稜線に吹く風に秋の気配を感じる九州・九重連山。牧ノ戸から久住山を往復

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九重連山の盟主・久住山を牧ノ戸登山口から往復。下界はまだまだ暑い日が続きますが、山の上では秋の訪れを感じられます。

暦の上では秋ですが、今年もなかなか涼しくなる気配がありません。汗だくになる低山歩きはしばらく休みにして、標高が高く涼しい山に行ってみることにしました。

思いつくのは、九州の屋根と呼ばれる九重山です。九重山とは、久住山を中心に10数個の山が連なる火山群の総称で、九州で最も人気がある山域です。

久住山から見る星生山と硫黄山。硫黄山一帯からは噴気が上がり植物はなく荒涼とした景色が広がる

九重連山の登山口で最も標高が高い牧ノ戸峠の登山口を選び、展望の稜線歩きを楽しみたいと思います。

気温は標高100m上がるごとに0.6℃下がるので、1787mの久住山と街中との温度差はおよそ10℃も違うことになります。そろそろ秋の花も咲いているかもしれません。

モデルコース:牧ノ戸登山口~沓掛山~久住山(往復)

コースタイム:牧ノ戸登山口(30分)・・・沓掛山(50分)・・・扇ヶ鼻分岐(30分)・・・久住山避難小屋(20分)・・・久住山(15分)・・・久住山避難小屋(30分)・・・扇ヶ鼻分岐(40分)・・・沓掛山(15分)・・・牧ノ戸登山口 (約3時間50分)

※2020年9月4日現在、九重連山の登山道には2020年7月の豪雨の影響があります。登山前に現地最新情報をご確認ください。

⇒久住山周辺のコースタイム付き地図を見る

牧ノ戸レストハウスのソフトクリームの看板がとても気になりますが、下山後の楽しみにして、急な坂で息が上がるコンクリートの道を登ります。

牧ノ戸峠レストハウス。下山後のソフトクリームを楽しみに登山開始

あずま屋がある展望台に着いて一休み。三俣山や黒岩山が近くに見えます。

木の階段を登った沓掛山の肩からは、南の展望が広がり穂が開き始めたススキの向こうに釈迦涅槃像に例えられる阿蘇五岳の雄大な姿が見えて感動します。ここまで登ると風が涼やかで秋の始まりを感じます。

沓掛山から見る阿蘇山。中岳の噴煙も見えている

沓掛山は岩が積み重なったピークです。段差のある下りを慎重に下って平坦な道まで降りると、夏に咲いていたノリウツギの白い花が残っていました。アジサイの仲間なので花がよく似ています。足元に咲くママコナやワレモコウなどの花を楽しみながら、快適な稜線を久住山の方向へ一筋に伸びた道を歩いていきます。

扇ヶ鼻分岐から西千里浜付近にはワレモコウがたくさん咲いていました

腰掛けるのに丁度いい岩が何個も並んだ扇ヶ鼻分岐で休憩。ここは牧ノ戸、扇ヶ鼻、久住山への三差路に当たるので行き交う登山者でにぎやかです。

沓掛山から歩いてきた道を振り返ると、たくさんの登山者が登ってくる姿が見えます。

頑張ってここまで来たんだと思える場所ですが、行程の中間点を少し過ぎたばかりエネルギーを補給したらまた歩き始めます。

岩がゴロゴロとした久住山への登り。後ろは星生崎の岩峰と久住山避難小屋

すぐに星生山と肥前ヶ城に囲まれた西千里浜になります。岩混じりで硬い感触だった道が、砂の上を歩いているような柔らかな感触に変わる不思議な場所です。両脇には鮮やかなピンクのシモツケやイヨフウロが風に揺れていました。

イヨフウロ(左)登山道脇のいたるところで見られるアキノキリンソウ(右)

西千里浜を半分ほどすぎると、ススキの向こうに久住山が姿を表しました。左には久住山を守る衛兵のように巨石が積み重なった星生崎が印象的です。

星生崎の基部からガレ場を下ると久住山避難小屋です。久住山のピラミダルな姿が更に大きく迫ってきます。

星生崎の基部付近まで来ると、端正な形の久住山を見る

久住分れから岩ゴロゴロの急斜面を登りきって、久住山山頂に着きました。展望抜群で、九重の山々を従えてそびえる盟主の風格です。南には広い高原の奥に祖母山や阿蘇山が並び、北に由布岳、西に雲仙岳の大展望と涼しい風を堪能することができました。

人気の久住山はたくさんの登山者で賑わっている

下山は往路を牧ノ戸峠まで戻り、爽やかな酸味のブルーベリーソフトを食べた後、ゆっくり温泉で疲れを取り帰路につきました。

 

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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