このエントリーをはてなブックマークに追加

加治丘陵(入間市)――、心地良い里山、ユニークな童話の世界、紅葉並木を駅から駅までハイキング

今がいい山、棚からひとつかみ
ガイド・記録 2018年11月19日

冬が近づく11月は日没時間が早まり、日中の太陽の光も弱く・短くなり、長時間行動となるような登山は難しい頃となってくる。そんな時期はアクセスが良く、かつ短時間で楽しめる近郊の山に行くのがおすすめ。今回紹介するのは、西武池袋線の駅から駅まで歩き、遅い紅葉も楽しめる加治丘陵だ。

 

11月も下旬となると――、山の紅葉は低山でも終了気味で、秋の山を堪能するには少し時期が遅い頃となる。日も短い時期なので遠出もなかなかできない。街でも木枯らしが冷たく、外出するにも足が重い時期だ。

そんなときは、街の近郊のハイキングで晩秋を楽しんでみてはいかがだろうか? 例えば、埼玉県飯能市の加治丘陵はこの時期、メタセコイア並木の紅葉などが楽しめるうえに、周囲の街や山々の展望、映画の撮影場所、ファミリーでも楽しめる公園など、バラエティに富んだハイキングが楽しめるフィールドである。

そんな楽しく・美しい里山の風景のレポートを、週刊ヤマケイから紹介する。

 

ユニークな公園のある里山、加治丘陵へ

2017年11月21日、埼玉県飯能市と入間市にまたがる加治丘陵に行ってきました。最高所で179mほどの里山ですが、飯能市側の山裾にある、トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園(以下、子どもの森公園)という楽しいスポットがあります。

フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの「ムーミン」シリーズの世界をモチーフにした公園で、遊具はなく、ムーミン谷にも似た地形の園内にムーミン屋敷を思わせる「きのこの家」をはじめ「子ども劇場」「森の家」などの建物などが配されています。内部も凝っており、ムーミンやメルヘンの世界が好きな人には、ぜひ訪れてほしいところです。

1997年「あけぼの子どもの森公園」としてオープンする5年前、飯能市はトーベ・ヤンソンに公園の主旨を伝えました。それから7年にわたる手紙のやりとりなどを経て、遺族からヤンソンの名を冠することが了承され、2017年6月、現在の公園名になった経緯があります。2018年6月には園内にCafe PUISTO(カフェ プイスト)がオープンし、北欧風のオープンサンドやデザートを味わえるようになったのもうれしいニュースです。

また、飯能市では宮沢湖畔に、より広大なムーミンのテーマパーク「ムーミンバレーパーク」を工事中で、2019年3月の開園が予定されています。

ムーミン屋敷を思わせる「きのこの家」(写真=石丸哲也)

内部も凝っていて、おとなもこどもも楽しめる(写真=石丸哲也)


「あけぼの」の名前は、付近の入間川で150万年前のアケボノゾウの足跡化石が見つかったことによるようです。入間川に面した阿須運動公園の古代広場には恐竜や化石をモチーフにしたオブジェがあります。子どもの森公園には、メタセコイアが多く植えられ、11月下旬~12月上旬にかけてオレンジ色に紅葉するのも見どころとなります。

メタセコイアは新生代第三紀(6500万~200万年前)に栄えた落葉針葉樹で、化石で見つかったものを1941年、三木茂博士が命名したもので、絶滅した植物と考えられていました。ところが、1945年に中国四川省(現湖北省利川市)に現存しているのが発見され、培養して各地に広められ、アケボノスギの和名がつけられています。

当日は天候に恵まれ、青空を背景にしたメタセコイアの紅葉が見事でした。小著『駅から山登り 関東55コース』に収録したコースですが、阿須丘陵と子どもの森公園を結ぶ登山道が通行止めになっていました。子どもの森公園に寄る場合は仏子駅より元加治駅を起点として、武蔵野三十三観音の古刹・円照寺や入間川沿いの遊歩道、古代広場を経て向かうのがおすすめです。初版刊行の後、通行止めとなったので、別コースなどの記載はありませんが、第2刷で修正、紹介しています。

