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天気は何を確認すればいい? 入山直前/登山中の確認方法を涸沢山行で実践

山の天気を知って安全に登山を楽しもう!
基礎知識 2019年10月08日

山は秋のハイシーズンに突入してきました。せっかくの楽しい登山ですので、安全に過ごしたいですよね。周囲にたくさん人がいるから安心、前を行く人がいるから安心というのでは、なかなか自分でリスク管理できるようになりません。本当にリスクが潜んでいないかを意識しながら安全に登山を楽しみましょう。もちろん、天気についてもしっかりリスク管理をするべき項目のひとつです。

 

前回の記事では、事前に資料を読んで当日の天気をイメージするまでの流れを紹介しました。今回は、その解析結果を踏まえて、実際に登山をしながら、登山当日は天気のどのようなところに注目すれば良いのかご説明します。

★前回記事:鮮やかな紅葉の山を満喫するために、いろいろな資料を見て山の天気を予想しよう!

 

入山前にリアルタイムの天気を確認

今回は、前回の記事で天気を解析した、9月12日から13日の日程で、涸沢カールを目指します。

12日、お昼ごろにバスで上高地に降り立つと、澄んだ青空が広がっていました。有名な河童橋越しに見える吊尾根の景観が素晴らしく、翌日に向けてますます登山意欲が高まります。


すぐに涸沢に向けて歩き出したいところですが、まずは最新の気象情報を確認しましょう。事前の予報よりも天気が悪化していないか、もしくは天気の急変の可能性がないかを調べておくためです。最近はスマートフォンがかなり普及し、いつでも最新の情報を確認できるようになっています。

スマートフォンは、地図を見るために活用されている方も多いかと思いますが、リアルタイムの天気を調べるためにも大変重宝します。出発前の再点検では、次のような項目を見ておくと良いでしょう。

 

■天気予報

最新のポイント予報をもう一度見ておきましょう。急に変わる場合も考えられます。また、直前になって雷が発生する可能性についても言及されているかもしれません。


■雨雲の動き

雨雲の動きは、周辺の雨をもたらしている雨雲を表示します。雨雲が移動している場合、こちらに近づくようならば、これから天気が崩れる可能性が高くなります。周辺にレーダーエコーがないか見ておきましょう。tenki.jp登山天気アプリでは、3時間後の予想まで見ることができます。


■雷危険度

雷危険度は、雷の激しさや発雷の可能性を表示します。秋も、大気の状態が不安定になると雷が発生する場合があります。落雷は登山者にとって大きなリスクになりえますので、雷ナウキャストは入山前に確認しておきましょう。tenki.jp登山天気アプリでは60分後の予想まで見ることができます。また、天気予報の予報文に記載される「雷を伴う」という文言も、発雷確率を探る材料になるので、注意深く確認しておくと良いでしょう。


■気象衛星

テレビの天気予報でよく目にする気象衛星の雲画像も、天気の傾向を把握するのに役立ちます。まとまった雲が近づいてくる場合は、天気が下り坂に向かう可能性が高いと考えられます。真っ白い雲がぽつぽつと湧きでている様子が見られたら、雨雲や雷雲が発生しやすい状態になっている可能性があります。このように、雲の様子からはいろいろな情報を得ることができます。

周囲に天気を崩す要因がないことを確認したら、いよいよ山道に入っていきます。上高地は深い谷の底にあるので見える空はそれほど広くはありません。それでも透き通った青い空を見れば、きょうが素晴らしい晴天だということが伝わってきます。

気象情報の確認は、電波が入りやすいエリアで済ませておきましょう。山道に一歩入れば電波の届かないところが多く、見たいときに情報が見られない事態も発生します。比較的人気の高い上高地エリアでも、河童橋周辺や明神、徳沢、横尾などの小屋周辺以外では、ネットになかなか繋がらないことが多いのです。

 

天気を五感で感じよう

天気の変化は、空の様子からも知ることができます。雲の面積、形、高さといった雲の表情は、大気の状態を知る手掛かりになり、これから起こる天気を知るヒントになります。

例えば、秋の空に似合う雲のイメージが強い巻雲は、それだけでは雨の兆候とは言えませんが、次第に全天に広がり、さらに雲の高さが低くなってくるようであれば、天気が悪くなる兆しです。

また、山にかかる積雲が大きく成長してきたり、変わった形の雲が山頂付近にかかったりといった変化も、天気悪化を暗示する兆候になる場合があります。上の写真でいえば、険しい山肌にへばりつくように見える雲の動向が注目したいポイントです。

このように、自然の様子から天気を予想することを観天望気といい、先人によって形づくられた経験則です。山の中では、観天望気が役立つ場面が多くあるので、知っておいて損はありません。ただ、判断が難しい場合が多いのも事実です。とにかくあたりの様子を注意深く観察し、電波の入る場所であれば、雨雲の動きや雷危険度をこまめに確認するのがおすすめです。

 

いよいよ登山スタート!

翌13日、早朝に目を覚ますと、空は一面の雲に覆われていました。このようなときこそ、スマートフォンの最新の気象情報が役立ちます。雨雲レーダーや気象衛星などを見て、どのような雲なのかを確認します。

気象衛星では近畿~東海に広がる雲の広がりが見られました。これは、前回の天気図上に現れていた気圧の谷に伴う雲だと考えられます。幸い、東海地方の沿岸部から海上へ抜ける動きをとったので、穂高岳周辺で雨が降ることはありませんでした。地上の天気図に直接現れない上空の気圧の谷が天気を崩すことがある、という教訓にしていただければと思います。

涸沢カールまで登りつめると、すでに草紅葉が始まっていました。これからさらに冷え込む日が増えると、ナナカマドやダケカンバといった木々の葉も次第に色づいていき、秋の涸沢カールを彩ります。

 

「なぜ?」「どうして?」を大切に

週間予報、地上天気図、高層天気図の確認、さらにリアルタイムの天気の把握など、ご紹介した情報の種類が多いので非常に面倒事に感じられるかもしれません。しかし、そうした段階を経て得られる晴れた山は、楽しさもひとしおです。また、天気を崩す要素がなるべく少ない日を選んで登ることで、たとえ思ったような晴天に恵まれなかったとしても、遭難の危険性を高めるような荒天に遭遇してしまう確率を下げられると私は考えています。

天気図と実際の天気がリンクしていることがはじめのうちはなかなか実感できないでしょう。それでも、天気を予想した上で山に登ることを何度か繰り返していくうちに、天気の傾向がつかめるようになるはずです。このとき、予想していた天気が、実際の天気と合っていたのかを必ず振り返りましょう。

予想と合っていた点と、予想していなかった点があるかと思います。ここで、どうして予想が外れたかを考えてみることが天気を読む力を伸ばします。ぜひ、次の山行を計画される際はご自身で取り組んでみて、より深い天気の世界に触れてみてください。

教えてくれた人

宮田雄一朗

日本気象協会所属の気象予報士。山梨県で気象キャスターをしています。天気予報をきちんと伝えられるように奮闘中。日々の天気の話題の中で、登山にちょっと役立つ知識もお届けします。

日本気象協会

日本の気象コンサルティングサービスのパイオニアとして1950年に創立。以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。
近年ではAIやIoT、気象ビッグデータの活用を通じ気象の調査解析、情報提供の精度を向上させ、気候変動への適応など持続可能な世界を実現する活動を支援している。
 ⇒tenki.jp

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