける薬師岳
夕日で焼ける薬師岳

2日目:薬師峠キャンプ場~薬師沢小屋~雲ノ平~祖母岳~雲ノ平

4時前にスタートして雲ノ平をめざします。まずは薬師沢小屋まで下ります。前半にしっかり下って、その後は歩きやすい木道が中心のルートになります。きれいな高山植物もたくさん咲いているので、気持ちよく歩けます。

木道と高山植物
木道と高山植物
薬師沢小屋
薬師沢小屋でおいしいお水が補給できます
薬師沢小屋
黒部源流

薬師沢小屋で休憩して、いよいよ雲ノ平への激登りが始まります。噂通りの急登で心拍数が上がって汗だくです。段差が大きく、コケで滑る岩も多いので足の置き場に注意しながらゆっくり登りました。登りは当然きついですが、明日下るのもきついだろうな~と思いながら登りきりました。

薬師沢小屋から雲ノ平への急登
雲ノ平への急登

樹林帯を抜けると見たことのない景色が広がって、思わずガッツポーズ! 天気は快晴、景色は絶景! なにも言うことはありません。全身で大自然を感じながら、雲ノ平山荘まで歩きます。

水晶岳を望む
目の前には水晶岳
雲ノ平山荘への木道
雲ノ平山荘まで後少し

山荘で受付をしてキャンプ場でテント設営。フラットな場所は多くない印象です。トイレと水場は近くにあります。この日は比較的早くテント場に着くことができたので、フラットな場所でテントを張ることができました。

テント設営後に昼食まで時間があったので近くを散策。ライチョウの親子も散歩中でした。

雲ノ平山荘のテント場
テント場
ライチョウの親子
ライチョウの親子も散歩中
水晶岳を望む
水晶岳の存在感が凄い

昼食は山荘で名物の雲ノ平バーガーをおいしくいただきました。そのほかにもおいしそうなメニューばかりで迷いました。

雲ノ平山荘の雲ノ平バーガー
雲ノ平山荘のおすすめメニュー
おすすめメニュー

食後は祖母岳(ばあだけ)まで散歩して、ゆっくり雲ノ平を満喫しました。天気もよく、どこを向いてもすばらしい景色に囲まれて自然と笑顔になります。ゆっくり時間をかけて雲ノ平を散策して過ごしました。

祖母岳からの景色
祖母岳からの景色
チングルマ
チングルマ
雲ノ平山荘のテント場と薬師岳
テント場と薬師岳

テント場に戻ってしばらくゆっくりして、夕日ポイントに決めていた祖母岳に向かいます。18時ごろからガスが出てきて、どうなるかな~と思っていましたが、すばらしい夕日を見ることができました。

雲ノ平を全身で感じることができて、大満足で2日目終了。

祖母岳からの夕日
祖母岳からの夕日
夕日とブロッケン
夕日とブロッケン
夕日と雲ノ平山荘
夕日と雲ノ平山荘

3日目:雲ノ平~祖父岳~薬師沢小屋~太郎平小屋~折立

4時半ごろの御来光に合わせて祖父岳(じいだけ)へ。山頂からの景色に期待しながら、夜明け前に登り始めます。僕はこの夜明け前の静かで落ち着いた空気が大好きです。約45分で山頂に到着。山頂からの景色は予想をはるかに上回る絶景です。

祖父岳山頂からの槍・穂高連峰
山頂からの槍・穂高連峰
祖父岳山頂からの黒部五郎岳
山頂からの黒部五郎岳
薬師岳と雲ノ平
薬師岳と雲ノ平

山頂で絶景を堪能してテント場に戻り、下山準備をして折立まで下山します。下山時のポイントは薬師沢小屋までの激下りと太郎平小屋までの登り返しです。

薬師沢小屋までの下りはコケや木の根で滑らないように慎重に下りました。約60分の激下りで汗だくになりながら、薬師沢小屋でしっかりと休憩をとって太郎平小屋への登り返しです。日差しも強く、強度の高い登りでした。特に最後の登りは本当に疲れました。

木道の先に太郎平小屋
木道の先に太郎平小屋

太郎平小屋で休憩して最後の下りです。快晴で景色を楽しみたいですが、日差しと疲労で黙々と登山口まで下ります。

有峰湖
有峰湖

初めて2泊3日のソロ山行は、天気に恵まれたすばらしい時間になりました。特に雄大で名峰に囲まれた雲ノ平エリアは、そこにいるだけで五感が開放されて全身の細胞が喜んでいると感じました。

これまでは、やっぱり登頂して達成感を味わいたいという気持ちで山行計画をたてていましたが、今回は雲ノ平という場所が持っている生命力を高めるパワーに触れて、とても充実し達成感のある山行になりました。強度が高く疲労感はもちろんありますが、それ以上のエネルギーで満たされて気持ちよく帰路に就きました。さっそく次の山行計画を考えています!

