秋田駒ヶ岳八合目より周回。霧の岩峰群と燃えるようなムーミン谷の紅葉を満喫
夏季には高山植物の宝庫として知られる秋田駒ヶ岳。紅葉の時期には、二つのカルデラが並ぶ特異な山容に、錦秋のタペストリーが広がる絶景を堪能できます。
秋田駒ヶ岳は最高峰の男女岳(おなめだけ)を中心にした複数の山々の総称です。ムーミン谷の愛称で知られる馬場の小路コースを歩きます。
秋田駒ヶ岳八合目登山口は朝からガスの中で、しかも強風でした。まずは阿弥陀池を目指しますが、見通しがききません。浮き石だらけのガレ場を通り、男岳に登頂するも視界はありません。
さらに五百羅漢方面へ進み、女岳との鞍部を下ります。この下りも岩稜のガレ場で慎重に進みます。道は細く、草に覆われて踏み跡が薄く、多少のヤブ漕ぎも強いられます。
少しガスが晴れてきたと思ったら、いきなり女岳の黒々した溶岩流跡が目の前に現れて、度肝を抜かれました。火山地帯であることを強烈に印象づけられます。
視界がないので無理をして女岳には登頂せず、女岳の脇からムーミン谷(馬場の小路)への踏み跡を進みます。
男岳南斜面の特異な岩峰が次々とガスの中から現れ始めます。ムーミン谷の入口にさしかかると、一条の光が差し込みます。紅葉の大パノラマが徐々に色濃く表れてくる様子はまさに圧巻。
ムーミン谷の中は強い風も届かず、駒池をへて大焼砂分岐まで一歩毎に振り返り、刻一刻と変幻する極彩色のパノラマを堪能することができました。
大焼砂から横岳の間は風の通り道らしく、強風が吹き荒れる中を登り返し、横岳の岩稜地帯をへて、阿弥陀池へと周回すると、朝方に空の様子を見ていた登山者が続々登ってきていました。帰路は旧道を辿りましたが、警告の看板通り、所々登山道が崩壊しています。ロープと杭が打ってあるものの、頼りなさげでひやひやしながら通過しました。(取材日=2017年9月26日)
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。