4つの脚の高さをそれぞれ微調整できる! 超軽量アウトドア用テーブルを、自ら購入してチェック

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今月のPICK UP factory-b/レベル

価格:価格:9,000円(税別)
サイズ:140×240mm
重量:88g
素材:チタン、カーボン、アルミニウム、ゴム

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“テーブル”というものは、テント泊や山中での料理の際に“あれば便利”な装備だ。だが、“なくても済ませられる”ものでもある。登山装備の軽量化を考えると、“あれば便利”“なくても済ませられる”ものは省くのがセオリーとはいえ、非常に軽量なものならば体に負担もなく、登山が楽しく充実したものになっていく。

今回取り上げるのは、重量がたった88gという超軽量テーブルだ。一般的なスマートフォンの半分以下の重量だが、ただ軽量なだけではない。おもしろいアイデアで設計された斬新な製品なのだ。

製作は、釣りに関連するアウトドアギアを得意とする日本のガレージメーカー「factory-b(ファクトリー・ビー)」。モデル名は「level(レベル)」である。

 

それぞれの脚の長さを変えられる仕組みとは?

「レベル」とは、すなわち「水平」のこと。このテーブルの特徴は、まさに製品名の通りに、不整地でも「天板を水平にできる」ことなのである。そのあたりはこれから詳しく述べていきたい。ちなみに、メーカーではこの製品のことを「レベリング・トレイ」と称しているが、実際のトレイ(=お盆)のように縁がせりあがった形状ではなく、天板は平面だ。

ところで、この連載は本来、実際に山中でテストをして製品レビューを行なうのがコンセプトだが、今回も前回に引き続いて新型コロナウイルスの影響のために、僕の自宅近くの公園でのテストである。ご了承いただきたい。

さて、こちらはレベルの販売時の状態だ。1枚の白いタイベックに包まれ、ゴムで留められている。アウトドアではおなじみの素材であるタイベックは強靭で防水性もあり、たんなる包装紙ではない。アイデア次第でなにかに使えそうで、ちょっとうれしい。

ただし、毎回これにテーブルを包んでゴムで留めるのは面倒でもあり、別の収納袋を探したほうがいいかもしれない。

タイベックを開くと、内部に入っているのは以下のもの。黒いコードがクロスしているのが、裏返しになったテーブルだ。素材は軽量で硬いことで知られるチタンである。

その下に丸くまとめられているのは替えのコードで、針金状に見えるパーツがスレッダー。これらはコードが傷んだときに交換するため付属品なので、今回のテストには使わない。このスレッダーはあまりにも小さく細いパーツなので、グリーンのコードを付けて目立つようにされていたが、それでも僕は撮影中に紛失してしまい……。困ったことである。

テーブルの裏面のコードは、よく見ると短いパイプに通されている。これはカーボン製で、長さは63mm。テーブルの天板の角、4か所に配置されている。

このパイプを天板の穴に差し込むと、テーブルの脚になるのである。

こちらが脚を立てた状態だ。伸縮性があるコードで天板の中央方向に引っ張られているため、カーボン製のパイプの脚は斜めに傾き、摩擦で天板に引っかかる。だから、これだけでテーブルが立体化していく。

別の見方をすれば、コードによってテンションをかけられないと足は直立したままで天板には引っかからないことになる。じつにユニークなアイデアだ。

4本の脚を立てるとテーブルらしくなってくるが、脚はすべて内向きに傾いている。まるで足の数が少ないクモのようなルックスだ。

天板のサイズは140×240mm、厚みは5mm。B5用紙よりも一回り小さいというサイズ感だ。

コードは天板の裏の中央部分につけられたリングでクロスしている。

このリングをつけるために天板の表には孔ができるが、非常に小さく、使用時に気になるようなものではない。

脚を組み立ててからひっくり返すと、これはたしかにテーブルという形状に! しかし、斜俯瞰では脚が見えず、まるで宙に浮いているかのような形状だ。

脚となるカーボンのパイプの末端(上部)はアルミ製の丸いパーツに連結し、天板の4隅に位置している。この部分のでっぱりは、いちばん低くした状態で4mmほど。上にモノを置いたときに引っかかる恐れがあるので、注意しなければならない。

脚の部分を横から見ると、以下のような状態だ。わかりやすさのためにパイプの頭は1cmほど飛び出させているが、位置をもっと上下させてもテンションは十分にかかる。これはつまり、4隅にある1本1本の脚の長さを変えても、それぞれの脚はつねに天板と一体化されたままだということだ。

この部分こそがこのテーブルの最重要ポイント。平らな場所に置かなくても、地面の凹凸に合わせてそれぞれの足の長さを微調整することで、いつも「レベル(水平)」を保てるのである!

