箱根の登山の帰りは、「ユトリロ」で自分にごほうび:画廊喫茶ユトリロ(神奈川県箱根町)
登山の帰りにちょうどいい、味なお店を紹介する西野 淑子さんの「下山メシ」。今回は、箱根の山へ登った帰りに立ち寄りたい喫茶店「画廊喫茶ユトリロ」について紹介する。

下山で汚れた服だけど……。がんばった自分にごちそうしよう
山帰りで入るのに、ちょっとだけ躊躇する店。
その店は箱根にある。箱根湯本駅から歩いて5分ほど。以前勤めていた出版社の社長が好きだと言っていた店。
「ユトリロの絵が飾ってあるんだよ。店の名前がユトリロっていうんだ。分かりやすいだろ」
仕事で、観光で、箱根に足を運ぶと、時間があれば立ち寄るようになった。ツタの絡まる瀟洒(しょうしゃ)な建物、店内は明るくサロンのような雰囲気。すっぽりと体がおさまるソファ、壁に飾られた絵画。天井が高くて、ゆったりとした時間が流れている感じ。正直、絵のことなんて分からない。でも、電車待ちの時間に、コーヒーやケーキを味わいながらぼーっと過ごすのが心地よい。

山歩きのあと、汗まみれ、泥付きの靴でこの店の前を通るとき、入りたいなと思う気持ちと、入っていいのかなと思う気持ちがせめぎあう。いいやかまうものか、今日はいい山行だったから自分にごほうびだ、がんばって歩いたから甘いものを自分にごちそうしよう、いろいろと言い訳をして、店に入る。
しっかり甘みのあるケーキと、スッキリしたコーヒーの味わいの相性がいいなといつも思う。コーヒーは箱根の湧水を使っているのだという。ケーキは常時10〜15種類揃えていて、メニューにずらりと並んでいるとどれにしようかと迷ってしまう。迷うのも楽しみのうちなんだよなと思いつつ、頼むのはたいがいチーズケーキだったりする。

こだわりの喫茶店で食べるカレーライス。いつもの味と全然違う
先日の登山、なんとなく昼食を食べ損ねて下山してしまった。
お腹がすいた、何を食べようかと考えながらバスで箱根湯本に向かい、店の前で何度か行ったり来たりして、やっぱりユトリロにしようと店に入った。オーダーしたのは前から気になっていたカレーライス。
たっぷりの野菜サラダとカレーが同じお皿に盛りつけられている。
シャキシャキの生野菜がことさらにおいしい。下山後の体が欲しているんだろうか。カレーを一口。ふわっとスパイスの香りが広がる。なんだろう、見た目は普通のカレーなのに、いつものカレーと全然違う。コクがあって、独特の香り。肉はほろほろになるまで煮込まれている。野菜もすっかりルーにとけ込んでいるんだろう。無我夢中でご飯とカレーをかきこんでいたら、あっという間になくなってしまった……。
食後はコーヒーで一息。さんさんと日の光がそそぐ店内で、今日の楽しかった山のことを思い起こす、幸せな時間。でもお腹がいっぱいで、ケーキはもう食べられない。次回は何を食べようかな。
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。
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