作戦会議と準備で登山に向けて子どものワクワク時間をつくろう!
はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。
親子登山は登る前から子どもと一緒に始めよう
保護者「今度の土曜日お山に行くよ!」
子ども「え〜・・・」
保護者「そんなこと言わないで行こうよ〜」
そんな会話は親子登山を楽しみたい大人とあまり乗り気ではない子どもの間ではもう定番のコミュニケーション手順です。かくいう僕も、そんな経験は数えきれません…。
子どものネガティブな状況を打破して一緒に楽しい山登りをするためには、子どもの心の準備が大切です。そのためには、子どもにとってこの山登りを「楽しみな自分事」になってもらうことが必要な手順になります。そこでおすすめなのが「作戦会議と準備」になります。
作戦会議と準備が楽しいと、当日の登山も楽しい!
とあるこども園で、先生方から子ども達と一緒に高尾山登山に挑戦したいという話しをいただきました。そうはいっても「行きたい!」と前のめりな子どもだけではありません。そこで、登山本番数ヶ月前から子ども達と作戦会議と準備の時間を持つことにしました。そうすることで、子ども達それぞれに高尾山に登る目的や楽しみができて、無事に楽しい高尾山登山をすることができました。
これは、保育用語で「プロジェクト型保育」といって、ざっくりいうと何かひとつのプロジェクトにむけて、子ども達ひとりひとりが目的を持って進めていく手法です。
もちろん僕自身もこの手法を実践することで、子どもとの登山がどんどん楽しいものになりました。特に実践しやすい方法を3つ紹介しますので参考にしてみてください。
1:地図上で行く山やルートを一緒に決める
子どもは入ってくる情報から想像を膨らませたり、プランニングをすることが大好きです。見た目が宝の地図の様な地形図を広げて、子どもと一緒に山のプランをつくってみましょう。「どんな山か?」「どんな景色が頂上から見えるか?」「どんなルートで登るか?」などを子どもと一緒に決めていくことで、山登りが子どもの自分事になていきます。
この作戦会議に有効な山の選び方は、子どもでも充分登れる山である事は前提として「頂上までのルートがいくつかある」ことと「ルートそれぞれに特徴がある」ことがポイントになります。はじめての山で楽しみやすいのは、関東では高尾山、関西では六甲山系あたりです。すでに山登りの経験がある子どもの場合は登る山自体を一緒に決めて行くのもいいと思います。
作戦会議をするためのポイントは次の5つです。
- 地図上のルートはどんなコースかを子どもが想像しやすいように説明する
時には写真や手描きのイラストを交えながら説明をする - 休憩、お買い物、トイレ、絶景などのポイントに印をつけていく
地図に印をつけることで情報を見える化していきます - 登りと下りのコースを決める
行きと帰りで楽しむ内容を変えることで最後まで楽しい1日にします - 登る山の歴史や昔話も伝える
バックグラウンドをしることで、楽しさが増していきます - 子どもが興味を持つ視点を入れる
子どもそれぞれが持つ“好き”を具現化しやすい環境設定をします
2:持ち物を考える
どんな山をどのように登るのかが決まったら、持ち物を一緒に決めていきましょう。持ち物を決めると、このプロジェクトがよりいっそう具体的になるので、ワクワク感が高まること間違いありません!
持ち物を決める際は、大人がかならず装備するべきものだけではなく、子どもが持っていきたい、持っていくべき持ち物を考えていくことです。地図を見ながらの作戦会議で野鳥がでてくれば双眼鏡や野鳥図鑑を持ち物に入れたり、綺麗な川がある事がわかれば着替えを用意したり、必要なものを一緒にリストに入れていきます。その後、どれだけ時間がかかっても子どもと一緒に準備、パッキングをしていきましょう。
この作業のポイントは、「子どもにとって想像がしきれない山の楽しさを、持ち物を通して具体的にする」ことと、「自分で準備をすることで山がさらに自分事になる」ことにあります。ですので、持ち物リストに出てきたものを一緒に買いに行ったり、子どもが楽しめる準備はなるべく一緒にやっていきましょう。
3:お弁当の中身を決める
新型コロナウィルスの影響で最近はこのお楽しみはだいぶお預けになっていますが、子どもにとって運動会や遠足などと必ずセットになっているお弁当は、何にも代えがたい楽しみであることは間違いありません。ですので、登山の日にどんなお弁当が待っているかを想像するだけで、子どもは(大人の僕もですが…)もう心が躍る時間なのです。
どんなおかずがいいか?どんな彩りがいいか?もしかしたら、お弁当の設計図をいっしょに描いてもいいかもしれません。できれば、これに加えて家でお留守番する大人がいればシークレットでお手紙などを添えて当日持たせてあげると喜びは倍増すると思います。
今回は主に3つの方法を紹介させていただきましたが、この目的が分かればみなさんにとってピッタリな作戦会議の内容が出てくると思います。
準備を一緒にしていく“作戦会議”をすることは、子どもが登山を楽しみにしてくれるだけではなく、実は大人と子どものコミュニケーションも増えるというとても大切な要素もあります。日々忙しいと面倒くさくなりがちですが、是非この大切な時間をじっくり楽しんでみてください。
「夏休みは子どもと山に行こう!」オンライン講習会のアーカイブを公開中!
プロフィール
長谷部雅一
アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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はじめての親子登山のヒント
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