はじめての山歩き講座④  登山で気をつけたいこと

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自然の中に身を置いて、花や緑を愛でたり景色を楽しんだり。登山はとても楽しいもの。一方で、通信や交通手段がかぎられる山の中では、トラブルがあったときに救援を受けにくい。安全に楽しく山を歩くために、最低限知っておきたい技術や知識がある。どれも決して難しいことではないが、意識して行動することで、充実した楽しい登山ができる。

文=西野淑子、イラスト=越井隆

1、事前の体調管理をしっかりと

山を歩く前から登山は始まっている。万全の体調で登山が楽しめるよう、前日は十分な睡眠をとり、当日は朝食をしっかりと摂っておきたい。登山中は体の中の水分が不足しがちになるので、登山を始める前に水分を多めに補給しておくとよい。著しい寝不足や二日酔い、風邪気味など当日の体調に不安がある場合は、登山を中止にすることも視野に入れよう。歩き始める前には準備体操を行おう。ストレッチで体をほぐし、体を適度に温めることは、怪我の防止にも役立つ。

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歩き始め前に準備体操を十分に行おう

2、ゆっくり、休まずに、小刻みに歩く

登山のときは、こまめに休憩を取りながら急ぎ足で歩くより、ゆっくりと、一定のペースで長く歩き続けるほうがバテにくい。おしゃべりをしていても息が切れない程度が目安。登りのときは「街歩きの2倍ゆっくり」ぐらいがちょうどいい。大股でぐいぐい登っていくのではなく、細かい段差を探しながら、小刻みに足を置いていこう。疲れてくるとうつむいて猫背で歩きがちだが、そんなときは顔を上げて深呼吸。上体を起こすことで呼吸がしやすくなる。

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上体を起こして歩くと呼吸が楽になる

3、休憩のタイミングと休み方

1時間を1サイクルとして、50分程度歩いて5〜10分休憩を取るようにするとよい。人気の低山ハイキングのルートなどは、およそ1時間おきに休憩に適したポイントがあることが多い。休憩時には水分を補給し、行動食を摂取しよう。のどが渇いた、お腹がすいた、と思ったときにはすでに体の中の水分やエネルギーが不足している状態。のどが渇いたと思って水を大量に一気飲みしても、体の中に一度に取り込める水分の量は限られている。休憩ごとにこまめな水分、栄養の補給を意識したい。

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休憩時にはこまめな水分&栄養補給を

4、現在地確認をしっかりと

今どこにいて、どこに向かうのか。登山のときは現在地の確認を習慣にしよう。登山道の分岐、特徴的な地形や人工物など現在地の特定がしやすいところでは、地図や道標などで進む方向を確認。休憩時も漫然と休むだけでなく、現在地と進む方向の確認をしておきたい。とくに注意をしたいのは山頂。複数の登山ルートのあるところでは、進む方向を誤って全く違う下山口にたどり着いてしまうことがある。登山口も同様に、複数のルートのあるところは慎重に方向を確認したい。

5、山でのマナー

多くの人が集う山で、安全かつ快適に過ごすために知っておきたいマナー。まずは自然への配慮として、ゴミは必ず持ち帰ること、自然保護の観点から、植物を採らない、持ち帰らないこと、決められた登山道を歩くことなども重要だ。狭い登山道でのすれ違いは、状況に応じて譲り合いを。道を譲る場合は滑落に備え、崖側ではなく山側に避けること。また、山の公衆トイレを利用するときは、利用料を支払い、ペーパーの処分方法(箱に捨てる、持ち帰るなど)は指示に従うように。

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

はじめての山歩き 〜安全に楽しく山に登るために〜

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