青空の下、雪の天狗岳に登った後は唐沢鉱泉でジビエ料理に舌鼓

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第12回は冬の八ヶ岳に登り、下山後は唐沢鉱泉でぬくぬくと過ごす旅へ。

写真・文=月山もも

通年営業の山小屋が点在し、冬でも登山口までバスの運行がある八ヶ岳。どの季節に登っても楽しめる大好きな山域ですが、まとまった雪が降った後は特に、足が向いてしまいます。
1月上旬、年末年始を山で過ごした人たちが下山して、静かになった八ヶ岳に登ることにしました。茅野駅から渋の湯登山口までバスに乗り、まずは高見石小屋を目指します。

高見石小屋に向かう途中の「賽の河原」と呼ばれる道は、夏の間は大きな岩がゴロゴロしていて歩きにくいのですが、雪がつくと少し楽に歩くことができます。風は冷たいですが、新雪を踏みしめて青空に向かって歩いていくのは気持ちがよかったです。  

高見石小屋に宿泊し、翌朝は朝焼けに染まる白駒池と日の出を眺めてから出発しました。
目指すのは、南八ヶ岳と北八ヶ岳の境界とも言われる、双耳峰の「天狗岳」。高見石小屋から中山峠に向かう途中に眺める天狗岳の姿が美しいので、最近はこのルートがお気に入りです。  

山頂に到達する頃には少し雲が出てきましたが、風も強くなく、いいコンディションで雪の天狗岳を楽しむことができました。

山頂から中山峠を経て、黒百合ヒュッテで昼食休憩を取った後、本日のお宿、唐沢鉱泉へ向かいます。
到着すると、女将さんに「今日はどちらから来られたの?高見石から!今朝はとても寒かったでしょう?お疲れさまでした」とねぎらいの言葉をかけられながら、部屋に案内していただきました。  

お部屋は石油ストーブがついていて暖かく、さらにこたつがあるのがうれしいですね。
登山口に建つ宿ですが、山小屋ではないのでドアには鍵もかかりますし、各部屋にテレビも設置してあります。

お茶を煎れて、こたつでしばらく休んだ後は、お風呂へ。
唐沢鉱泉の浴室は男女別の広い内湯です。床や浴槽は板張りですが、苔むした岩や植物があちこちにあって、森の中にいるような独特の雰囲気があります。  

泉温10度ほどの「単純二酸化炭素冷鉱泉」で、入浴に適した温度に加温のうえ供給されていますが、隅のほうにある打たせ湯では、冷たい源泉を浴びることもできます。
浴槽は大小2つあり、大きいほうは42度ぐらい、小さいほうは38度ぐらいのぬるめの温度に調節されていました。二酸化炭素が溶け込んでいる源泉は「炭酸泉」とも呼ばれ、ぬるいほうの浴槽は特に、浸かると肌に細かい泡が付くのが楽しいです。  

ぬる湯とあつ湯の交互浴を楽しんでいると、あっという間に時間が経ってしまいました。

お風呂の後は、お待ちかねの夕食です!

1階の食堂でいただきますが、1人で泊まるとテレビが見やすい端のほうの席にしていただけるのがありがたいですね。

食前酒の杏酒は、甘さ控えめでおかわりしたくなるおいしさです。

注文したのは岡谷市の酒蔵の「神渡(みわたり)」なるすっきり辛口の地酒。こちらを飲みつつ、チェックインの際にあらかじめ注文していた、別注のジビエ料理「鹿のたたき」をいただきます。

行者ニンニクを漬けた自家製のお醤油でいただくのですが、脂肪分の少ないさっぱりとした鹿肉と、コクのある醤油がよく合います。鹿のたたきは、実は二人前からの注文なので一人で食べられるか不安でしたが、しっかり平らげてしまいました。
別注料理はこの他に「猪鍋(ししなべ)」もありますが、さすがに1人では食べきれない量です。いつか仲間と来て食べてみたいですね。

その他の料理も大変おいしかったです。肉料理の合鴨スモークは柔らかく、付け合わせの野菜もたっぷり。  

イワナの甘露煮は頭までいただけます。これも日本酒に大変よく合いました。  

〆のご飯と漬物、野菜たっぷりの汁物で体が温まり、デザートはルバーブのジャムが載った杏仁豆腐。最後まで山の宿らしいメニューで、大変おいしくいただきました。

お腹いっぱいで朝までぐっすり眠り、朝風呂に入った後は昨夜と同じ食堂で朝食をいただきます。

焼き魚や納豆、山菜の小鉢などご飯がすすむおかずが並びました。食後はサービスのコーヒーをいただき、茅野駅へ送っていただく時間までのんびりと過ごします。

唐沢鉱泉は例年、1月上旬からGW直前まで冬期休業に入るため、雪山登山の後に唐沢鉱泉に泊まれるのは短い期間だけなのです。この冬の最終営業日は1月10日とのことですので、それまでに雪の八ヶ岳に行かれる方はぜひ、唐沢鉱泉に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 

*紹介した食事は2019年6月上旬取材時の内容です。
*2020-2021年冬季は新型コロナウイルス感染症対策のため、こたつはありません。

唐沢鉱泉

料金:1泊2食付き/1室1名15000円~、2名13350円~
住所:〒391-0213 長野県茅野市豊平4733-1
電話:0266-76-2525
HP:http://www.karasawakousen.com/

 

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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