親子登山に持っていくべきファーストエイドセットの中身。“もしも”のときに備えよう

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はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。

ファーストエイドは未然に防ぎきれなかった“もしも”のためのアイテム

ファーストエイドは、最低限装備をしているべき備品です。ただし、最初に理解しておかないとならないのは、もしもは未然に防ぐのが第一です。大人は自分が怪我や病気にならないように、知識や技術、そして体力強化をするのはもちろん、一緒に行く子どもが安全に登山をできるコース選び、そして登山中の子どもの体調管理、声かけなどで未然に防ぎましょう。

そうはいっても起きてしまうのが病気や怪我…。未然に防ぎきれなかった“もしも”に迅速に対応するためのアイテムがファーストエイドというわけです。今回は、子どもとの登山で起きやすい怪我などを想定して、できるだけ誰でも使いこなしやすいものを選んで紹介します。登山ガイドの方など、アウトドアを生業にしている人用ではありませんのでご注意ください。

 

持っていくべき最低限のファーストエイド

 

ファーストエイドケース

ファーストエイドを入れる入れ物は「中身が濡れない」「空けたらアイテムを出し入れしやすい」「必要なモノが全て入る」ことを満たしていればまずはOKです。ただし、一番大切なのは誰が見てもファーストエイドだとわかることです。

ファーストエイドは、もしもの時に必ず自分がバックパックから取り出すわけではありません。状況によっては子どもや道行く他人に取り出してもらう可能性もあります。その辺も考慮してケース選びをしましょう。

 

絆創膏

子どもにとって魔法のシートです。さっきまで泣いていた子供が絆創膏を貼った瞬間に元気になるといった経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか?大人が子どもに貼ってあげるという行動をセットにすることでこの効果は絶大です。

もちろん、擦り傷や切り傷を洗浄した患部に菌が入らないようにする、簡単な止血代わりにも有効です。様々なタイプやサイズを準備しておきましょう。

 

滅菌ガーゼ・フィルム

擦り傷や切り傷の面積が大きい場合は患部の洗浄後ガーゼを当てて防水のフィルムを貼って処置をします。様々なサイズのガーゼを用意する他、フィルムは重ねて貼ることで大概の面積に対応します。

 

伸縮包帯

ガーゼを当てて伸縮包帯を巻く圧迫止血などに使用する伸縮包。巻き方によっては部位を問わず巻くことが可能なので、装備の他に練習もしておきましょう。

 

靴擦れ・マメ対処パッチ

怪我としては軽傷だけど、この痛みは大人でも歩行スピードを大幅に遅くしてしまう悪魔の靴擦れとマメ。治すことはできませんが、痛みを少しでも和らげるためには有効なアイテムです。

 

飲み薬・塗り薬

持病の薬はもちろんのこと、大人用、子ども用ともに自分に合った薬を準備しましょう。まずは「痛み止め」「総合風邪薬」などの飲み薬の他、「化膿止め」「かゆみ止め」などの塗り薬を忘れずに。

かゆみ止めに大切なのは「ダニ」「ノミ」「ケムシ」「ムカデ」などにも効くタイプがおすすめです。薬ではありませんが、痒みや痛みは子どもにとって緊急事態です。もちろん、未然に防ぐための虫除けも忘れずに。

 

綿棒・毛抜き

患部に薬を塗ったり、耳の中の掃除などに綿棒、そしてよくある怪我なのに子どもにとっては“最大の危機”であるトゲとの戦いにはちょっと上等な噛み合わせがよい毛抜きがマストです。トゲを抜くときは、刺さった方向と同じ方向で優しくつまんで引き抜きましょう。

 

ペットボトルのキャップ(穴あき)

登山中の水は貴重品。いつでも好きなだけ使えるわけではありません。それでも切り傷や擦り傷はしっかりと洗浄するのが重要です。そんなシチュエーションで有効なのが、このペットボトルのキャップに針穴を空けたものです。

