
年末の大掃除。使わなくなったロープがベルトに!「イトウミシン」に送るといいことがあるかも!
大掃除中に見つけた古いクライミングロープ。苦楽を共にしてきたので捨てづらい。そんなことを感じたあなたに朗報です。古いロープを再生してベルトを作る活動をする「イトウミシン」にロープを送ると、返礼品で1本ベルトをいただけるのです! 登山者からしたらハッピーしかないこの取り組みについて、「イトウミシン」を運営する伊藤紅子さんにお話を聞きました。
文=丸山瑞貴 写真提供=イトウミシン
古くなったロープはなんと着払いで送ってOK
丸山:どうして、クライミングロープをベルトにする取り組みを思いついたんですか?
伊藤:趣味で登山をしていたんですが、ケガをして山に行かなくなった時期がありました。そこで、外でも使えるなにかを作ろうと思い立ったんです。
丸山:ロープ発送のとき、着払いで、しかもベルトの製作費は無料でほんとうによいのでしょうか。ロープを送る側にはメリットしかないですが……。
伊藤:はじめのうちはあまりロープが集まらなくて、中古のロープを購入していたんです。だんだんと無償で寄付してくださる方が増えて、お礼の気持ちで製作しているんです! ロープは思い出も詰まっていますし、高価なものでもあります。使い込まれたもののほうがやる気が起きますね(笑)。
丸山:そうなんですね。ではお言葉に甘えて私も着払いでお送りします!
古いロープがベルトになるまで
丸山:ベルトになるまでは、洗浄、乾燥、抜芯、縫製……などの工程がなんと10以上もあるとお聞きしました。工程について詳しく聞きたいです。
伊藤:では、洗浄からお話ししますね!
こだわり洗浄
伊藤:まず、洗浄で4工程あります。漬け置きもあるので、洗い終わるのには2日かかります。
丸山:すごいですね。
伊藤:洗う都度ロープから出てくる洗浄後の水を「だし」と呼んでます。丸山さんのロープもいいだしがでそうです(笑)。 あとは、手作業で洗浄しているので一度に洗えるのは50mロープ2本までです。
予洗いで、落ち葉や石などを取り払ったのち、洗浄へ。
1 アミノ酸系洗剤でベース洗浄
泥、皮脂・汗・軽い油汚れを落とすのが目的で、液体洗剤と固形洗剤の2種類の洗剤を使用。それぞれの洗剤で洗浄し、洗ったあとは水で3~5回充分にすすぐ。
30度くらいのぬるま湯で、ロープをシバく(押し洗い)。ここで大半の汚れは落ちる。汚れがひどい場合は、洗いとすすぎを繰り返す。
2 アルカリ性洗剤で泥汚れやしつこい油分を分解
強アルカリはナイロン劣化を招くため避けている。洗浄後は水で3~5回充分にすすぐ。
3 酸素系洗剤で漂白、消臭。
ロープ特有の使い古された香ばしい香りを除去。洗ったあとは水で3~5回充分にすすぐ。
4 水ですすぐ。
最後は丁寧に水ですすぐ。
伊藤:みなさんおわかりかと思うんですが、水を含んだロープって結構重いんです。手で丁寧にもみ洗いをしていますが、毎回筋肉痛になって筋トレになってます(笑)。 ちなみに丸山さんの一番だしはこれでした。
丸山:うわぁ。結構なだしですね……。案外ロープって汚れてるんですね。きれいにしてくださってありがとうございます。
洗いの後は乾燥&抜芯
伊藤:洗ったら晴れた日に外で干します。お天気が重要です。
伊藤:ロープが完全に乾いたら芯を引き抜くんですが、これがなかなか大変です。2~3mくらいの長さを引き抜くのに早ければ3分、長いと15分以上かかります。古くて、硬くなったロープの芯は抜きづらいですね。
一番楽しいのはミシンがけ
伊藤:ベルトにする際に、幅をダブルかトリプルかお選びいただけます。
丸山:私は細めの幅のベルトが好きなので、ダブルでお願いしました。
丸山:イトウミシンさんのベルトの特徴として、縫製が丁寧だと思います。たとえば、ベルトの末端が切りっぱなしではなくて丸くとてもきれいに処理されていますよね。
伊藤:おもにミシンで作っていますが、ベルトの末端は手縫いをしています! 生地が分厚くなってミシンでは縫いづらいのと、細かく縫う必要があるので心を込めて縫っています。
伊藤:あとは、バックルを通す箇所は折り返す必要があって、かなり生地が分厚くなってしまいます。なのでハンマーでしばき倒します。(笑) しばいて薄くしてから縫っていきます。
丸山:「だし」といい、「しばき倒す」といい、伊藤さんが楽しんで作っているのが伝わってきます(笑)。
完成!
