県の紋章や県旗のデザインに用いられるなど、群馬の人々にとって身近で親しみを覚える存在といえる上毛三山。その3つの山は、日本三大奇勝の1つの妙義山、そして今回取りあげる赤城山と榛名山だ。この2山は、それぞれ複数の山からなる総称で、赤城山は1300〜1800m級の黒檜山、荒山・鍋割山、長七郎山・地蔵岳など、榛名山は1100〜1400m級の掃部ヶ岳・杏ヶ岳、相馬山、水沢山などから構成される。
赤城山は日本百名山の1つで、富士山に次いで2番目に長い裾野をもつことから「裾野は長し赤城山」と上毛かるたにも詠まれる。そしてかの国定忠治の名文句「赤城の山も今宵限り」は、忠次が赤城山の南面の岩屋にこもったという言い伝えによる。
関東有数の複成火山で、山頂に大沼と呼ばれる美しいカルデラ湖を抱く赤城山。春にはツツジが咲き、秋には紅葉が色づき、冬には初心者でも楽しめる雪山歩きやスノーシューが人気だ。古くは山岳信仰の山として知られていたが、今では登山だけでなく、キャンプやマウンテンバイク、わかさぎ釣りなど、体験型のアウトドアレジャーが盛んなリゾート地になっている。
榛名山もおよそ40万年前に激しい噴火を繰り返しながら標高2000mを越える富士山のような成層火山になり、後に山頂部が陥没し、カルデラと外輪山が形成されたという歴史をもつ。赤城山と同じように山岳信仰の山とされ、榛名神社をはじめとした神社や石仏などがいくつも祀られているが、今ではその榛名神社は関東有数のパワースポットとして注目され、榛名山ロープウェイや伊香保温泉とあわせて多くの人が足を運ぶ、群馬でも有数の観光地だ。
今回はそんな赤城山と榛名山の中から、各山厳選3コースずつを紹介する。いずれも春と秋がベストシーズンだが、初冬には空気が澄んで木々が葉を落とし展望がよくなり、また静かな山歩きを楽しみたい人にはオススメの季節ともいえる。そして先述したが、首都圏からのアクセスも便利で雪山初心者向けコースもあるので、雪山デビューを計画している人にもぜひおすすめだ。
標高1828mの赤城山最高峰の黒檜山と駒ヶ岳を結ぶ縦走周回コースで、歩行時間は3時間半。気軽に登れ、花や展望を楽しめると人気がある。
ルートは、あかぎ広場前バス停~黒檜山登山口に進み、、猫岩~黒檜山・駒ヶ岳分岐を経て黒檜山山頂へ。山頂は小広場であまり展望は望めないので、少し先の天空の広場へ進むのがいい。広場からは上州武尊山、谷川連山、燧ヶ岳、日光白根山、至仏山、浅間山、そして富士山や秩父連山の絶景も楽しめる。さらに駒ヶ岳の縦走路を取り、御黒檜大神の鳥居と石碑、石の祠のある地点からは大沼や地蔵岳、長七郎山、駒ヶ岳を見渡せる。下山後、時間に余裕がある場合は、「小さな尾瀬」とも呼ばれる覚満淵へ立ち寄るのもいいだろう。
家族連れでも楽しめるが、一部岩場があるので、とくに小さな子どもがいる場合は注意したい。
高低図
アカヤシロ、ヤマツツジ、ミツバツツジ、シロヤシロ、ズミ、ドウダンツツジなど、華やかなツツジの花々が出迎えてくれる高原歩きが楽しいルート。さらに視界の開けた笹原歩きやロープが設置された岩場歩き、関東平野や周辺の山々を見渡す山頂からの素晴らしい眺めなど、4時間ほどのコンパクトな山行の中に、楽しみがギュッと凝縮している。
一般的なコースは、荒山高原登山道~荒山高原~荒山山頂周回~鍋割山ピストンを取るが、他には赤城森林公園から荒山に登るルートや、鍋割山登山口から一直線の急登を登るルートも取ることができるので、スケジュールや登山経験に合わせて選ぼう。
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火山湖の小沼を麓に抱く長七郎岳と赤城第3の高峰・地蔵岳を縦走するルートで、手軽に山歩きとさまざまな山の景色が楽しめると老若男女から人気がある。
