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晩秋の蒜山で、新素材を上手に使ったノローナのアクティブインサレーション「フォルケティン オクタ ジャケット」を試す

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2020年12月31日

 

今月のPICK UP

ノローナ/フォルケティン オクタ ジャケット

価格:26,000円(税別)
サイズ:S、M、L、XL、XXL
カラー:4色

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ここ数年、寒い時期に適する“行動着”が飛躍的に進化を遂げている。そのひとつがいわゆる“アクティブインサレーション”。内部に最新の保温素材を使い、体を動かしていないときは充分な保温力を発揮しつつ、体を動かして体温が上がっているときには無用な熱気と湿気を逃してくれる。要するに、休憩中でも歩行中でもつねに程よい保温力を発揮し、山中にいる間、ずっと着続けられるウェアである。

今回ピックアップしたノローナ「フォルケティン オクタ ジャケット」も、その一種だ。ボリュームがある保温素材を使っているわけではなく、すっきりとした見た目はウインドシェル風。しかし内側には注目の保温素材が用いられており、重量264gと軽量な着やすい一着に仕上がっている。

テストの場は、山陰の名山として知られる蒜山。少しずつ離れて上蒜山、中蒜山、下蒜山と3つの主要な山頂が並び、最高峰は1202mの上蒜山だ。

今回は塩釜の冷泉がある南側の登山口から中蒜山を経て、上蒜山へ往復するルートを取った。

 

登山前に細部を確認。新素材「オクタ」とストレッチ素材の組み合わせをチェック

歩き始める前に、まずは簡単にジャケットのチェックを行なう。

身長177cmの僕にはサイズMがちょうど。ノローナは大柄な人が多い北欧のブランドで、日本人が着ると腕や裾の丈が無用に余ってしまうことがあるが、違和感はない。

表面のメイン素材は、風を通しにくいパーテックス(薄いブルーの部分)。これがフロント、バック、袖の上側に使われている。

それに対し、サイドと腕の下側、袖口は“Warm 1 Stretch”(濃いブルーの部分)。名称通り、温かさとストレッチ性を兼ね備えた素材である。

下の写真の右側がパーテックスで、左側がWarm 1 Stretch。

パーテックスのほうは表面がつるっとした質感で、Warm 1 Stretchのほうはとても柔らかだ。そして、どちらも非常に薄手である。

そのまま裏返すと、以下のようになる。つまり、右側はパーテックスを使っている部分の裏面で、左側はWarm 1 Stretchの裏面だ。

このとき注意してほしいのは、右側のほうはパーテックスの裏面に別の生地を合わせた2枚仕立てであるのに対し、左側のほうはWarm 1 Stretch 一枚の裏表であるということである。

このパーテックスの裏面に合わせているグレーの素材が“Octa(オクタ)”。我が国の繊維会社大手、帝人が開発した最新素材で、この“オクタを使っている”ことこそが、フォルケティン オクタ ジャケットの最大の特徴である。

オクタは、放射状に8本の突起を持つ繊維で、驚くほど軽量。中空で細かく毛羽だった繊維は、繊維量に対してたくさんの暖気をキープすることができるため、“軽量でも温かい”素材になっている。ちなみにオクタという名称は、ギリシャ語の“8”に由来し、英語で8角形を表すオクタゴンも同様だ。

そんなオクタを編み込んだ生地のもうひとつの特徴は、通気性のよさ。光で透かして見ると生地の薄さがわかり、それによって余分な熱気と湿気の排出が促されるのが理解できる。

吸汗性と速乾性もすばらしく、かいた汗をすばやく吸収し、発散させていく効果も高い。

先に述べたように、オクタが使われているのはウェアの内部。パーテックスの裏側だ。

ウェアのファスナーを広げてみると、胸から腹部にかけての正面と、背中全体がオクタで覆われていることがわかる。

似たようなカットが続くが、こちらはウェアを腕まで完全にひっくり返した様子だ。

Warm 1 Stretchを使っている部分の裏側以外は、ほとんどがオクタ。こんな構造でわかるように、オクタの力を最大に発揮させることが、このジャケットのコンセプトといってもよい。

 

中蒜山への登り。性能を試すために、着用したまま進む

簡単なチェックを終えると、いくぶん不安定な天気のなか、僕は登山口を出発した。

まだ雪は積もっていないが、晩秋の山は紅葉も終わりかけ、少々寂しげだ。

麓の気温は10℃ほど。今回は薄手のウール製長袖ベースレイヤーの上にフォルケティン オクタ ジャケットを着用していたが、歩き始める前の“行動していないとき”は、これでちょうどよかった。

その後、登山道は次第に傾斜を増していき、自然と体の動きも激しくなっていく。

こうなると晩秋でも体感温度は急上昇し、かなり汗ばんでくる。しかし僕は“テスト”のために暑くてもジャケットは脱がず、着用したまま歩き続けた。

稜線まで登ると、下蒜山を遠望できるポイントを見つけた。その堂々とした姿は魅力たっぷりで、見惚れてしまう。だが今回は予定通り、最高地点の上蒜山を優先しよう。

稜線では気温が下がり、なにより風が強くなった。登山道の傾斜も緩くなったので体力をあまり使わず、体の発汗が急速に止まりつつあるのがわかる。

そのまま歩き続け、まずは第一目標としていた中蒜山の山頂へ。

ここでいったんフォルケティン オクタ ジャケットを脱ぎ、ウェアの裏表の様子を確認してみた。

こちらは襟元だ。写真ではわかりにくいが、オクタが汗を吸い、表面が少し濡れている。だが、ここまでにかいた汗の量を考えれば、その濡れはごくわずか。吸い取った汗の大部分はすでに発散/蒸発しているようだ。さすがである。

