ペダルを漕いで、あきる野市の戸倉城山へ!道草も楽しむワンデイトリップ【ルポ・チャリ登】
気分は戦国時代?自転車をデポして光厳寺から城山へ
ここは後光厳天皇(ごこうごんてんのう)がまだ弥仁親王(いやひとしんのう)のとき、南朝方に追われて5年ほど隠れ住んだ旧跡といわれ、1334年(建武年間)足利尊氏により建てられたそうです。足利尊氏は、建長寺(けんちょうじ)より正宗広智禅師を招いて開山したそうで、後光厳天皇は、「光厳寺」と命名したそうです。門の高い位置に掲げられる扁額は後光厳天皇の筆といわれているとか。その後も度々火災に遭っており、現在の建物は昭和期に建てられたものなんだそうです。なんと由緒あるお寺だったのですね。ちなみに光厳寺には武蔵五日市七福神のひとつ、布袋尊があります。
自転車を折り畳んで輪行袋に入れ、かなり太目のワイヤーロックで、フレームと案内看板の支柱に地球ロックします(動かせないものに自転車を固定することを地球ロックと呼びます)。自転車を見えないようにして盗難防止を心がけるのも重要です。ヘルメット(カスク)を脱ぎ、バックパックに固定して、いざ城山をめざして登り始めます。
登山道を進んでいくと、すぐに急な登りが始まりました。自転車で来たからでしょうか、けっこう乳酸が溜まっていることに気づきました。しかし、焦りは禁物です。ゆっくりと一歩、一歩、歩みを進めていきます。気温はどんどん上がっていくのですが、深い谷間からり少し冷たい風が上がってきます。これが午前中の早い時間のよさです。周りをキョロキョロ見ながら登っていくのですが、さすがに元山城です。お寺からは武器を持って鎧を身に着けていては容易には登れそうもない地形ですし、ここから攻めるのは現実的ではないようです。急な登りの途中に休憩所があり、ベンチがあるのですが、一息つくのも束の間、登山道はまたさらに急な登りが始まるようです。
少し登ると手すりがあり、一気に登りきると三角点に次いで山頂が見えてきたのでした。わずか標高434mですが、武蔵五日市駅方向の景色が抜群です。景色がいい代わりに日陰なし。水をかぶったようにように全身が汗で濡れています。山頂脇の木陰で汗を拭いて一休みします。
戸倉城は城山の山頂に、室町時代から戦国時代にかけて築かれた山城です。あきる野市の網代城(あじろじょう)や高月城(たかつきじょう)を経て、滝山城(たきやまじょう)や八王子城(はちおうじじょう)へと情報を中継する機能もあったそうです。1590年八王子城の落城とともに廃城となったとか。
予定ルートをめざし、登山道を進んでいきます。臼杵山(うすきやま)へ続く稜線を通る道のりで両サイドは急な斜面が広がっています。城山山頂に本丸があったとすれば、難攻不落の城だったのかもしれません。どの斜面をどう上がっても急で、しかも木がなければ上から容易に討たれてしまうような感じです。攻めるとしたらどこからだろうと思いを馳せつつ、スギの木に囲まれた登山道を歩いていきます。山全体として随分細いスギが密集していました。樹齢もいいところ20年くらいでしょうか。ただこれだけ密集していると太く育たないので、どのくらいの年数か判断もつきません。いつ植えたのだろうと思いつつ、山城だったころは、あるていど木を伐採していたのかなと妄想します。
盆堀山(ぼんぼりやま)を越え、小刻みなアップダウンを繰り返し進んでいくと、なにやら登山道の先で大きな物陰が動くのが見えました。一見してカモシカだとわかりました。カモシカは目が悪いので、こちらをじっと見ています。距離があったので、音をたてて人間がここにいることを知らせると、カモシカは一気に斜面を駆け上り、谷へ下っていったのでした。
さらに進みますが、一向に分岐点がありません。来る道すがら看板のない道があったり、地図にあるはずの登山道がなかったりと、ちょっと不安な道がたくさんありました。予定ルートを進んでいくと「TRAIL CLOSE」という小さな張り紙がありました。当初青のラインで光厳寺に戻る予定でしたが、この先ずいぶん距離があるので、来た道を戻ることに。戻るころには、もはや谷から吹き上がる風も熱風に変わっていたのでした。小刻みなアップダウンで体力も消耗し始めたころ、光厳寺にたどり着きました。
この記事に登場する山
プロフィール
斉藤正史(さいとうまさふみ)
1973年、山形県新庄市出身。ロングトレイルハイカー。
2005年に、アパラチアン・トレイル(AT)を踏破。2012年にパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)を踏破。2013年にコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)踏破し、ロングトレイルの「トリプルクラウン」を達成した。日本国内でロングトレイル文化の普及に努め、地元山形県にロングトレイルを整備するための活動も行なっている。
自転車 × 登山
自転車と登山を組み合わせると、クルマや公共交通機関とはひと味違った風景が見えてきます。自転車のサドルにまたがって、あの山めざしてペダルを踏めば、新しい楽しみに出合えます。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他