梅雨のない北海道樽前山で驚愕のズームを体感 CANON/PowerShot G3 X

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今月のPICK UP CANON/PowerShot G3 X [キヤノン]

価格:オープン
センサー:1.0型CMOSセンサー
有効画素数:約2020万画素
レンズ(35mm換算):24-600mm(f2.8-5.6)
重量:約733g(バッテリー、メモリーカード含む)


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梅雨のない北海道登山の相棒は最新のコンデジ

僕は毎年この時期になると、北海道に向かう。梅雨の時期の本州よりも好天の可能性が高い北海道で遊ぶためだ。

毎度、さまざまな山道具、仕事道具を持っていく。今回のお伴は、Canonの最新型カメラ「PowerShot G3 X」である。僕は代々の「PowerShot」シリーズを10年近く使い続けており、新作と聞くと心が騒ぐ。ちなみに、今回「PowerShot G3 X」自身が写っている画像は、僕が現在使っている「G16」で撮影したものだ。

しかし、手の平に乗る大きさの「G16」と「G3 X」のサイズ感はかなり違う。なにしろ「G3 X」には「24mm-600mm」という驚くべき高倍率ズームレンズが付属。光学25倍ズームと最新のデジタルズームであるプログレッシブファインズームを合わせると、A2サイズの印刷が可能となる記録サイズLで、なんと50倍まで画像を劣化させることなく撮影できるのだという。画像サイズを小さくすれば、倍率100倍もOKだ。

今回はカメラバッグとしてパーゴワークスのフォーカスM(サイズ160X200X70mm)を使用したところ、123.3×76.5×105.3mmの「G3 X」がまさにピッタリ。「G3 X」の重量は約733gで、ストラップで首にかけて歩いていると少々重く感じたが、これに入れて肩にたすき掛けすれば、重さはまったく気にならなかった。

レンズを最大にズームさせた状態が、こちら。

それほど大きくないボディと、長いレンズのサイズのギャップがおもしろい。これは期待できそうだ。

驚愕のズームは双眼鏡代わりになる!

今回の撮影は支笏湖に近い樽前山で行なった。中央には樽前ドームという溶岩の巨大な塊があり、いまも噴煙を上げている。いわゆる二百名山のひとつであり、なかなかフォトジェニックな山だ。
そんなわけで、僕は七合目ヒュッテ前の登山口から一気に樽前山の外輪山に登っていった。

早速、有名な樽前ドームが見える! まずは南側から遠景を撮影。角度はイマイチだが、撮影開始の景気付けに、そのままズームレンズを試してみる。

おお、スゴい! 中腹の岩肌がこれほど鮮明に写るとは。手持ちで適当に撮っただけなのだが、「G3 X」自慢の「手ブレ補正段数3.5段」の力だろうか。

その後、外輪山を時計回りに歩いていく。この日はほぼ快晴ながら、湿気の多い海と湖の間に近い屹立する山だけに、ときおりガスが流れてくる。

だからこそ、こんなブロッケン現象が期待通りに出現。これは「AUTO」で撮ったものだが、今考えれば、露出などを変えることで、もっとよい写真が撮れたのだろうが……。このときは若干焦っていたのである。それでもこれほどの色彩が切りとれるのだから、感心してしまう。

ちなみに、僕は山中を歩行しているとき、ほとんど「AUTO」のまま撮影している。細かな調整を行なえば、より美しい写真が撮れることはわかっているのだが、時間にロスが生まれてしまい、すみやかに行動できないからだ。だから「AUTO」でもこれだけ美しく撮れることは、非常にありがたい。もちろん時間に余裕がある場合は、僕なりにいろいろ工夫して撮影しているのであるが。

