冠雪の槍ヶ岳の展望を求めて初冬の燕岳を登る

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11月には、北アルプスでは紅葉もすっかり終わり、多くの山小屋も営業を終了します。いよいよ厳しい冬が本格的に始まる前のこの時期に、冠雪した槍ヶ岳を見に、燕岳へ。

冠雪した槍ヶ岳が凛々しい

燕岳に延びる合戦尾根は、槍ヶ岳の展望がすばらしい表銀座コースの起点です。また、燕岳への尾根上に立つ燕山荘は北アルプスの稜線上で最も遅くまで営業している山小屋でもあります。厳冬期に入る直前の好天気に、雪をまとった槍ヶ岳に会いに燕岳をめざしました。

11月の北アルプスは、雪に備えた充分な装備と計画が必要になります。最新の情報を確認して、万全な備えで挑みましょう。

 

モデルコース:中房・燕岳登山口~合戦小屋~燕山荘~燕岳(往復)

コースタイム:【1日目】5時間【2日目】2時間40分

⇒燕岳周辺の地図

この時期は中房温泉が登山口となります。平日でしたが、第一駐車場は9割がた埋まっていて、人気のほどがうかがえます。合戦尾根は急登ですが、整備され、第一ベンチから第三ベンチ、富士見ベンチと要所に休憩ポイントがあるので助かります。1年半ぶりの北アルプスで、左膝の故障のリハビリを兼ねての山行なので、ペースはゆっくりです。

急登の合戦尾根の階段、雪がついて滑りやすい

 

雪が出てきたのは、第二ベンチ付近からで、階段が凍っていて滑りやすく、注意が必要です。合戦小屋は営業していませんが、休憩することはできます。(※2021年、合戦小屋は11月4日~土・日のみ営業)

合戦小屋を過ぎると尾根道となり、展望がひらけ、燕岳と燕山荘が見えてきます。クサリ場の岩場にも雪がついて滑りやすくなっています。夏道は閉鎖されていて、尾根の冬道をたどって燕山荘の前に出ます。このあたりは、さらに積雪が多いときは、チェーンスパイクかアイゼンなどの滑り止めがあった方が安心です。

合戦沢ノ頭を過ぎると燕山荘が見えてくる

 

燕山荘から花崗岩が風化した砂礫地となり、イルカ岩など様々な形の奇岩の間を縫うように進みます。雪は風で飛ばされたのか、ところどころに残っているだけです。山頂からは冠雪した北アルプスの山々が見通せます。この時期ならではの絶景を堪能できます。

燕岳山頂への稜線、雪は強風にふきとばされて砂地が露出している

 

イルカ岩から燕山荘をふりかえる

 

この日は燕山荘に一泊、コロナ禍で定員の半分の制限で、ゆったりスペースは使えて楽でしたが、登山者同士の交流ができず、その点は残念でした。

翌日は、ご来光を撮影したのち、大天井岳への稜線を少し進んで、モルゲンロートの槍ヶ岳を撮影したのち、ゆっくり合戦尾根を下りました。

モルゲンロートに染まる槍ヶ岳

(取材日=2020年11月11~12日)

 

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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