(山行日程=2025年7月19~21日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:2泊3日
コースタイム:【1日目】8時間40分
【2日目】6時間30分
【3日目】8時間
行程:【1日目】
折立・・・三角点広場・・・五光岩ベンチ・・・太郎平小屋・・・薬師峠・・・薬師平・・・薬師岳山荘・・・薬師岳・・・薬師岳山荘・・・薬師平・・・薬師峠
【2日目】
薬師峠・・・太郎平小屋・・・第一渡渉点・・・第三徒渉点(左俣出合)・・・薬師沢小屋・・・アラスカ庭園・・・祖母岳・・・雲ノ平
【3日目】
雲ノ平・・・祖母岳分岐・・・アラスカ庭園・・・薬師沢小屋・・・第三徒渉点(左俣出合)・・・第一渡渉点・・・太郎平小屋・・・五光岩ベンチ・・・三角点広場・・・折立
総歩行距離:約37,600m
累積標高差:上り 約3,151m 下り 約3,151m
コース定数:86
yamatsuzuki(読者レポーター)

yamatsuzuki(読者レポーター)

2022年に初めての槍ヶ岳登山で、全身の細胞が震える感動とエネルギーが沸き起こる体験をして以来、山にどっぷりはまっています。細胞レベルのわっくわく!!を感じながら山を楽しんでいます。

この記事に登場する山

富山県 /

雲ノ平 標高 2,464m

黒部源流の山々をめぐる人気のコースとして、雲ノ平は長く登山者に愛されている。富山県・折立から入山し、太郎平小屋から雲ノ平~鷲羽岳~黒部五郎岳~太郎平小屋と黒部渓谷を一周するコースは、とっておきの特選コースである。北アルプスの奥深くを歩くので、長い日数を必要とする。

富山県 / 飛騨山脈北部

薬師岳 標高 2,926m

 その昔、越中で「立山」というと、北の毛勝三山から南の薬師岳辺りまでを指したという。今では、北アルプス中央部の鎮(しずめ)として人気があり、雲ノ平や黒部五部岳などとともに黒部源流の山と位置づけられている。  薬師岳という名から分かるように、古くから信仰の山であった。和田川上流の隠れ里で、平家落人伝説のある有峰(ありみね)の人々が、薬師如来の山として山頂に祠を建て、毎年6月15日の祭りには登拝して剣を奉納したものである。赤錆びた剣型の板金は昭和30年ぐらいまで祠に見られたものである。  有峰の集落は昭和34年に完成した有峰ダムのため湖底の村となり、山頂の祠に奉納されていた剣型も錆びついたり、登山者の記念になったりして、今はない。  山の姿はずっしりと重量感があり、いかにも霊山にふさわしく大きい。山体の中腹まで石英安山岩、山頂付近は角閃岩を含んだ石英斑岩、つまり花崗岩に近いものなので、輝くような明るい雰囲気がある。  そして、薬師岳の地理的特徴の最たるものは、東面に並ぶ3つのカールだ。日本の氷河地形で最も一般的な圏谷だが、大きな山体にスプーンでプリンをすくったような谷が3つもあり、東側から眺めると壮観である。  山頂をはさんで南稜カール、中央カール、北薬師岳との間が金作谷カールと呼ばれる。カールの下はそのまま黒部峡谷の上ノ廊下に落ち込んでいるというのも、霊山薬師岳にふさわしいスケールである。  登山コースで最も一般向は折立コース。かつての秘境、有峰のダムを通って、一気にバスで折立まで上り、太郎兵衛平経由で山頂へ登るコースだ。稜線の太郎平小屋がいいベースになるので薬師岳、雲ノ平、黒部五郎岳など黒部源流の山々へのメインルートになっている。折立から太郎平小屋(5時間)、小屋から薬師岳(3時間)で8時間の登りでいい。  山の古典といわれる田部重治の著書『山と溪谷』には明治42年に2泊3日で登っている。夜明け前に歩き出し、提灯(ちょうちん)の明りを頼りに下るという強行軍で、有峰に2泊し、薬師岳へは日帰り往復だった。マイカーを使えば富山から日帰りも可能という現在との落差は登山人口を増大させ、明暗こもごもである。  1963年1月には、この山で愛知大学山岳部の13人が遭難して社会問題になったことはよく知られる。広々した山稜で風雪のため方向を失い、黒部側の東南稜に迷い込んだためで、慰霊の十三重塔が折立に建っててる。

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