外輪山にある山頂のひとつである西山に向かっていると、北方に風不死岳が見えてきた。

現在位置からは、距離にして4kmほど離れているだろうか。

そしてズーム。

山頂の後ろが雲になっているために、それほど美しい写真ではないが、山頂に登山者がいるのがわかる。肉眼では気付かなかったというのに、恐ろしいほどの高倍率だ。

さらに北西方向には、羊蹄山。

雲の上の山頂が小さく見えている。

さすがに40kmほど離れているので、「G3 X」でもこれが限度。

しかし、残雪の様子や山頂付近の岩の凹凸がはっきりわかる。画像としてのよしあしはともかく、これはおもしろい。こうなると、もはや双眼鏡代わりにも使いたくなる。

そして北東700mほどの場所には、再び樽前ドーム。改めて撮影してみる。

これはもっとも引いて撮った写真。

画像としてのバランスを考えながらズームしていくと、このような感じに。

ちょうど噴煙が流れ出している部分に、日光が当たっている。

そしてズームを最大にすると……。

いや~、スゴい迫力! まるで、その場に立っているような臨場感なのである。

マクロも強いG3 X

足元には、イワブクロの花が咲いている。樽前山でとくに多くみられるため、別名「タルマエソウ」ともいうらしい。

花の撮影に自信はないが、僕にしてはよく撮れている。

「G3 X」はマクロ撮影も得意なので、センスのある人ならば、もっとよい写真が撮れるに違いない。

その後も登山道を歩きまわり、撮影を重ねていく。

しかしまあ、樽前山は見て美しく、歩いておもしろい山だ。どうして百名山に選ばれていないのか、不思議になる。

みたび、樽前ドーム。今度は東側からの撮影だ。

何度も撮影してクドいと思われるかもしれないが、それだけの魅力があるのだから仕方ない。

ズームして撮影すると、中央の噴火口にこびりついた硫化物の様子がわかる。「G3 X」のズーム機能の素晴らしさには、相変わらず驚いてしまう。

自撮りも対応。この連載にはありがたい…

外輪山の最高峰、標高1021.9mの東山が近づいてくる。

この日は週末とあって、多くの登山者でにぎわっていた。

できるだけ他の人がいなくなってから、記念の自撮り。

やはり照れる。だけど思った以上にうまく撮影でき、なんだかうれしい。僕はこういう自撮りに慣れていないが、「G3 X」はモニターの稼働域が広いので、自分で確認しながら撮影できるのだ。

ただし、片手でカメラを支えてシャッターを切るには少々重く、腕力がない人は難儀するかもしれない。

歩き始めて4時間後、下山を開始する。名残惜しさに、山頂付近を見上げながらもう一度撮影。

左のほうのスカイラインに登山者がいるようだ。

一気にズーム。

なるほど2人だったか。一般的なコンパクトデジタルカメラでは撮影できない鮮明さで、雰囲気もよい。高倍率でズームできるからこそ、撮影できた写真である。

しかし、ここで気付いた。バッテリーの残量がほとんどなくなっているのだ。やけに早いな……。たしかにいつもよりも時間をかけて撮影を楽しんだが、まだ半日にもなっていない。電動ズームがおもしろすぎて、多用したのが原因かもしれないがちょっとした写真好きならば、すぐにバッテリーを使いきってしまうはずだ。また後日、別の山で使用した際は、今回ほど写真を撮らなかったが、登山開始からキャンプ地までの8時間が限度だった。今回は「G3 X」と僕が愛用している「G16」のバッテリーが同一だったため、交換して事なきを得たが、安心してたくさんの撮影をするならサブバッテリー持ったほうがよいだろう。

下山口が近づいたが、時間には余裕があるので、再び花の撮影にチャレンジする。今度はエゾイソツツジだ。

だが、日差しが強すぎて、白い花はクリアに撮影できない。輪郭が飛んでしまってディテールもよくわからないのだ。そこで、露出などを調整し、僕好みに。

僕でもこれくらいの撮影が簡単にできるとは、いいね!

プロのカメラマンでもなければ、山中で使うカメラは可能な限りコンパクトで軽いものが好ましい。一方で、一般的なコンパクトデジタルカメラで撮影できる画像のクオリティには限界がある。そう考えると、サイズと重量を抑えつつも、これだけの実力をもつ「G3 X」は現実性のある選択肢だ。正直なことをいえば、僕自身もこれまで愛用していた「G16」から、こちらに乗り換えたくなるほど。いや、やはり機動性やバッテリーのもちを考えれば、「G3 X」と「G16」との使い分けができると、山中での撮影に幅が出そうだ。

最後に後日談。
この後、大雪山の近くでも撮影に使っていると、雨が降ってきた。

テスト用に借りたものなのに、かなり濡らしてしまった。だが一切異常はなし。「G3 X」は防滴性、防塵性にも優れていると聞いていたが、たしかにその通りであった。

そのときに現れたエゾシカ。

すでに日没後で撮影には厳しい条件。しかし、悪くはない写真を撮影できた。しかし光量が足りていれば、もっとよい写真が撮影できるはずだ。これから「G3 X」を使う機会があれば、高倍率ズームを最大限に利用し、動物写真に挑戦してみたいと思っている。

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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