登山中に体の異変を感じたら、無理することなく登山を中止しましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第415号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第415号では、登山中に病気で亡くなる遭難が2件発生したことについて言及。体の異変を感じた場合には、無理せず登山を中止することを促している。
10月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第415号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
9月29日(月)、北アルプスの奥穂高岳で、3人パーティで入山した24歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中に発病により行動不能となった。
9月30日(火)、中央アルプスの空木岳で、単独で入山した64歳の男性が、空木岳に登山中に発病し、死亡した。
9月30日(火)、中央アルプスの宝剣岳で、2人パーティで入山した62歳の男性が、宝剣岳の乗越浄土から千畳敷に向けて八丁坂を下山中、発病のため死亡した。
9月30日(火)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した68歳の男性が、岳沢から奥穂高岳に向けて登山中、疲労により行動不能となった。
10月1日(水)、北アルプスの燕岳で、10人パーティで入山した72歳の女性が、中房登山口から燕岳に向けて登山中に疲労により行動不能となった。
10月2日(木)、南信の豊丘村大字神稲地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した81歳の女性が、斜面で足を滑らせて滑落、負傷した。
10月2日(水)、北アルプスの涸沢で、3人パーティで入山した21歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中に発病により行動不能となった。
10月2日(水)、南信の大鹿村鹿塩地籍の山林内で、きのこ採りのため単独で入山した78歳の男性が、クマの襲撃を受け死亡した。
10月3日(金)、中信の塩尻市宗賀地籍の山林内で、きのこ採りのため2人パーティで入山した73歳の男性が、斜面で足を滑らせて滑落、負傷した。
10月4日(土)、北アルプスの涸沢で、2人パーティで入山した54歳の女性が、涸沢から上高地に向けてパノラマコースを下山中に滑落、負傷した。
10月4日(土)、上田市西内地籍の山林内で、きのこ採りのため単独で入山した78歳の男性が滑落、死亡した。
10月5日(日)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した66歳の男性が、岳沢から奥穂高岳に向けて登山中に疲労により行動不能となった。
10月5日(日)、松本市大字入山辺地籍の山林内で、きのこ採りのため単独で入山した78歳の男性が、道に迷い行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では、13件の山岳遭難が発生し、うち5件はきのこ採り遭難で2名の方が亡くなりました。
中央アルプスでは登山中に病気で亡くなる遭難が2件発生しました。登山中に普段と違う体の異変を感じた場合には、無理することなく登山を中止しましょう。また、突然死を含む発病による遭難を防止するためには、持病のお持ちの方は医師に相談するとともに、平素からの体調管理をしっかり行ない、登山中は、自分の体調を確認しながら、無理のないよう、慎重に行動しましょう。
秋はきのこ採り遭難が多発します。きのこ採りは探すことに夢中になるあまり山奥へ入り込み、方向感覚を失い、現在地が分からなくなってしまったり、危険な崖や斜面に入り込んでしまうことが多々あります。きのこ採りで入山する際は、登山と同じように「遭難するかもしれない」という危機感を持つとともに、単独での行動を避け、必ず家族や友人などに入山場所と予定を知らせましょう。
きのこ採り遭難防止のため、以下の項目を心がけてください。無理のある危険なきのこ採りはやめましょう。
- 単独入山、入山後の単独行動は避ける
- 入山場所と予定を家族等に伝える
- 携帯電話やヘッドランプなどを携行する
- 急な斜面に入り込まない
- クマなどの野生動物の襲撃に注意する
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
「焼岳 登山道」冬期間の通行止め(10月22日~)
松本市アルプスリゾート整備本部によりますと、上高地から焼岳への登山道の中腹に架かるハシゴは、冬期間の凍結と春先の雪崩により、破損の恐れがあるため撤去されます。このため、上高地側の登山口から焼岳小屋の間は完全通行止めとなります。
- 1.通行止め区間:上高地側焼岳登山口~焼岳小屋(迂回路はありません)
- 2.通行止め期間:2025年10月22日(水)~2026年5月中旬(予定)
詳細は松本市アルプスリゾート整備本部までご確認ください。
「白馬大雪渓ルート」通行止め(9月29日~)
白馬村などによりますと、白馬大雪渓ルートは、9月末になって安全なルートを確保することが難しくなってきたため、関係者が現地調査を行なうなどして協議した結果、9月29日(月)から通行止めとすることになりました。白馬岳頂上へは白馬鑓温泉ルート、または栂池ルートを利用することになります。
⇒詳細はこちらから
「徳本峠越え」のクラシックルートの通行止め解除
松本市の島々から徳本峠を通り、上高地の明神に至る登山道(島々明神線歩道)の通行止めが解除されました。大規模な土砂崩落のため、4月9日から通行止めになっていましたが、このほど整備が完了したため、9月30日(火)から通れるようになりました。
- 落石や滑落のリスクがあるうえ、体力と技術を要する難ルートですので充分にご注意ください
- 入山にあたっては、必ず登山計画書を提出してください
北アルプス地域に「ツキノワグマ出没注意報」クマにご用心!
北アルプス地域において、9月14日から20日までの里地でのクマ目撃件数が、前週の1.5倍以上に増加したことから、北アルプス地域に「ツキノワグマ出没注意報」が出されました。
上高地や後立山連峰をはじめ、各山域の登山道周辺でも目撃情報が寄せられています。秋山では、どこでクマと遭遇してもおかしくありません。登山の際は、なによりもクマとの遭遇を避けるための対策を行ないましょう!
<注意点>
- 朝夕は特に注意、複数人で行動する
- クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯して存在を知らせる
- クマの存在を意識する
- 子グマを見たらそっと立ち去る
※長野県の関連ウェブサイトをご参照ください。
「秋山登山相談所」を開設します
県遭対協では、秋山シーズンにあたり、県内の各山域の主要登山口に「登山相談所」を開設します。現地の山域や登山ルートに詳しい相談員が登山者に最新の情報を提供し、積極的な声かけを行ないます。問い合わせにも応じますのでお気軽にご利用ください。
⇒詳細はこちらから
北アルプス横尾登山口に入山ゲート設置 試行実験を開始!
「北アルプストレイルプログラム」では、槍ヶ岳や涸沢に通じる横尾地区の登山口に入山ゲートを設置しました。近年、登山計画の不備や登山装備の準備不足などが原因となる山岳遭難の発生が後を絶たないため、入山前に、登山準備と登山のルールやマナーを確認する取り組みを始めるものです。ゲートにて、「登山準備・登山ルート確認票」を確認のうえ、署名と指定ポストへの投函をお願いします。
- 実施期間:2025年9月13日(土)~10月13日(火)
- 実施場所:横尾登山ゲート(横尾避難小屋横に設置)
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他