残雪/熱中症/道迷い、さまざまなコンディションに対処が必要な時期。島崎三歩の「山岳通信」 第148・149号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年5月31日に配信された第148号、および6月11日に配信された149号では、残雪/熱中症/山菜採りと、さまざまなコンディションでの山岳遭難が発生していることを説明、それぞれの対応策について示唆している。

 

5月31日、および6月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第148・149号では、5月12日~6月2日に起きた14件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 5月12日、南佐久郡南牧村の飯盛山で、59歳の女性が飯盛山から下山中に石を踏み外し転倒、負傷する山岳遭難が発生。女性は消防により救助された。

  • 5月12日、北安曇郡小谷村の雨飾山で、45歳の男性が雨飾山から下山中に雪上で足を滑らせ滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は大町警察署山岳遭難救助隊及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会により救助された。

  • 5月18日、上田市の太郎山で、53歳の女性が太郎山から下山中にバランスを崩し転倒、負傷する山岳遭難が発生。女性は上田署員により救助された。

  • 5月23日、北アルプス燕岳で、45歳の男性および40歳の女性が合戦尾根を下山中、女性が雪に足を滑らせ雪渓を滑落、男性も女性を救助しようとしたところ滑落。両名とも怪我はなかったものの登山道に戻ることができず行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区遭対協隊員により2人は救助された。

  • 5月25日、北アルプス焼岳で、48歳の男性および46歳の女性が焼岳山頂から上高地方面に下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。2人は県警ヘリにより救助された。

北アルプス焼岳の遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月30日付)
 
  • 5月25日、北アルプス燕岳で、46歳の女性が合戦尾根を下山中、石に足を滑らせ転倒し負傷する山岳遭難が発生。女性は安曇野署員により救助された。

  • 5月26日、長野市鬼無里地籍の中西山で、72歳の女性が山頂から下山中に体調不良(脱水、熱中症疑い)により行動不能となる山岳遭難が発生。女性は県警ヘリにより救助された。

  • 5月26日、木曽郡木曽町開田高原地籍の城山で、70歳の男性が登山中に山頂付近で体調不良(脱水、熱中症疑い)により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は岐阜県防災ヘリにより救助された。

  • 5月30日、北アルプス針ノ木岳で、単独で入山した66歳の男性が登山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 6月1日、中央アルプス宝剣岳で、59歳の女性が千畳敷へ向けて下山中に雪渓上で滑落して負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

中央アルプス千畳敷の遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月4日付)
 
  • 6月1日、北アルプス白馬鑓ヶ岳で、35歳の女性が山頂から白馬鑓温泉に向けて下山中に雪渓上で滑落して負傷する山岳遭難が発生。翌日の6月2日に県警ヘリで救助された。

  • 6月2日、北アルプス白馬岳で、32歳の女性が山頂から大雪渓を下山中に雪渓上で滑落して負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

北アルプス白馬岳・白馬大雪渓の遭難現場(長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月4日付)
 
  • 6月2日、北アルプス常念岳で、51歳の男性が山頂から三股登山口に向けて下山中に足を滑らせ転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 6月2日、伊那市富県地籍の高鳥谷山で、72歳の男性が単独で高鳥谷山付近に入山したまま行方不明となっている。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

5月2週は、2件の遭難が発生しました。5月に入り、日中は汗ばむくらい暖かくなってきましたが、標高2000mに満たない山域でも、沢や樹林の中には雪が残っています。緩んだ雪上での歩行は、非常に体力を消耗します。低山でも下山中に転倒・滑落する遭難が後を絶ちませんので、日々のトレーニングを怠らないようにし、時間に余裕を持った登山を心がけてください。

5月3週は、1件の遭難が発生しました。低山でも下山中に転倒・滑落する遭難が後を絶ちません。転倒・滑落は体力不足にも起因しますので、日々のトレーニングは、単にウォーキングやランニングだけでなく、ある程度負荷をかけたトレーニングを行うとともに、時間に余裕を持った登山を心がけてください。

5月4週は、週末を中心に5件の遭難が発生しました。25日に発生した焼岳の道迷い遭難は、下山中登山道を外れ、谷に迷い込んだものです。そのまま下山を続ければ落石の恐れのある不安定な雪の斜面を下らなければならず、滑落や転倒の危険性が非常に高い場所でした。
今回はその手前で救助要請をしたことにより難を逃れていますが、道迷いの末に不安定な斜面や崖に迷い込み滑落するケースは後を絶ちません。登山中は現在地や登山道の確認をこまめに行うよう心掛けてください。
また、猛暑となった週末は体調不良による遭難が相次ぎました。今後、標高に関わらず、熱中症対策にも心がけてください。

5月5週は天候に恵まれた週末を中心に6件の山岳遭難が発生しました。北アルプスなどの標高の高い山域では残雪に起因する滑落が連続して発生しました。残雪期の登山は、アイゼン・ピッケル等の装備品の携行は当然ですが、それらを適切に使いこなす雪上技術が求められます。
また、場合によっては滑落の危険のある場所ではロープを使用した確保技術も必要です。雪渓上での滑落は岩等に衝突し重傷となるケースが多いため、慎重な判断と行動を心がけてください。
伊那署管内では山菜採りに向かったと思われる男性が行方不明となっています。今後本格的な山菜採りシーズンを迎えますが、入山する際は、家族に予定を伝え、携帯電話・ヘッドランプ・非常用の食糧等を携行すると共に、単独での入山はできるだけ控えましょう。

 

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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