秋山シーズンに入っても、滑落や疲労による遭難が多数。ゆとりある計画を 島崎三歩の「山岳通信」 第411号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第411号では、依然として滑落や疲労による遭難が多いことを指摘。レベルに見合った山域を選び、ゆとりある計画を立てることを促している。
9月10日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第411号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
9月1日(月)、北アルプスの三俣蓮華岳で、単独で入山した78歳の男性が、三俣蓮華岳に向けて湯俣川の伊藤新道を登山中、道に迷い行動不能となった。
9月3日(水)、北アルプスの前穂高岳で、単独で入山した82歳の男性が、奥穂高岳から紀美子平に向けて下山中に滑落、負傷した。
9月3日(水)、南アルプスの甲斐駒ヶ岳で、2人パーティで入山した67歳の男性が、北沢峠から入山して双児山付近を登山中に同行者と離れ、単独で甲斐駒ヶ岳に向かい、行方不明となっている。
9月4日(木)、北アルプスの船窪岳で、単独で入山した40歳の男性が、船窪乗越から船窪岳に向けて縦走中に滑落、負傷した。
9月4日(木)、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した71歳の男性が、槍ヶ岳に向けて北鎌尾根を登山中に滑落、負傷した。
9月6日(土)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、4人パーティで入山した67歳の男性が、猿倉登山口から白馬鑓温泉に向けて登山中、疲労により行動不能となった。
9月7日(日)、南アルプスの易老岳で、4人パーティで入山した70歳の男性が、光岳から易老渡登山口に向けて下山中に、疲労により行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週県内では、7件の山岳遭難が発生しました。先週から9月に入り、秋山シーズンとなりましたが、依然として滑落や疲労による遭難が後を絶ちません。また、先週は槍ヶ岳北鎌尾根を登山中に滑落、負傷する遭難が発生し、今年に入り、北鎌尾根では10件の山岳遭難が発生しています。
槍ヶ岳へ続く北鎌尾根は、国内屈指の難ルートです。整備された登山道ではなく、長い岩稜帯が連続し、ルートファインディングや高度なクライミング技術が必要となります。毎年のように、滑落や道迷い、疲労による遭難が発生しています。
北鎌尾根を登山される方は、北鎌尾根は、一般ルートではなくバリエーションルートであるということ、万が一救助要請をしてもすぐに救助に向かえない場合があり、数日間のビバークを覚悟しなければならないことを理解したうえで、入山してください。
秋は気温の寒暖差が大きく、特に朝晩は急激に冷え込みます。雨風にさらされれば体温を奪われ、低体温症に陥る危険があるため、必ず防寒装備を携行しましょう。
また、秋は日没が早くなるので、予定以上に下山が遅れると、暗闇に包まれ、足元が不明瞭になり、転倒や滑落、道迷いなどの遭難を起こす可能性があります。登山を計画される方は、ご自身のレベルに見合った山域を選ぶとともに、ゆとりある計画を立て、ヘッドランプは必ず携行しましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
北アルプス横尾登山口に入山ゲート設置 試行実験を開始!
「北アルプストレイルプログラム」では、槍ヶ岳や涸沢に通じる横尾地区の登山口に入山ゲートを設置しました。近年、登山計画の不備や登山装備の準備不足などが原因となる山岳遭難の発生が後を絶たないため、入山前に、登山準備と登山のルールやマナーの確認をする取り組みを始めるものです。ゲートにて、「登山準備・登山ルート確認票」を確認のうえ、署名と指定ポストへの投函をお願いします。
- 実施期間:2025年9月13日(土)~10月13日(火)
- 実施場所:横尾登山ゲート(横尾避難小屋横に設置)
「秋山情報」が完成しました!
鮮やかな紅葉に包まれる秋山は、多くの登山者を魅了し、毎年、紅葉シーズンを中心に県内外から多くの登山者が訪れるほか、きのこ採りなど「山の幸」を求めて入山する人も数多く見られます。
この時期は、滑落や道迷い、低体温症、準備不足による行動不能などの山岳遭難が多発しています。秋山は周期的な晴天に恵まれやすく、気候的にも登山に適していますが、日没時刻が早く、天候もひとたび崩れると真冬並みの寒さになるなど、秋山特有のリスクがあります。
「秋山情報」では、過去の遭難事例や秋山登山における注意点などを紹介します。安易な気持ちで登山することなく、最新情報の収集と事前準備を入念に行なうとともに、体調を万全にして入山をしましょう。
⇒「秋山情報(PDF)」はこちら
クマにご用心!
8月中旬、知床の羅臼岳で登山者がヒグマに襲われ、死亡する事故が発生しました。長野県内でも春先からクマによる人身被害が相次いでおり、夏山シーズンに入ってから上高地をはじめ、各山域の登山道周辺でも目撃情報が寄せられています。
山の中では、どこでクマと遭遇してもおかしくありません。登山の際は、クマとの遭遇を避けるための対策を必ず行ないましょう(以下、プレスリリースから抜粋)。
- 朝夕は特に注意、複数人で行動する
- クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯して存在を知らせる
- クマの存在を意識する
- 子グマを見たらそっと立ち去る
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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