疲労や病気での行動不能遭難者が多発、今現在の自分の体力を把握した上で入山を 島崎三歩の「山岳通信」 第276号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年9月7日に配信された第276号では、中高年登山者の疲労や病気による行動不能遭難も多発している現状について、若い頃の体力を基準にするのではなく、今現在の自分の体力を把握した上での入山を呼びかけている。

 

9月7日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第276号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月29日、苗場山で、2人パーティで入山した73歳の男性が、登山道から斜面を滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。岳北消防署員及び飯山警察署員が出動して男性を救助した。

  • 8月29日、八ヶ岳連峰の蓼科山で、4人パーティで入山した58歳の女性が、山頂から下山中に石につまずき、転倒して負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防本部特別救助隊員、佐久広域連合消防本部消防隊員が出動して防災ヘリで女性を救助した。

  • 8月30日、北アルプスの針ノ木岳で、4人パーティで入山した75歳の女性が、針ノ木峠を下山中に転倒して行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス広域消防本部消防隊員が出動して女性を救助した。

  • 8月30日、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した62歳の女性が、宿泊予定の山小屋に戻らず行方不明となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊が捜索を行い女性を発見、県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。登山中に何らかの原因により滑落した模様。

  • 9月1日、北アルプスの蝶ヶ岳で、3人パーティで入山した83歳の女性が、蝶ヶ岳から長塀山を下山中、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月4日、八ヶ岳連峰の白駒池で、単独で入山した43歳の男性が、天狗岳から下山中に白駒池付近の登山道で転倒して負傷する山岳遭難が発生。消防隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月4日、八ヶ岳連峰の横岳大同心で、2人パーティで入山した63歳および60歳の男性が横岳大同心をクライミング中に技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して2人を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月1週は、死亡遭難1件を含む、7件の遭難が発生しました。滑落や転倒による遭難が多く、大半が下山中に発生しています。また、中高年登山者の疲労や病気による行動不能遭難も多発しています。

登山は、レベルに応じて年齢や性別を問わず、誰もが楽しめるスポーツですが、一般的なスポーツと比べてかなり負荷の高いスポーツです。
持病や故障を抱えたままの登山や、体力的に余裕のない登山は、それだけで遭難のリスクがあります。
また、若い頃の体力を基準にするのではなく、今現在の自分の体力を把握した上で、トレーニングを継続し、筋持久力、心肺機能、バランス感覚等を鍛え、健康管理にも十分に気をつけて万全なコンディションで入山しましょう。

今後、県内の山域では、紅葉が見頃になるシーズンを迎えます。それと同時に、朝晩の冷え込みも今まで以上に厳しくなります。日没前までには、余裕を持って登山口に下山できるような行動を心掛けてください。また、日帰りの予定でも、ヘッドライトや防寒着等の装備品を携行しましょう。

週末は、多くの登山者が集中することが予想されますので、混雑等を見越した上で余裕を持った計画で、無理のない登山をしましょう。

 

夏山期間中の山岳遭難発生状況について

長野県警山岳安全対策課では、夏山期間中(7月1日~8月31日)の山岳遭難発生状況を、今年の夏山の特徴として、以下のように発表した。

特徴

(1)発生件数:
 コロナ禍以降、初めて行動制限のない夏山シーズンを迎え、北アルプスをはじめとする各山域で天候の良い週末を中心に多くの登山者で賑わい、山岳遭難も多発し、コロナ禍以降、発生件数、遭難者数ともに最多。
(2)年齢別:
 40歳以上の中高年の遭難が約8割(91人 82.8%)
(3)態様別:
 転倒が3割強を占め増加(36件 36% 前年比+13件 +9.9P)、疲労や病気が3割(30件 30%)
(4)山域別:
 北アルプス、八ヶ岳連峰等の高山での遭難が約9割(87件 87%)
(5)居住地別:
 遭難者のほとんどが県外者(県内者8人 7.3%、県外者102人 92.7%)

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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