熱中症や脱水を未然に防ぐために常備している水にこのキャップを取り付ければ、少ない水で高水圧の洗浄が可能です。

 

テーピング・テーピングサポーター

固定の他にもウェアやテントの破れ、靴の修理などにも活用できるテーピング。そして三角巾の代わりや様々な部位の固定が可能なテーピングサポーターは、事前の練習は必要ですが、もしもの時のスーパーアイテムになってくれます。

 

手ぬぐい

清潔な手ぬぐいは止血時に使えるほか、患部の痛みを和らげるための冷却や熱中症対策の首や脇を冷却するなどに大活躍します。使い方は手ぬぐいを軽く濡らしてよく風に当てるだけ。手ぬぐいが温くなればまた風に当てれば同様に使えます。

 

ジッパー付き袋

血液がついたものや処置中のゴミなどを捨てる用途や、手ぬぐいでは足りない場合の冷却パックづくりも活用可能です。登山中の行動食やランチのゴミもコレに入れればバックパックを汚さずに管理できます。

 

ポイズンリムーバー

医学的にはこの効果の程は証明されているか分かりませんが、個人的には有効なアイテムだと思っています。特にブヨなどにやられた場合は効果を感じています。ポイントは、“どれだけ早く発見して処置をするか?”です。フィールドの状況や子どもの様子を常に把握しましょう。

 

携帯トイレ

山のトイレも“エマージェンシー”です。水分や栄養の補給を考えると、できればトイレコントロールは避けなければなりません。そうなるとどうしてもやって来るのが尿意や便意です。山はどこでもトイレという時代はもう終わり。自然へのダメージを考えて、携帯トイレを活用しましょう。

 

ゴミ袋

「ファーストエイドになんでゴミ袋?」と思われるかもしれませんが、カットして広げれば地面が濡れている場所でも横になれるし、緊急時に荷物を現場に一旦置いて下山といった時も、バックパックの中身を袋に入れて現地保管可能です。その他アイデア次第ではまさしくエマージェンシー時に使えるアイテムになります。

 

患部固定器具

様々な種類がありますが、個人的にはどんな患部にも簡単に使える「サムスプリント」がおすすめです。使用に関してしっかりとした練習ですが、骨折の疑いがあるときなどには確実に必要になってきます。

ちなみに、サムスプリントは写真の様にゴミ袋と組み合わせることで嘔吐時などにも使えるバケツ・洗面器にもなります。

 

マスク・アルコール消毒・体温計

新型コロナウィルス感染拡大防止のために、新しい「登山の形」として常備が必要なアイテムです。マスクは登山時着用していない場合でもどうしても汚れがちです。そんな時にすぐ交換できるように予備が必要です。

また、体温計は体長変化が激しい子どもの状態を知るには重要なアイテムでもあります。特に、山小屋泊など1泊2日以上になる場合は必ず持っていきましょう。

 

エマージェンシーシート

出血、骨折の疑い、打撲、その他、もしもの時がより酷くなると体温の低下が始まります。その他低体温症の防止も含め保温の際のマストアイテムです。

 

手袋

処置時に自分の手が汚いときはもちろん、双方の感染防止のためにも標準装備として持っておきましょう。

 

メモ帳・油性ペン

いつ、どこで、どのように、何が起こったのか?止血は何時から行ったのか?など、応急処置時は記録も大切です。場合によっては包帯や身体に直接書き込みやすい油性ペンなどがおすすめです。

 


 

今回紹介したファーストエイドのアイテムは、基本セットです。確実に準備をして、さらには使いこなせるようにしておきましょう。

また、これら以外にも必要と思われるものは、各自の判断で技術と知識と合わせて準備をしてください。ただし、ファーストエイドが大きく重くなりすぎて逆に山行に支障をきたさないように注意しましょう。

 

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プロフィール

長谷部雅一

アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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