【インタビュー・中村浩志】ライチョウの命をつなぐ、自然と人が共に生きる未来のヒント

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次の世代に渡すバトン

白いライチョウ

鈴木:ライチョウの保護活動に関してはひとまず、めざしていたゴールでしょうか。

中村:ええ。当面、日本のライチョウは絶滅の危険性から遠ざかった。

ケージ保護っていう、生息現地での保護対策を確立し、それから動物園で、人の手で育てたライチョウを山に戻す技術も確立できた。ですから、この二つの技術があったら、どこかの山で問題が起こった時に、この技術を使って対応ができる。

しかし、いつかは、それだけでは対応できないときが来ると思う。そのときには、若い世代の人が、この貴重な日本のライチョウを、いつまでも日本の高山に残せるように頑張ってほしいという願いです。そのメッセージです。

鈴木:本の中でも書かれていましたね。

「自然保護とは人の影響で失われた自然を人の手で取り戻し、自然のバランスと多様性を人の力で維持し続けていくこと」

その通りだと思いました。

あと、「ライチョウに会いたい」と願う山好きの方に、一言いただけますか?

中村:ええ。ライチョウのことをまず知ってほしい。

知った上で、自分たちの生活を見直してほしい。ライチョウを通してね。

今、絶滅の危機に瀕してる、たくさんの動植物がいるんです。ですから、人間だけが生きてるんじゃないんだっていうことに、気づいてほしい。

それが、やっぱり日本文化の一番の基礎ですからね。

自然と一体、共に生きる。自然に対する畏敬の念を持ってね。

人を恐れない日本のライチョウっていうのは、まさに、日本文化のシンボルです。そして、日本の自然保護のシンボルになる鳥だと思ってます。

そういう、神の鳥でしたから、日本人には。四季を通してライチョウを見て、理解してほしい。

鈴木:知ることで距離が近づきますし、視野も広がりますね。

中村:それを通してね、自分の生活を考えてほしい。

鈴木:はい、私もあらためて考えます! 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

甦れ!神の鳥ライチョウ

甦れ!神の鳥ライチョウ

中央アルプスに、半世紀ぶりに現れた1羽のライチョウ。その姿に感動した著者は、鳥類学者として長年積み重ねてきた経験と情熱をもとに、この地にライチョウを復活させることを計画する。本書は、絶滅が宣言されたこの山域で、ライチョウを再び定着させるために始まった保護活動の全記録である。

中村 浩志
発行 山と溪谷社
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