雪解けが進み、花々がいっせいに開く秘境、秋田駒ヶ岳ムーミン谷を歩く
標高1637mながら高山植物の宝庫として知られる秋田駒ヶ岳。雪解けが進んでヒナザクラ、チングルマの花の群落が広がり始めた「馬場ノ小路」(通称ムーミン谷)をめざします。

秋田駒ヶ岳は、最高峰の男女岳を中心にした山々の総称。雪解けとともに高山植物が咲き始め、箱庭のような美しい景観が見られます。
秋田駒ヶ岳の岩手県側にある国見温泉には、温泉宿が2軒ありますが、温泉は登山後のお楽しみとして、温泉旅館の脇にある階段の登山口より出発します。山頂部は霧に包まれていますが、晴れることを期待して灌木帯の登山道を進みます。

ゴゼンタチバナやマイズルソウ、ウラジロヨウラクなどの花々が次々と迎えてくれます。アカモノ、ミヤマハンショウヅルの群落、ハクサンチドリもちらほら。また「クマ出没注意」の看板が要所にあります。突然、茂みの中からガサゴソと音が聞こえ、ドキッとしましたが、あらわれたのは山菜採りのおじさんでした。

横長根に出ましたが、辺り一面まっしろで何も見えません。小雨も降り始めました。大焼砂に近づくにつれ、風も強くなってきました。例年、夏にはコマクサの群落が見られるところですが、いまは葉だけがでて、強風にしっかりと耐えています。一部はつぼみを出している株もありました。大焼砂から横岳へ経て阿弥陀池に降りる予定でしたが、強風をさけて、大焼砂分岐よりムーミン谷へ下ることにしました。

駒池周辺に雪渓が残り、部分的に木道を覆っていました。雪が溶けたところには、ヒナザクラ、ハクサンチドリ、ミヤマキンポウゲなどが咲き誇っています。圧巻はチングルマで、ムーミン谷を埋め尽くすように群落が広がっていました。さらに阿弥陀池をめざして登る斜面にはシラネアオイの群落がそこかしこに咲き乱れていました。


いったん雨風をさけて、阿弥陀池小屋に避難、昼食にします。中では大勢の登山者が雨宿りしていました。
午後は、往路を戻り、霧が晴れる気配がしてきたので、駒池でしばらく待機していると空が明るくなり、男岳、女岳背後より青空が見え始めました。横長根を経て国見温泉に戻る頃にはすっかり晴れてきて、タイミング悪くちょっと残念でしたが、豊かな花の楽園を実感できました。

プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
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