はじめての山歩き講座③  登山計画の立て方

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山を楽しみ、不安なく確実に下山するためには、事前にしっかりと登山計画を立てることが大切だ。そのためにはルートの概要や所要時間、入下山のアクセス、当日の天気など、たくさんのことを確認しておかなくてはならない。登山は登る前から始まっているものと考えて、実際の行動をシミュレーションするようなつもりで、計画を立てていこう。

文=木元康晴

登山計画の立て方

STEP1、山を決める

まずは、どんな山に登りたいか考えよう。登山を始めようと考えた最初のきっかけは、SNSやテレビなどで見た、山の絶景かもしれない。しかし登山は、自分の体力や技術、経験に合わせて山を選ばなければ事故の元。初心者ならば、最初は人気が高くて他の登山者が多い低山に向かい、装備や体力を確認するのが確実だ。ガイドブックを読んだり、ネット上の山行記録も閲覧して、無理なく登れそうな山を探そう。

写真の説明

楽しい登山は入念な登山計画から生まれる(写真=PIXTA)

STEP2、ルートを選ぶ

次に、その山をめざすルートを選ぶ。ここで大切なのは、「自分の技術で登れるのか?」ということ。ガイドブックや登山地図を見て、難所の有無とその程度をチェックしよう。行動時間や体力レベルの確認も大切で、やはりガイドブックが役立つが、ぜひ活用したいのがヤマケイオンラインの「ヤマタイム」だ。コースをクリックすることで所要時間と標高差が表示されるため、より確実な判断が可能だ。なお、体力度はおおむね標高差で知ることができる。初心者は最大でも800m程度にとどめた方が無難だ。

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ヤマタイムならコースタイムや危険箇所を簡単に調べることができる

STEP3、行程を考える

ルートが決まったら、さらに詳しく行程を考える。コースタイムに休憩時間を加えた予想行動時間を出し、次に登山口へのアクセス、下山口からのアクセスを調べて、出発予想時刻に行動時間を加え、帰りのバスなどに間に合うかを確かめよう。時間が自由なマイカーの場合も、日没1時間前には下山できるようにしよう。さらにアクシデント発生時にすみやかに下山するためのエスケープルートや、危険箇所、水場、山小屋の場所も把握しておこう。

STEP4、当日の天候を確認する

1週間前には週間予報が発表されるので、天気予報のチェックをしよう。この時点では「tenki.jp」などの天気予報で、目的の山をはさんだ東西、または南北の都市の予報を見る。ただし3日以上先の予報精度は低く、傾向をつかむのみ。2日前になったら、山岳専門の「山の天気予報(ヤマテン)」(一部有料)が高精度の予報を発表するのでチェックしたい。

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ヤマテンは主要な山ごとに天気予報を出すので便利

STEP5、必要な装備を確認

持参する装備も早めに確認しておこう。詳しくは「登山の服装と持ち物」を参照のこと。めざす山や山行スタイルによって、食料や飲み水の量が変わったり、クッカーやアイゼンなどが必要になったりすることも。大切なのは、確認するときには必ず装備リストを作る、ということ。登山では、装備不足は危険に直結することもある。パッキングのときにリストをチェックすることで、忘れ物を防ぐようにしよう。

装備に関するノウハウは、第二回をチェック!

はじめての山歩き講座② 登山の服装と持ち物

STEP6、登山計画書を作成・提出する

計画ができたら、自分の行程を確認する意味合いも含め、登山計画書としてまとめることが重要だ。登山者の住所氏名、行動予定、装備リストなどの記載があれば、登山届として登下山口にある登山ポストに提出できる。なお、今はウェブ上で登山計画を作成し、それを登山届として提出するシステムも普及しているのでぜひ活用したい。ただし、万が一の救助要請の際には、すぐ閲覧できる紙の計画書が必要だ。バックアップも兼ねて、必ず登山計画書は紙に印刷して持参しよう。

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長野県警が公開している登山計画書例

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

はじめての山歩き 〜安全に楽しく山に登るために〜

はじめて山歩きを始める人に。山に登る前に知っておきたい、基礎知識を紹介。

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