登山向けヘッドランプの選び方。特徴やルーメン数、バッテリーについて解説
夜に、周囲を照らすヘッドランプ(ヘッドライト)は、日帰りの計画でも必ず持ちたい必須アイテム。手元を照らすだけなら安価な商品で大丈夫そうだけど、高機能モデルも気になるところ。おすすめモデルの選び方を紹介しながら、ルーメン数や電池寿命など気になるスペックについても解説します。
文=吉澤英晃 写真=福田 諭
ヘッドランプは登山の必需品

山登りの三種の神器に、登山靴、バックパック、レインウェアがありますが、ヘッドランプも登山に欠かせない必須アイテム。まずはどんなシーンで必要になるか考えてみましょう。
泊りがけの山行

まず、真っ先に思い浮かぶのが1泊2日以上の泊りがけの山行です。山小屋に泊まる場合もテントで寝る場合も、トイレに行くなど夜に行動するときに足元を照らすヘッドランプが欠かせません。
早朝の出発時

山登りは早出早着が行動の基本。歩く距離が長い場合は、当日の日が昇る前に歩き始めることもあるでしょう。暗がりのなかで山道を歩くには、やはりヘッドランプが必要です。
下山が遅れて日没になったときの備え

登山では軽度のケガや体調不良、体力不足、コースタイムを甘く見積もっていたなど、さまざまな要因で行動時間が予想以上にかかってしまうことがあり得ます。日が暮れてしまっても行動できるように、ヘッドランプは日帰り登山でも持つべき装備といえるでしょう。
ヘッドランプの主な特徴3つ
ヘッドランプの必要性が分かったところで、懐中電灯やスマートフォンなど、なにかしらの光源を持っていれば大丈夫と思う方がいるかもしれません。ヘッドランプが登山に適している理由を、3つの特徴と共に紹介します。
特徴①軽量&高機能

登山の装備を選ぶうえで、重量と収納サイズは無視できないポイントです。最近のヘッドランプは非常に軽量で手のひらに収まるほどコンパクト。それなのに、充分な電池寿命とさまざまな照射モードを備えています。
特徴②視線の先に光が当たる

ヘッドランプは文字どおり頭に巻き付けて使うため、照射する光が頭の動きに追随し、視線の先を瞬時に照らします。暗がりの登山道を安全に歩くには前方の視界をすばやく確保できるヘッドランプが不可欠です。
特徴③両手が自由に使える

ハンドライトなどと違い、ヘッドランプは両手が自由に使える点も特徴です。急な坂道で立ち木や岩などを掴みたいとき、両手が使えないとバランスを崩して怪我などのトラブルに繋がりかねないので注意しましょう。
おすすめヘッドランプの選び方
ヘッドランプを選ぶとき、最初は種類の多さに戸惑うかもしれません。ここではポイントを3つに絞って、おすすめモデルの選び方を紹介します。
選び方①充電バッテリー対応

まず、バッテリーの仕様に注目しましょう。かつては乾電池を使うモデルが一般的でしたが、近年は充電式や充電パックを使う商品が増えてきました。充電に対応するモデルは、乾電池を用意したり使いかけを処分したりする面倒を省ける優れもの。山行中でもモバイルバッテリーから充電でき、ヘッドランプの機能を常に100%引き出せる強みもあります。

中には充電パックと乾電池の両方を使えるモデルがあり、こちらはバッテリーが切れて充電もできない状況に陥ったとき、予備の乾電池を使用できる利便性の高さが魅力です。
選び方②バッテリー一体型

次にチェックしたいのが、バッテリーパックの位置について。ヘッドランプには、光を照射するライトとバッテリーパックがセットになっているものと、バッテリーパックが後頭部にあってライトと別々になっているモデルがあります。
バッテリーパックが後頭部にあるモデルは、より明るいライトを搭載するものや、激しい動きでも本体が揺さぶられないようにバランスを重視した商品に多く、どちらかというと夜間行動が多い山行やトレイルランニングなどにおすすめです。しかし、パーツが増えるので少々収納サイズが嵩張ってしまい、重くなる傾向にあるのが欠点。
これから登山を始める方は、収納サイズがコンパクトで軽量なモデルが揃うバッテリーパックとライトがセットになっている一体型から検討するといいでしょう。
選び方③遠距離対応の照射モードがある

最後に確認したいのが照射モードです。広範囲を照らすモードのほかに、遠くまで光を照射するモードがあるかどうかをチェックしましょう。
山小屋やテント場だけで使うなら、広範囲を照らすモードがあれば充分です。ただし、登山では夜間や明け方に山道を歩くときにも使うため、物音がした方向を照らしたり、ぼやっと見えてきた人工物を遠くから確認したり、遠距離まで照射できるモデルの方が使い勝手に優れるといえます。
気になるスペックの意外な真実
一般登山で使うヘッドランプは、「充電式」「バッテリーパック一体型」「遠距離対応の照射モード」の3つのポイントを基準に選ぶといいでしょう。しかし、要点を満たすモデルもいくつか種類があるため、ルーメン数や電池寿命といった細かいスペックも気になるはず。「ルーメン数は高いほうがいい」「電池寿命は長いほうがいい」などと考えたくなる気持ちは分かりますが、そこまで重要ではないというのがここでの回答。理由をひとつずつ解説します。
ルーメン数が高い=明るく見えるは間違い

ヘッドランプのパッケージやモデル名で目立つ「ルーメン」とは、光源から1秒間に照射される全方向の光の量を表す単位です。ルーメン数が高いヘッドランプ=本体が明るいといえるのですが、目で見る明るさは光の当たり方で変化することをご存知でしょうか。
同じルーメン数でも、広範囲を照らした場合とスポットで狭い範囲を照らした場合では、どちらが明るく見えるかは一目瞭然。ルーメン数が高い=明るく見えるは間違いで、実際に対象物を明るく見るには光の照射範囲も重要になります。
電池寿命はあくまで目安

記載の電池寿命は同じ照射モードで使い続けた場合の時間です。しかし、実際の現場ではケースバイケースで照射モードを使い分ける人が多いはず。さらに、電池寿命は乾電池や充電池の使用状況、気温、乾電池の銘柄などによっても左右されます。そうなると、スペックに記載されている時間はもはや目安にしかなりません。
ちなみに、一年のうち最も日が短い冬至の日照時間は約9時間45分とされています。一般的な登山向けヘッドランプはそれ以上の電池寿命があり、一晩中の行動に耐えられる性能を満たしていると考えていいでしょう。
防水性はテスト項目が違う

最後にヘッドランプの防水性についても説明します。IP○○という記載が防水性を含む保護等級を表すコードで、左の○には防塵等級、右には防水等級を表す数字が入り、どちらか一方を表す場合は「X」が使われます。
ヘッドランプの場合、「IPX4」「IPX8」のように防水等級を示すモデルが一般的で、数字が大きいほど性能が高いと思われがちです。ただし、IPX4〜6であらゆる角度からの散水に、IPX7~8で水没に耐える性能をもつとされ、規定する防水性が異なるため一概に数字が大きい=性能が高いとはいえません(なかにはIPX5/IPX7と併記する精密機器もある)。いずれにせよ、登山向けヘッドランプは雨に対する防水性を充分に備えていると考えて大丈夫です。
まとめ:選び方の3つのポイント

今回はヘッドランプの選び方を3つのポイントで紹介しました。おさらいすると以下のようになります。
- バッテリーは充電に対応
- 形状はバッテリーパック一体型
- 遠距離対応の照射モードを備えている
プロフィール
吉澤 英晃
1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出合い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンとして約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。
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