もうひとつ、見逃せないのが、子どもの森公園の西側に隣接する日豊鉱業の武蔵野鉱山。なんと、石炭の一種である亜炭などを採掘した坑道があり、非公開ですが、子どもの森公園の上のほうから生け垣越しにトロッコなどを見られます。坑道などは人気ロケ地でもあり、映画「フラガール」、TVドラマ「彼岸島」「GARO<牙狼>TVシリーズ」「重版出来!」「ドクターカー」などの撮影にも使われているそうです。

前置きが長くなってしまいましたが、子どもの森公園の見学後、日豊鉱業西側の山裾、「土砂崩壊防備保安林」の解説板があるところから山道に入ります。雑木林の小尾根をひと登りで遊歩道に出ると、すぐ右手が山仕事の広場。広々した草地で奥武蔵方面の眺めがよく、きれいなトイレもある休憩適地です。ここから指導標に従って、遊歩道を離れ、山道でショートカットすると入間市の桜山展望台に出ます。

上:桜山展望台からの眺め。富士山が丹沢と奥多摩の間に見える/子どもの森公園のメタセコイア並木/下右:仏子駅からも見えた入間グリーンロッジの特徴的な塔(写真=石丸哲也)


高さ20mの展望台上からは首都圏から丹沢、富士山、奥多摩、奥武蔵、筑波山などを見渡せ、足もとには狭山茶の茶畑が広がっています。付近は名前のとおり桜が植えられて、春も楽しみなところです。展望台は16時30分(4~9月は17時30分)~翌日9時まで閉鎖されますが、毎年、元旦には新年初日の出の集いが催され、未明に登ることができます。

帰りは丘陵の南側を縫い、出合ったバス道路を北上して仏子駅へ。途中、バス道路を離れ、八坂神社、入間グリーンロッジ脇を通るのがコースですが、グリーンロッジ解体工事のため、通行禁止になっているので、そのままバス道路を通ります。こちらは第2刷刊行後なので、誌面には反映されていません。

蛇足ですが、入間グリーンロッジはお城のような塔が目立つ入間市営の国民宿舎でしたが2002年に廃業。そのままになっていて、廃墟マニアに人気のスポットとなっていましたが、解体されることになりました※1。2017年の時点では予備工事中で、まだ解体は始まっておらず、塔も健在でした。さらに蛇足ですが、廃業前は「山と渓谷」新年号付録の「山の便利帳」の前身である「登山手帳」の宿泊施設一覧にも載っていました。

なお、子どもの森公園※2は月曜日は休園日となります。また、入間グリーンロッジは周囲から望見するだけで、内部に入ることはできません。ともにご注意ください。

※1 入間グリーンロッジは2018年11月現在、解体中。12月末に解体完了予定(入間市ホームページ

※2 トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園の営業日はホームページを確認のこと

 

歴史・文化 日本の山 記録・ルポ
教えてくれた人

石丸哲也

東京に生まれ育つ。オールラウンドな登山を経て、山岳ライター、登山・ツアーの講師などとして活動している。
山頂に立つことだけを目的とするのでなく、山を旅する感覚で、登るプロセスや自然にふれることを大切にして山を楽しむことを心がけている。
国内では北海道の利尻山から屋久島の宮之浦岳まで全国の山を登り、海外ではペルーアンデス、ヨーロッパアルプス、北米のヨセミテ、メキシコ、カムチャツカなどの山に足あとを残す。

