【書評】没後50年山と文芸の世界にあらためてふれる『尾崎喜八選集 私の心の山』 (評者=石黒敦彦)本書は21世紀の日本の文化・文学への「山からの贈り物」である。20世紀の近代登山と博物学的な詩精神の最良の部分が一冊にまとめられて、21世紀に引き継がれたことを喜びたい。 2024.04.22
【書評】支配人昇格新たな魅力で文庫本化『黒部源流山小屋暮らし』 (評者=三宅 岳)さっぱりしつつも巧みな文章に、そしてさすがは画伯とほめちぎりたくなる絵の数々に、背負った責任はグンと重くなっているはずなのだが、そんなものをぱっと振り切った明るさがあふれている。 2024.04.19
【書評】 日本唯一の北極冒険家デビュー作『北極男 増補版 冒険家はじめました』 (評者=花岡 凌)人生を変えた一冊は何かと聞かれたら、私はこの本だと断言できる。北極男こと、著者の荻田氏は北極冒険家である。アルバイトで資金を貯めては北極へ冒険に向かう。 2024.03.25
【書評】志半ばで遭難した6人の軌跡を辿り人生と時代を回顧『未完の巡礼 冒険者たちへのオマージュ』 (評者=長谷川昌美)植村直己、長谷川恒男、星野道夫、山田昇、河野兵市、小西政継。「昭和」という時代の後半に活躍したこれらの著名な冒険家、写真家、登山家に共通するものといえば、いずれも志半ばにして海外で遭難、生還できなかったという事実だ。 2024.03.22
【書評】山の危険と救助のリアルに迫る『剱の守人 富山県警察山岳警備隊』 (評者=木元康晴)富山県警察山岳警備隊は60年に近いその歴史のなかで、ノウハウを積み重ねてきた。山の危険を熟知した上で、二重、三重のバックアップも講じ、確実な登山者の救助をめざしている。 2024.03.15
【書評】社会学者がつづる「おひとりさま」の二拠点生活の内実『八ヶ岳南麓から』 大学時代はワンダーフォーゲル部に所属されていたという上野さん。八ヶ岳に来られて以来、周囲の山はほとんど踏破されたというし、膝を悪くされてからはもっぱらスキーを楽しまれる。 2024.02.24
【書評】当事者の証言から雪崩事故の実像を導き出す『証言 雪崩遭難』 雪山を登ったことがない人にも、ある程度経験を積んだ人にも、容易に思いつくという点では、雪崩遭難はいちばん身近であろう。 2024.02.17
【書評】北海道分水嶺700㎞仮想の荒野を歩く『北海道 犬旅サバイバル』 現代社会の本質は消費である。つまりお金がなければ社会に参加できない。であるなら、無銭旅行をしたらそこは荒野になるのでは? こうして愛犬ナツと鉄砲を相棒にした北海道大放浪がはじまる。 2024.01.24
【書評】雪のくに、森のくに。ブナの森に暮らす写真家による写文集『雪のくに移住日記 ブナの森辺に暮らす』 小気味のいい移住記が生まれた。舞台は長野県飯山市羽広山集落。訪ねたことのない土地だ。けれどページをめくり写真を見渡しながら、どこか「似ている」と思う。私が暮らす北海道の豪雪地帯、空知地方の里山に。 2024.01.20
【書評】創立100周年 山小屋を支え続ける二代目のまなざし『穂高に遊ぶ』 今思うとその山小屋は、独特な空気に満ちていた。個人がもつ自主性、創造性、責任感。得体のしれぬ緊張感。ほかの山小屋では感じることのない何かが、そこには漂っていた。 2023.12.28