希少な花が咲き、奇岩が並び立つ修験の山 栃木県・庚申山

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古い修験道の山、栃木県足尾・庚申山。コウシンソウとコウシンコザクラが咲き、奇岩が並び立つ岩稜地帯を巡る山旅へ。

栃木県・日光国立公園内に位置し、古くからの庚申講登山が行われてきた修験道の山、庚申山。そこは、奇岩・怪石が並び立つ岩稜地帯であり、また日本固有種で絶滅危惧種に指定されているコウシンソウの貴重な自生地でもあります。

絶滅危惧種のコウシンソウ。ひっそりと岩壁の奥に花を咲かせる(写真=奥谷 晶)

コウシンソウは、明治23年(1921)に庚申山で発見された食虫植物です。名前も庚申山に由来します。花期は6月中旬から7月です。

モデルコース:銀山平~お山巡りコース~庚申山~銀山平

 

コースタイム:約9時間

岩壁に咲く希少な花

2017年6月24日、曇り時々晴れ。銀山平から出発し、一ノ鳥居までは林道歩きです。庚申七滝を巡る遊歩道を経由します。一ノ鳥居からは沢沿いにゆるやかに登り、鏡石、夫婦蛙石などの奇岩をめぐって進みます。

猿田彦神社跡のある庚申山荘への分岐で、まずはお山巡りへ。

お山巡りコースは細い岩尾根や奇岩が連続してスリルある修験の道だ(写真=奥谷 晶)

鬼のみみすりや大胎内などの名前のついた奇岩を巡り、庚申山山頂へ向かいます。樹林の中なので展望はありませんが、展望台まで足を延ばすと皇海山が一望できます。

静かな樹林の中の庚申山山頂(写真=奥谷 晶)

再びお山巡りのルートに戻り、梯子や崖沿いのきわどい道を慎重にたどり、庚申山荘へと戻ります。

庚申山荘。広々した大きな山小屋だ(写真=奥谷 晶)

コウシンソウは、ムシトリスミレをひとまわり小さくしたような薄紫色の花を咲かせますが、食虫植物であり、葉や茎にびっしりと細かい毛がついています。薄暗い垂直の崖や岩肌にひっそりと群生していて、注意しないと見逃します。

コウシンソウ(写真=奥谷 晶)

同時期に満開を迎えていたコウシンコザクラの群落も見事です。こちらはピンクが鮮やかで、黒い岩壁の中でもひときわ目立ちます。

岩壁にはコウシンコザクラが満開でいくつものブーケをつくっていた(写真=奥谷 晶)

庚申山荘付近ではクリンソウの群落がみられました。

庚申山荘付近に群生するクリンソウ(写真=奥谷 晶)

なお、庚申山荘から庚申山山頂へ向かうルートは、一般道も「御山巡り」コースも、崖沿いの岩場の登降や狭いやせ尾根を通過する難所が続きますが、クサリやハシゴが整備されていてそれほど危険ではありません。むしろ、クサリなどがない崖沿いの浮き石が混じった急斜面などで注意が必要です。そのような滑落危険箇所がいくつもあり、慎重な行動が要求されます。

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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