伊藤:こうしてベルトは完成します。
丸山:苦楽をともにしたロープがきれいになって、しかもベルトになって再会できるのはとってもうれしいです! 付け心地も、いい感じです。
今後やりたいこと
丸山:ベルトになっていく様子がよくわかっておもしろかったです。今後の製作の目標はありますか?
伊藤:アイデアはたくさんあって、ベルトを取っ手にしたトートバッグなどを考えています。クリスマスリースやストラップも作りました。あとは、廃棄物が減ったらいいなって思います。「イトウミシンに送れば、いいことありそう」「思い出の詰まった道具が違うかたちになって、自分の元に戻ってきたらいいな」って思ってもらいたいです。
丸山:ベルトになってうれしいばかりではなく、伊藤さんの思いを聞いて温かい気持ちになりました。
伊藤:いま、家にミシンが6台あるんです。工房を借りて仲間と作業するのも夢です。
丸山:とてもすてきな夢ですね!
イトウミシン返礼品のルールを事前に確認
丸山:イトウミシンさんにクライミングロープを送る前には、こちらのルールを確認しましょう。また、作業工程が多く、本人のロープを使っての製作なので、ベルトになるまでには2週間~4週間ほどの期間が必要です。
A 1人でロープを寄付する場合
- ロープ1本~2本の寄付に対し、返礼品1本
- ロープ3本~4本の寄付に対し、返礼品2本
- ロープ5本~6本の寄付に対し、返礼品3本
B、複数人でまとめてロープを寄付する場合
-
たとえば、
2人でロープ6本の場合、各人返礼品2本ずつ
3人でロープ6本の場合、各人返礼品1本ずつ
6人でロープ6本の場合、各人返礼品1本ずつ
といったように、Aの割合で各個人宅に返礼品を発送。寄付者全員の住所、氏名、本数を要明記。
C、ベルトの幅と長さサイズの指定、連絡について
- ベルトの幅はダブルかトリプルかを要指定
- ベルトの長さは、100㎝、110㎝、120㎝の3種類から要指定
- 連絡のつくメールアドレスを要記入 (ロープの汚れが洗浄しても取れない場合に、他のロープでベルトを作成するかどうか寄付者に確認するために使用)
D、ロープの伸縮による長さの誤差について
- ロープメーカーにより伸び率に差があり、できあがりサイズに±2㎝程の誤差が生じる場合あり
- ロープの特性上、ベルトを使用している間に多少伸びる場合あり
送り先住所
〒578-0911
大阪府東大阪市中新開2-13-35-703
イトウミシン 伊藤
伊藤:こちらを見て、たくさんのロープを送っていただけたらうれしいです!
プロフィール
丸山瑞貴(まるやま・みずき)
山と溪谷オンライン編集部。2022年に山と溪谷社に入社。子どものときに家族に山に連れて行ってもらったのがきっかけで登山が好きになる。今年の秋はヨセミテでクライミングをして、来年も行きたいと思っている。この冬はスキーを練習中。
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