野菜ごろごろの王道カレーが山らしい。大弛小屋で食べた「山小屋カレー」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

下山後に味わいたい粋なごはんを紹介するライター西野 淑子さんの「下山メシのよろこび」。今回は、金峰山や北奥千丈岳などの登山口となる大弛峠に建つ山小屋で食べられる山小屋カレーを紹介する。

 

山小屋の軽食が好きだ。

小屋泊まりの山行のとき、少し早めに山小屋に着いて、遅めのお昼ご飯を食べるのがいい。あるいは行程の途中にある山小屋に立ち寄ってお昼ご飯。ここを通るなら絶対あの山小屋であれを食べよう、と決め打ちしていくこともあるし、あまり調べず、深く考えずに立ち寄ったところで、想定外のおいしいものに出合うこともある。

北奥千丈岳の山頂から金峰山方面を望む

 

先日、奥秩父・北奥千丈岳を訪れた。 最後に訪れたのは15年くらい前、金峰山~瑞牆山に縦走をしたときだった。仲間同士でタクシーで大弛峠に向かい、下車したらあたりはガッスガス。一面乳白色のなかを歩き、何一つ山の見えない北奥千丈岳の山頂をとりあえず踏んでから、金峰山を目指したのだった。

今は塩山駅から大弛峠への予約制路線バスが運行しており、アクセスが格段によくなった。ありがたいことだ。そして今回は天気がとてもよく、美しい樹林を歩いて山頂に立った。…そうか、こんなに眺めのよい場所だったのか。

 

サクサクと登山道を下り、大弛峠に向かう。大弛小屋のカレーを食べよう。歩き始めるとき、登山口の看板を見て決めていた。

バス停、駐車場からほど近くアクセスのよい大弛小屋。営業期間は4月末~11月末

 

素朴な雰囲気の、いわゆる多くの人が想像する「山小屋」らしいたたずまいの山小屋。屋外のテーブルでも登山者が思い思いにくつろいでいる。大きなザックを足元におろした人がソフトクリームを食べている。なんとも美味しそうだ。

小屋に入り、山小屋カレーをオーダー。 待つことしばし、カレーが登場した。ふわりとカレーのいいにおいに、お腹がぐうっと鳴ったような気がする。天気もよいので、外のテーブルでいただくことにした。

軽食メニューの「山小屋カレー」800円 ※2019年9月現在

 

奇をてらわない、王道のカレー。野菜がごろごろと入っている。ご飯にフライドオニオンがかかっているのが、少しモダンな感じだ。

一口食べて、素朴な味わいにほっとする。子供の頃から食べ慣れてきた、いつものカレー。気取らない味、おなじみの味だ。煮込んだカレーのうまみ、適度な辛さがいい。ふっくらしたご飯もおいしい。大きな具はじゃがいもやにんじん、ナスも入っていて食感がいい。肉が煮くずれて入っているのもなんだかいい感じ。一気に半分ほど食べ、じわっと汗をかき、ちょっと水を飲んで落ち着いて、ゆっくり味わう。山で食べるカレーはなんでこんなに美味しいんだろう。じわじわとお腹が満たされていくのが気持ちいい。

シェフの作る洗練されたカレーは街で食べればいい。山小屋で食べたいのは普通のカレー。できればご飯の盛りがよく、カレーがたっぷりかかっていれば言うことなしだ。

小屋は登山道沿いにあるので、通りすがりの登山者が私の食べているカレーを見てちょっと歩調をゆるめる。おいしいですよ、お腹すいてるでしょう? あなたも食べたらいいですよ。

お腹いっぱい、幸せな気持ちで帰りのバスに乗って思い出した。‥ああ、ソフトクリームを食べ損ねたな。まあいいや、また来ればよいのだから。

大弛小屋

金峰山や北奥千丈岳などの登山口となる大弛峠に建つ山小屋。昔の雰囲気そのままの丸太造りの建物が印象的。昼はうどんや味噌田楽などの軽食あり。国師岳の伏流水を使ったコーヒーや紅茶が看板メニュー。

電話:090-7605-8549
http://oodarumi.jp/

 

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

編集部おすすめ記事