北アルプス・唐松岳 八方尾根から剱岳・立山連峰の絶景が待つ唐松岳登頂をめざして

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八方尾根から唐松岳は冬の北アルプス登山のなかでも、ゴンドラを使って比較的登りやすい山です。冬のアルプスへの入門としても人気があります。

頂上に立つとまず目に飛び込んでくる厳冬期剱岳・立山連峰の絶景

 

八方尾根から登る唐松岳は厳冬期の北アルプスはスキー場のゴンドラリフトが使えることもあって、初級者でも比較的容易に挑戦できる雪山の一つです。しかし、それは天候を見極めてのことで、冬型気圧配置では冷たいが吹き荒れ、ホワイトアウトで視界が失われる日々が続きます。細心の準備怠りなく、好天のチャンスをとらえて登頂をめざします。

 

モデルコース:八方池山荘~唐松岳(往復)

唐松岳地図

コースタイム:7時間 ※積雪状況による

⇒唐松岳周辺の地図

 

以前、厳冬期の唐松岳に挑戦したのは、5年前の2016年でした。冬型気圧配置の隙間を縫って大陸から高気圧が移動してくる短い晴天の日を狙い唐松岳登頂に挑み、登頂を果たすことができました。

今回は、痛めた足の復調を確かめることもかねて、再び、八方尾根より唐松岳登頂をめざしました。ねらい通り、登山日和ともいえる快晴にめぐまれ、ゴンドラとリフトを乗り継いでまずは八方池山荘まで登ります。

雪に埋もれた八方池と雪に覆われた白馬三山

 

余分な荷物をデポして、スノーシューをはいて偵察がてら下ノ樺まで行くことができました。痛めていた左足に違和感が残るので、この日は余力を残して戻り、八方池山荘に宿泊し、翌朝の登頂に備えます。

雪面のかなたに頭を出す鹿島槍ヶ岳、五竜岳

 

翌日も快晴に恵まれ、立派なトレースもできており、雪も締まっているので、下ノ樺からアイゼンにはきかえ、遅いながらも順調に歩くことができました。

下ノ樺から上ノ樺へと続く登り。スノーシューからアイゼンに履き替える

 

しかし、上ノ樺から丸山ケルンへと傾斜がきつくなると足取りは重くなってきます。まわりは登頂のチャンスとばかり、多くの登山者やBCスキーヤーが山頂をめざして登っていきます。余力はまだありそうですが、唐松岳頂上山荘手前の尾根の手前でタイムリミットとなり、帰りのリスクを考えて、残念ながら今回はここまでとします。

頂上への最後の岩稜の登り

 

5年前に登頂した際は、尾根を登り切っていったん唐松岳頂上山荘の前に出て、頂上直下の雪に覆われた岩稜地帯を登り切って頂上に向かいました。右側が鋭く切れ落ちた稜線を滑落や雪庇に注意しながら頂上に出ると、いきなり360度の展望がひらけます。あこがれの厳冬期の剱岳や立山連峰が一気に目に飛び込んで深い感動をおぼえたのが、いまでもありありと覚えています。

唐松岳頂上山荘を眼下に、雪庇に注意しながら下る

 

なお、今回は天候に恵まれましたが、降雪直後や強風時の視界不良の場合は、トレースも消え、強風にさらされることを覚悟しなければなりません。また、積雪状況次第で、頂上直下や、頂上山荘手前のヤセ尾根付近などではとりわけ雪庇の踏み抜きに注意が必要と思われます。(取材日=2021年2月13~14日)

 

※積雪期の山は、雪の状態や天候によって、難易度、コースタイムが大きく変わります。計画時には必ず出発前後の天候やエスケープルート、山小屋などの避難できる場所を確認しておきましょう。

 

唐松岳データ

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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