西上州・兜岩山から荒船山。イワザクラ咲く奇岩探訪と展望広がる新緑の頂上台地へ

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奇岩が並ぶ兜岩山で静かな山歩きとコイワザクラを楽しみ、登山者でにぎわう新緑の荒船山頂上台地をめざしました。

兜岩山への縦走路からP1、P2を望む。猫の耳とも呼ばれる

 

群馬県と長野県の県境に位置する荒船山、兜岩山。静かな兜岩山から、テーブル状の独特な山容の荒船山をめざします。ひっそりと冷たい岩壁に咲くコイワザクラとの出会いも楽しみです。

 

モデルコース:荒船不動登山口~兜岩山~星尾峠~経塚山~艫岩~荒船不動登山口

荒船山・兜岩山地図

コースタイム:6時間45分

⇒荒船山・兜岩山周辺の地図

 

登山口は荒船不動。まずは静かな樹林帯の登山道を稜線まで進みます。御岳山を経て田口峠に至る細尾根に乗ります。御岳山をピストンしてから稜線に戻ります。そこからはP1、P2、ローソク岩(P3)と呼ばれる尖峰が立ち並ぶ岩稜地帯です。そのちょっと冷たく湿った岩壁にひっそりと咲くコイワザクラ(またはミョウギイワザクラ)を探しながら兜岩山へ進みます。

ローソク岩の基部の岩壁に来ると、見上げるはるか頭上に点々とピンク色の何かが。まぎれもないコイワザクラの5枚のハート型の花びらと丸いかわいい葉が点々と見えます。やっと見つけました。おそらく見つけようとしなければ、通り過ぎてしまいそうな、かぶさるような岩壁の上部にコイワザクラ(ミョウギイワザクラ)は咲いていました。

湿り気のある薄暗い岩壁にひっそりと咲くコイワザクラ(ミョウギイワザクラ)


角礫岩特有の、いまにも剥がれやすい岩の割れ目がいくつも入る岩場で、足元は濡れた落ち葉で滑りやすく、近づくのも容易でない、やや危っかしいところでした。おそらく人の手が容易に届かないからこそ残ったのでしょう。可憐なピンク色の花に心が洗われます。

兜岩山のピークは展望のきかない林の中ですが、すぐ先に展望が開ける場所があり、まだ雪をかぶった八ヶ岳連峰が、新緑の山の峰々の先に連なっています。

兜岩山の展望台からは八ヶ岳連峰が一望できる

 

もと来た道を戻り、さらに足を伸ばして星尾峠から経塚山に登り、艫岩(ともいわ)展望台まで荒船山頂上台地の新緑の林の中の登山道を往復してきました。

新緑が美しい荒船山の頂上台地

高度1300mの頂上台地上とはおもえないなだらかなハイキング道、足下にはスミレなどが咲く

 

台地では、小川が流れ、足下にはスミレやハルリンドウが咲き、ミツバツツジの赤紫色の花が鮮やかで、とても高度1300mの頂きの上とは思えません。こちらはうってかわって多くのハイカーでにぎわっていました。艫岩の断崖絶壁からは燃える新緑の山々のむこうに浅間山から八ヶ岳、北アルプスなどを一望でき、歓声の声があがっていました。

頂上台地末端の艫岩は200mもの断崖絶壁である

(取材日=2018年5月12日)

 

荒船山データ

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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