同じテーマの記事
ブナの紅葉が見ごろの塔ノ岳へ。山頂の山小屋に泊まり、丹沢の山をゆっくり堪能する
日帰りで行ける山でも、山頂の山小屋に一泊してみてはどうだろうか。登山者と語らい、黄昏から落日、翌朝のご来光を拝む充実の登山も一興だ。
日高山脈・アポイ岳~ピンネシリ縦走――、標高1000m未満の山で2000m級の情景を楽しむ
北海道のアポイ岳と言えば、高山植物の山として知られ、花が咲き乱れる春から夏にかけてがベストシーズンと言われる。しかし、季節外れと思われる冬が目の前に迫る11月は、もう1つのベストシーズンが待っている。
丹沢一の紅葉と展望を丹沢最高峰の蛭ヶ岳で味わい、富士山をシルエットにした落日を鑑賞する
広い丹沢山塊の中でも、特に紅葉が美しい場所の1つが最高峰の蛭ヶ岳の北側、姫次付近のカラマツ林だという。丹沢に本格的な紅葉シーズンが訪れるのは11月初旬から、この時期に蛭ヶ岳に宿泊してみるのはいかがだろうか?
群馬県・子持山、屏風岩から獅子岩へ――。紅葉と特異な岩塔をめぐるさわやかハイキング
11月に差し掛かる頃になると、紅葉は標高1000mあたりまで下ってくる。秋も深まったこの時期に歩く低山は心地が良い。群馬県にある子持山は、紅葉と岩場歩き、そして抜群の展望を楽しめる山となっている。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

晴時々曇
明後日

晴時々曇
(日本気象協会提供:2019年11月14日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 山梨県 一部山域の冬期登山は計画書提出を
山梨県 一部山域の冬期登山は計画書提出を 山梨県では12月から3月までの冬期期間、八ヶ岳、南ア、富士山の一部山域で登山計画書の提出を義務化する。詳しくはこちら
NEW 登山ガイドが語る。ゴアテックスを選ぶ理由
登山ガイドが語る。ゴアテックスを選ぶ理由 山行に合う本当に必要な装備だけを揃えるという登山ガイドの武田佐和子さんに、ゴアテックス製品を選ぶ理由を聞いた
NEW スカルパの登山靴を試す! 連載「山MONO語り」
スカルパの登山靴を試す! 連載「山MONO語り」 高橋庄太郎さんのギア連載。今月はスカルパ「ZGトレック」を平標山の山行でテスト。その履き心地とは?
NEW ザ・ノース・フェイスが開発! 新しい防水透湿素材
ザ・ノース・フェイスが開発! 新しい防水透湿素材 ザ・ノース・フェイスが開発した全く新しい防水透湿素材「FUTURE LIGHT」。開発ストーリーと搭載アイテムを公開!
NEW 小林千穂さんも体感! ヒザ、腰を守るサポーター
小林千穂さんも体感! ヒザ、腰を守るサポーター 「ザムスト」のサポーターを山岳ライターの小林千穂さんと読者が体感! 登山愛好者の膝、腰のサポートに!
NEW ガイドが試した こだわりのトレッキングハット
ガイドが試した こだわりのトレッキングハット 女性のためのトレッキングハット「アルピア」。視野の広さ、収納性など、女性登山ガイドの菅野由起子さんがチェック!
紅葉登山シーズンも中盤から終盤へ
紅葉登山シーズンも中盤から終盤へ 標高1000~2000近くまで降りてきた山の紅葉。低い山でじっくりと紅葉狩りを!
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。 日没時間が早まる時期は、アクセス時間を減らして行動時間を長くするような登山にしたい。「電車で行ける・帰れる山」で時間を短...
登山+紅葉+寺社仏閣で心落ち着く秋を愉しむ
登山+紅葉+寺社仏閣で心落ち着く秋を愉しむ 日本の山には、山岳仏教の修験の場として栄えた場所が数多い。参道沿いやの艶やかな紅葉は、繊細で心が落ち着くような美しさがあ...
冬でも歩けるアルプス! 全国のアルプスファンへ
冬でも歩けるアルプス! 全国のアルプスファンへ 日本全国にはその数は50以上あるともいわれる「ご当地アルプス」。本場を彷彿とさせる!?
秋の贅沢、秘湯+紅葉の山旅へ
秋の贅沢、秘湯+紅葉の山旅へ 温泉で山歩きの疲れをほぐし、山の幸を堪能する。日本の秋を満喫する至高の組み合わせに誘うコース七選
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS
山で便利・安心! 登山用アプリ&GPS スマートフォンの普及で高価で手の届かなかったGPS機器が誰でも使える! 初心者向けのノウハウから裏技まで、登山アプリとス...