脚の長さの調整は簡単だ。わざわざ脚の長さを1本ずつ調整してから地面の上に置かなくても、上から指で押すだけで脚は下部に移動する。

天板にモノを置いたときは垂直方向に重さがかかるので、斜めの脚が天板に引っかかってずれないが、指では楽に斜めに押すことができ、簡単に位置を変えられるのである。

 

実際に凹凸のある場所に置いてみると

木の根や石で凸凹がある地面にテーブルを置き、天板がガタつかないように脚の長さを調整してみた。4本の足はそれぞれ異なる長さになったが、テーブルはすぐに安定した。

試しに天板の上に水準器を置いて水平が取れていることも確認。実際の山中ではこれほど正しく水平にする必要はないが、これほどきれいに水平が取れるとなんだか気持ちがいい。

先に述べたように、脚となるカーボンのパイプは長さ63mm。だが、使用時は脚が斜めになるので、メーカーによればテーブルの高さは最大で55mm。しかし、パイプの末端が天板の上に飛び出ることを計算に入れていないからか、僕の実測での最高の高さは48mmであった。そして、足を折りたたむと厚みは5mmになるため、高さの調整の範囲は5~48mm(メーカーの数値では5~55mm)ということになる。このように脚の長さを40mm以上も変えられれば、地面の凹凸を大幅に打ち消して、天板を水平に保つことができる。

左の写真は、最大の高さ(48mm)の状態。右の写真は試しに右側だけを下げてみた状態だ。これだけの角度で段差に対応できるのだから、大したものである。

これを実際に傾斜地に置いてみる。右側が高い位置に当たり、2本の脚がかなり上に飛び出しているのがわかるだろう。

水平が取れているので、上に乗せたペットボトルも安定している。

次に、より凹凸が激しい大きな岩の上で試してみる。

岩に触れる足の末端は、連動するコードが直接触れないように切込みが入れられているが、その形状のために岩の小さな出っ張りや窪みによく引っかかる。だから、見た感じは不安定そうにみえても、テーブルは思った以上にしっかりと岩の上で安定している。

上の写真の状態を真横から見ると、足の長さがそれぞれに違っているのがよくわかるだろう。

これならば、山中での休憩時に岩の上でも使える。バーナーを置いても安心だ。

ただし、天板の面積は140×240mmしかない。250サイズのガスカートリッジを置くと、ほぼ半分を占めてしまい、あとはクッカーひとつくらいのスペースしか残らない。

88gの超軽量タイプゆえに仕方がないが、調理にはもう少し大きいほうが使いやすい。

しかし、マグカップならば2人分でも余裕を持っておくことができる。

もちろんテーブルを2つ持っていって並べれば、スペースは倍になって使い勝手は向上するのだが……。じつはこの「レベル」、チタンを使っていることもあり、かなり高価(9,000円+税)。僕はこの製品に一目ぼれし、思い切って購入してから今回のテストに挑んでいたのだが、やはり買うのはひとつが精一杯なのであった。

長さが可変する4本の脚を持ちつつ、超軽量性を実現した「レベル」は、じつに革新的な製品だが、超軽量性のためには多少は我慢しなければならない点も出てくる。

例えば、カーボンの脚の末端(下部)。地面に触れるとパイプの内部に土が入り込んで取れにくくなり、汚れやコードの傷みの原因になる。また、脚は構造上、立体化すると斜めになり、天板へ過度に重いものを乗せるといくら強靭なカーボン製でも割れてしまう。メーカーの数値では耐荷重3kg程度で、テント内や休憩中の調理にはそれで十分だろうが、実際にどれくらいの重さまで耐えられるのか、スペアのパイプがあればテストしてみたかった。

一方で、超軽量でも天板自体は相当に強靭そうだ。両手で持って強くひねってみたが、思った以上に歪みが出ないのである。バックパック内に収納したときも破損の心配をしなくて済みそうである。

もっとも傷みやすいパーツであるコードはもともと替えが付いていることもあり、破損すると厄介なのはカーボンのパイプ程度。超軽量な装備には壊れやすいものも多いが、88gの重量でこれだけの強さがあれば十分だろう。構造の斬新さ、無駄のないシンプルさといい、本当によくできていると感心してしまった。

 

もう少し大きさがほしいが、「レベル」は山で使える超軽量テーブルだ

最後に少し無駄な話をーー。

僕がこの製品に強い関心を持ったのは、僕自身がテーブル好きであり、“山で使える”新機軸の軽量テーブルを開発しようすら考えたことがあるからだ。それは今回の「レベル」と同じように“すべての脚の長さを変えられる”ことができ、凹凸がある場所でも水平を保てる設計だったが、水平に保つ方法は別のアイデア。某メーカーとのコラボレーションの話は、残念ながら開発途中で流れてしまったが、このような「超軽量」「不整地で安定する」テーブルがあれば、きっと山中生活が便利で楽しくなると以前から思っていたのである。そんななか、このような製品が登場してくるとは、うれしい限りだ。

「レベル」はすばらしい製品で、少々高価でも買ったことに後悔はない。だが、個人的な希望をいえば、もう少し重くなってもいいから天板はもっと大きいものがほしい。

面積が2倍程度のA4サイズくらいで、150gにならないだろうか? それでいて、値段はあまり上がらないとうれしい。大きくすると強度の問題が出てきそうだが、サイズのバリエーションが豊富になるとありがたい。

 

今回紹介した山道具はこちら

 

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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