しかし、襟の裏側の一部に使われているパーテックスの部分は汗を吸い込み、濡れたままになっている。じつは歩行中、その部分が肌に張り付く感じがあり、少々気になっていた。やはり吸汗速乾性はパーテックスよりもオクタのほうが格段に上である。

こちらは背中側の表地だ。

バックパックと強く擦れ合う場所では、オクタが吸い取った汗が発散される前にパーテックスに移り、わずかながら濡れを確認できる。

しかし、パーテックスはこれらのような状態にならない限り、強い撥水性を発揮する。試しに水をかけると表面で玉のような水滴になり、大半の水は流れ去る。

急速に水を吸い取っていくWarm 1 Stretchの部分とは対照的だ。

 

最高峰・上蒜山への稜線歩き。汗冷えは抑えられるのか

再びジャケットを着用した僕は、次に上蒜山へと向かった。

僕が着ているベースレイヤーとジャケットが吸収した汗は乾燥しきっておらず、涼しい風が吹く稜線では汗冷えが心配された。だが、耐風性が高いパーテックスによって体の前後と腕は守られ、想像以上に心地よい。とはいえ、中蒜山と上蒜山の間の鞍部からは、またしても急激な登りで、再び発汗が増していく。

そんなとき、風を真横から受けると、通気性が高いWarm 1 Stretchのおかげで無用な熱気が逃げていくのがよくわかる。

しかも両サイドのファスナーを開けると、ポケットがベンチレーターの役割を果たし、風がダイレクトにウェア内部に流れこむ。そのためにオクタが吸収した汗はますます蒸発していく。

このポケットの位置は、左右の腰元だ。アウトドアウェアに限らず、ごく一般的な位置ではあるが、この場所はバックパックのハーネス類と干渉してしまう。下の写真を見ると、ウエストハーネスがポケットをつぶしているのがわかるだろう。

とくにウエストハーネスの位置が高い小型パックを背負うと、ポケットが使いにくくなるのは避けられない。この問題を避けるためにポケットを胸元につけているウェアも多いが、ポケット自体の使い勝手は下がってしまう。ポケットの位置は腰がいいのか、胸がいいのが……。最終的には着用する人の好みとも言えよう。

ところで、感心したディテールが、袖のサムホールだ。親指をかければ簡易的なグローブのように手の甲を保温でき、上にアウターを重ねるときのズリ上がりも避けられる工夫だが、こういう仕様のウェア自体はそれほど珍しくない。しかしこのジャケットのサムホールのデザインは一味違う。じつは、サム“ホール(穴)”とは書いたものの、ホール状にはなっておらず、正確にはスリットのような構造なのだ。

だから、親指を通さないと隙間は完全になくなり、風を通さない。そのために他のサムホール付きのウェアよりも袖口の保温性が上がる。シンプルながらよく考えられた袖口だ。

無事に上蒜山の山頂へ到着。山頂周辺は木々が生い茂り、残念ながら眺望はよくない。

その代わり、山頂の北側の三角点がある場所でたっぷりと休憩し、静かな山を堪能した。

休憩後、僕は再び中蒜山へ向かい、最終的なチェックを行なった。

僕はもともと発汗量が多く、寒い時期は行動を停止した際にいつも汗冷えを感じていた。だが、吸汗速乾性に優れるオクタを使ったこのジャケットは、オクタの保温性に加えてパーテックスが冷気を遮ってくれる。そのために強風下でも急激な体温低下を避けられることは確かなようだ。

同時に、通気性がよい両サイドからは風が通るので、行動中は体の過度な熱は逃げていくこともわかる。まさにアクティブインサレーションらしいバランスだ。

Warm 1 Stretchのストレッチ性もすばらしく、体の動きをほとんど妨げない。

むしろ、ここまでストレッチしなくても……と思うほどである。内側に少々厚手のウェアを着込んでもストレスを感じないだろう。

個人的には肩の真上から縫い糸をずらしてある点も気に入った。

この手の薄い表地の縫製には細い糸が使われることが多く、その結果、バックパックのハーネスと擦れて切れてしまうことも珍しくない。しかし肩の上にステッチがなければ、重い荷物を背負っても安心だ。

今回はフォルケティン オクタ ジャケットを“アウター”として着用した。だが、このウェアはインサレーションの一種。だから、他のアウターの下に合わせ、ミッドレイヤーとして活用するのもよい。

冬ならば防水性が高いハードシェルを併用すれば湿った雪や雨にも対応できる。また、フォルケティン オクタ ジャケットだけではサイドから冷気が吹き込んで厳冬期は防寒性が足りなくなるが、この点も補うことができ、ますます用途が広がるはずだ。

 

まとめ:「フォルケティン オクタ ジャケット」は、多様なシチュエーションで使える一枚だ

最後に稜線から蒜山高原を眺め下した。

もうすぐこのあたりも雪で覆われていくに違いない。今年の冬は、雪が多いのだろうか? このジャケットを雪があるシチュエーションでも使ってみたいと思いながら、僕は下山していった……。

僕のフォルケティン オクタ ジャケットの印象は、「多様なシチュエーションで使える」というものだ。行動しているときに暑くなく、行動していないときに寒くないから、山の麓から稜線まで、歩行中から休憩中まで、ずっと着ていられる。アウターとしては、夏の高山から春や秋の低山で活躍し、ミッドレイヤーとして別のアウターと重ね着すれば、真冬でも活用できるだろう。ウェア自体の対応温度が幅広いだけではなく、レイヤードの仕方によってさらに着用できるシチュエーションが広がるのである。

シンプルなデザインだが、高機能で汎用性が高い。一枚持っていると1年中、重宝しそうだ。

 

今回登った山
蒜山
鳥取県/岡山県
標高1,202m

関連する登山記録はこちら
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防寒具
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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