神奈川県・高麗山でお花見と相模湾の展望を満喫する春ののんびりハイキング

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

古くは渡来人の航海上の目印になったという高麗山。桜の名所でもあり、春にはハイカーだけでなく花見客で賑わいます。大磯駅を起点に、のんびりお花見ハイクを楽しんではいかがでしょう。

湘南平より樹林が伐採された眼下に平塚から大磯の街並が広がり、平塚漁港、江の島が遠望できる

 

東海道線で平塚駅を過ぎると、車窓に近づいてくる緑の濃い山が高麗山です。全山臨海性常緑樹に覆われた山です。

往時、相模湾から大磯の海岸に上陸する渡来人の目標の山となったと言われています。山麓の高来神社は、古くは高麗神社と呼ばれ、明治の神仏分離で高来神社と改称されました。

神社裏より登り、高麗山から西に、八俵山、浅間山、千畳敷とハイキングコースが続きます。千畳敷は湘南平の地名が一般的です。湘南平に建つテレビ塔から高麗山の稜線の彼方、相模湾に浮かぶ江ノ島や三浦半島が遠望でき、またレストラン上の展望台からは伊豆半島、大島、箱根、富士山が望まれます。

また、桜の名所で春は花見客で賑わいます。大磯宿を抜け、高来神社を参拝、桜が点在する常緑樹の巨木鑑賞。ゴールは桜と相模湾の展望台に立つ早春のハイクにお薦めです。

安藤広重の東海道五十三次「平塚の宿」で描かれた高麗山。麓を流れる花水川周辺は桜の名所

 

モデルコース:大磯駅~高来神社~高麗山~湘南平~大磯駅

コースタイム:約2時間10分

⇒高麗山周辺の登山地図を見る

今回は東海道線大磯駅を下車して、高来神社からのコースを紹介します。駅左から線路沿に進み、前方のガードをくぐり、住宅街を歩きます。

江戸期大磯宿の一角、化粧坂の松林地点を通過しますが、安藤広重の東海道五十三次、「大磯の宿」の面影はありません。国道1号線と合流し高来神社信号に神社の入口が見えます。新年や祭礼には参道に行灯が立ち、参拝者で賑わいます。個人的には願掛けの神社でお礼参り山行も兼ねています。

参道を抜けると正面に高来神社。背後に高麗山が聳え、神社裏に男坂と女坂の登山路がある

登山路は神社裏手に男坂と女坂に分かれ、常緑樹の巨木が点在する男坂を急登後、狭い展望台に出ると、海岸沿いの山と実感する相模湾が光り、東海道線を走る列車の音が聞えます。石段を登れば高麗山の山頂。「大堂」と言って、以前は上宮があった場所ですが、展望はありません。下って、北条時代の空堀のなごりといわれている堀割り上の橋を渡ります。戦国時代の山城の引橋を思わせました。時折、谷から沸く風が心地よく八俵山へ。

雑木林を伐採して杉を植林し、低廉な外材が輸入されて以後、放置された山が多い現状ですが、このルートは山域の特徴である緑濃い常緑樹が茂り、落ち着いた稜線歩きが出来ます。時折、空身で散策する地元の人とすれ違いました。

早春に水仙が植えられた登山道を登ると、ベンチが随所に置かれた散策路となり、浅間山へ延びています。1等三角点が置かれ、大きな桜の木の下に小さな鳥居と祠がある神社といった雰囲気で一息つきました。早く、広い相模湾を見たいところですが、展望はありません。

高麗山からのハイキングコースは常緑樹林帯が続き、一等三角点がある浅間神社に着く。鳥居と祠が建つが展望はない

急な下りから登り返すと、頭上にテレビ塔が望まれます。早やる気持ちを抑えて急な階段を登り詰め湘南平へ。この台地へ出た開放感がこのルートの贈り物でしょう。テレビ塔、レストランのある展望台から360度の絶景を堪能しましょう。但し、食事をとる時、上空からにお弁当を虎視眈々と狙っているトンビの急降下に要注意です。

テレビ塔と展望塔が建つ湘南平の台地で桜の名所。相模湾側の樹林が伐採されて展望が開けた

テレビ塔に登ると、丹沢山系が霞み、相模湾に浮かぶ江の島、三浦半島が広がる。眼下に高麗山からの早春の稜線が延びる

下山は、駐車場へ降りて、右下のつづら折りを下っていくと閑静な住宅街に出ます。道標に従って進み、東海道線の地下道を抜けて線路沿を行くと大磯駅に戻ります。

 

プロフィール

白井源三

神奈川県相模原市生まれ。1989年ヒンドゥークシュ登山隊に参加、ゴッラゾム5100mに登頂。2005~2007年に南米取材。アコンカグアBCとインカ道をトレッキング。著書に『戸隠逍遙』(クレオ刊)、『北丹沢讃歌』(耕出版刊)、『冬の近郊低山案内』(山と溪谷社・共著)、『分県登山ガイド 神奈川県の山』(山と溪谷社・共著)など。丹沢の写真展を多数開催。

今がいい山、棚からひとつかみ

山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。

編集部おすすめ記事