ゆとりある日程を前提とした、体力・技術に見合った計画を 島崎三歩の「山岳通信」第202号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2020年10月9日に配信された第202号では、紅葉で賑わった9月下旬~10月初旬に滑落や転倒の事故が多発したことを指摘し、改めて体力・技術にあった登山計画を促している。

 

10月9日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第202号では、期間中に起きた16件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月29日、北相木村の御座山で、家族2人で入山した50歳の女性と7歳の男性が、御座山山頂から下山中に道に迷い、行動ができなくなる山岳遭難が発生。2人は北相木村消防団員により救助された。

  • 9月29日、北アルプス前穂高岳で、単独で入山した70歳の男性が、前穂高岳から重太郎新道を下山中、バランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリにより救助された。

  • 9月29日、八ヶ岳連峰の赤岳で、単独で入山した65歳の男性が、美濃戸北沢登山道を下山中に疲労により行動できなくなる山岳遭難が発生。男性は茅野警察署山岳遭難救助隊員、山岳高原パトロール隊員により救助された。

  • 9月30日、中央アルプスの千畳敷で、4人パーティで入山した67歳の女性が、木曽駒ヶ岳へ向けて登山中に八丁坂付近で転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員により救助された。

  • 9月30日、中央アルプス烏帽子岳で、5人パーティで入山した69歳の女性が、烏帽子岳への登山中に発病して倒れる山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助されて病院に搬送されたものの死亡が確認された。

  • 10月2日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、仲間と3人で入山した55歳の男性が、赤岩尾根を登山中にスリップして滑落し、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

北アルプス鹿島槍ヶ岳・赤岩尾根の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月7日付

  • 10月2日、北アルプス唐松岳で、単独で入山した37歳の男性が、唐松岳から不帰嶮を縦走中にバランスを崩して滑落・負傷、行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

北アルプス不帰嶮の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月7日付

  • 10月2日、中央アルプス中岳で、仲間と2人で入山した55歳の男性が、木曽駒ヶ岳から下山中に体調不調となり、行動ができなくなる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

中央アルプス中岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月7日付

  • 10月3日、北アルプス涸沢で、仲間と2人で入山した67歳の男性が、涸沢からパノラマコースを下山中に足を滑らせて滑落・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 10月3日、北アルプス間ノ岳で、仲間と2人で入山した52歳の男性が、西穂高岳から奥穂高岳に向けて縦走中に、つまづいて転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 10月3日、北アルプス涸沢で、5人パーティで入山した73歳の女性が、涸沢から横尾に下山中に足を滑らせて滑落・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊員及び県山岳遭難防止対策協会秋山特別パトロール隊により救助された。

  • 10月3日、八ヶ岳連峰の高見石で、3人パーティで入山した61歳の女性が、高見石展望台から下山中に足を滑らせて転倒して負傷する山岳遭難が発生。女性は茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員により救助された。

  • 10月3日、北アルプスの常念岳で、仲間と2人で入山した58歳の女性が、常念岳山頂から下山中につまずいて転倒、負傷する山岳遭難が発生。女性は県警ヘリで救助された。

  • 10月3日、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、仲間と2人で入山した38歳の男性が、赤岩尾根を下山中にスリップして転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は大町警察署山岳救助隊員により救助された。

  • 10月3日、木曽郡大桑村の糸瀬山で、単独で入山した53歳の男性が、技量不足により行動をできなくなる山岳遭難が発生。男性は翌4日に木曽警察署員及び県警山岳遭難救助隊員により救助された。

  • 10月4日、戸隠連峰の戸隠山で、単独で入山した63歳の男性が、八方睨頂上付近を登山中、バランスを崩して転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月5週は16件の山岳遭難の発生があり、その態様の多くが、滑落と転倒になっています。

滑落や転倒の多くは、いわゆる危険箇所ではなく、一般登山道上で発生しています。浮石によるバランス崩し、砂利でのスリップ、岩や木の根でのつまずきなどが直接的な要因となっていますので、下山するまで気を抜くことなく、慎重な行動をすることが大切です。せっかくの登山もケガをしてしまえば台無しになってしまいます。慎重な行動は、ゆとりある日程が前提となります。自身の体力や技術に見合った計画を立てましょう。

なお、県内では熊の目撃や負傷事案が発生しています。行動中は鈴やラジオなどを携行し、テント場では、食料やゴミなどを外に放置することのないようにしましょう。

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「長野県内入山注意報」と、「登山者への5つのお願い」を発表しています。登山者の皆さんは、十分にレベルを落とした山域を選び、感染防止対策にご協力をお願いします。

 

長野県内入山注意報発表中

長野県では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため「入山注意報」を発表しています。 6月以降、これまでの登山シーズンとの大きな違いは――

  • ①山岳における救助活動は、必要に応じて感染防止対策を講じた上で出動するため、通常より救助に向かう時間を要する。
  • ②多くの山小屋が例年より営業開始時期を遅らせているため、相談・休憩・避難・環境維持としての機能が低下する。

となっています。

また、以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

「登山者への5つのお願い」は以下の動画もご参照下さい。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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