“推し”にキュンとする野鳥観察『なつのやまのとり』【書評】
評者=四角友里(アウトドアスタイル・クリエイター)
「なんてすてきな歌声なんだろう」
「あっ、姿が見えた!」
山や森で鳥に出会うたび、いつも心が踊る。けれど声や姿から鳥の種類を見分けるにはハードルが高く、もどかしさをずっと抱えていた。でも、『なつのやまのとり』を読み始めると、なぜだろう、まだ実際に鳥たちを観察できたわけでもないのに、すでに鳥とすこし仲良くなれた気分になっている。
piro piro piccoloさんの絵と言葉でつづられる鳥の生態や特徴は、端的でわかりやすい。いや、図鑑的な「生態」という言葉はこの本には似合わず、むしろ〝推し〟の萌えポイントと表現したくなってしまう。「ここがかわいいの!」や「この仕草がおもしろいのよ~」という、キュンとしたり、クスッと笑ってしまう鳥たちの習性やエピソードが満載で、一気に身近に感じられるのだ。それぞれの個性がチャーミングに描かれているからこそ、押さえるべきポイントがしっかりと伝わり、なにより「鳥が好き」の愛と熱量が伝染して興味が湧いてくる。
また、夏の山で出会いやすい46種に厳選され、麓から頂上への標高に合わせた順番で紹介されていくのも、山好きにはぴったり(ちなみに最後に紹介されている鳥は登山者のアイドル!)。
花の名前を知ると心が通い合う気がしたり、カメラを携えると違う景色に気づけるように、山へ行く理由に鳥が加われば世界がぐっと広がりそうだ。
この本を通して出会うことのできた、その小さくも力強い存在は、きっと私たちに自然と命の尊さを教えてくれるだろう。
(山と溪谷2022年8月号より転載)
登る前にも後にも読みたい「山の本」
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他