スタートは、覚満淵の東にある赤城公園ビジターセンター。鳥居峠の小沼・長七郎登山口~小沼分岐を経て、まずは長七郎山頂へ。地蔵岳を間近に、ブルーからグリーンに変化する小沼の神秘的な眺望も楽しめる。そこからガレ場下り、小沼の淵を歩き、八丁峠に到着。さらに地蔵岳登山口から整備された木道を登り、背後に小沼や長七郎山の絶景を背負いながら、地蔵岳山頂へ。一等三角点と電波塔が林立し、広大な眺めも待っている。下りはミズナラやタケカンバなどが美しい尾根を下ろう。
赤城公園ビジターセンターでは山の歴史や動植物について学べるほか、食堂や無料休憩所も併設されているので利用したい。
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榛名山群の西側に位置する、最高峰の掃部ヶ岳。標高1449mの山頂からは榛名湖や榛名富士、さらにその周辺の外輪山を箱庭のように眺めることができ、ヤマツツジや紅葉の時期を中心に、多くの登山者で賑わう。このコースは掃部ヶ岳と杏ヶ岳を縦走する約5時間のコースで、静かな山歩きとその展望を存分に味わうのなら、初冬のハイキングもいいだろう。
ルートは、榛名湖半にある湖半の宿記念公園の市営駐車場~掃部ヶ岳登山口~硯岩分岐を経て、榛名湖や外輪山の眺望を楽しみながら掃部ヶ岳山頂へ。浅間山や妙義山、西上州、秩父、八ヶ岳などの眺望が美しい。さらに峠上部の分岐~地蔵が祀られた杖の神峠~歩きやすい雑木林の尾根をアップダウンし、杏ヶ岳山頂に到着。樹林越し東側に望めるパワースポット・榛名神社を探してみよう。
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榛名山の中でも、ひときわ特徴的な山容をもつ相馬山。地元からは「イルカの背びれ」と呼ばれ親しまれている。コースは約2時間と短いながらも、高山植物の群生が美しい木道歩き、鉄ハシゴが設けられた急な岩場、さらに山頂からの絶景など、進むごとに変化する景色が楽しい。
スタートは県立榛名公園松之沢グラウンドの駐車場。沼ノ原のゆうすげの道(木道)~磨墨峠~ヤセオネ峠分岐~相馬山山頂へ。山頂には黒髪山神社が祀られ、眺望は水沢山、妙義山、荒船山、遠くには関東平野や富士山、スカイツリー、八ヶ岳も望むことができる。ちなみにハシゴで登る磨墨峠の磨墨岩(スルス岩)の上からは360度のパノラマが楽しめるので挑戦してみよう。
花の山としても知られ、春にはサクラスミレやニッコウキスゲ、レンゲツツジやヤマツツジ、夏にはユリ科のユウスゲが見られ、登山者の目を楽しませてくれる。
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榛名山群の東側に位置する水沢山。東の麓には板東三十三番札所の第十六番水沢観世音があり、さらに北には名湯・伊香保温泉が控えるなど、水沢山を歩くコースは美しい花や展望などの山歩き以外の楽しみも多く人気が高い。そのため、登山道もよく整備されている。
ルートは、水沢観音~お休み石~十数体の石仏が並んだ水沢山の東の肩へ。なだらかな稜線と少しの急登を進むと、山頂に到着だ。下山は林道出合~つつじヶ丘展望所~見晴台展望所~伊香保神社~石段街バス停に下る。
山頂からは関東平野を一望し、相馬山や二ツ岳、榛名富士など榛名山群を望むことができる。つつじヶ丘ではその名の通り、ヤマツツジ、ミツバツツジが群生が美しい。
登山適期は他より少し時期がずれてツツジが美しい4月中旬から11月の紅葉の頃だ。
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