日光市街の裏山、紅葉の鳴虫山を歩き 日光名物ゆば料理のコースを味わう

世界遺産「日光の社寺」を擁する関東でも有数の観光地・日光。日光を代表するグルメのひとつが「ゆば料理」だ。日光の山を歩き、おいしいゆば料理を求めた。

写真・文＝西野淑子

日光の山…というと、男体山や女峰山などの日光連山、関東以北の最高峰である日光白根山などが挙げられる。いずれも標高差があり行程も長い体力勝負の山だが、日光市街の南側にそびえる鳴虫山は適度な歩行時間で楽しめる、私の好きな山だ。日光駅から歩いて登ることができ、日光連山の眺望もすばらしい。春はアカヤシオやシロヤシオ、ヤマツツジなど山のツツジに彩られ、見応えがある。

秋、天気のよい日を狙って訪れた。駅を起点に時計回りで周回するコースだ。神ノ主山からは日光連山がきれいに見渡せてちょっと感動。神ノ主山からの登りがちょっと頑張りどころだ。山頂で休憩をとり、さらに進む。独標からの急な下りを慎重に進み、憾満ヶ淵にたどり着き、赤い帽子をかぶったお地蔵様たちの前を足早に通り過ぎる。

モデルコース：　鳴虫山

 

コースタイム：東武日光駅（1時間5分）神ノ主山（1時間）鳴虫山（45分）独標（50分）憾満ヶ淵（35分）西参道バス停　合計4時間15分

アクセス：東武鉄道東武日光駅下車／JR日光線日光駅から徒歩5分

お風呂で汗を流してさっぱり、素朴な山の恵みも嬉しい

今日は、ゆばのコース料理を食べて帰る。
日光の名物料理のひとつ、ゆば料理。市内にはゆば料理の味わえる店が多く、また、土産物店ではさまざまなゆば製品を見ることができる。日光でゆばを味わうなら、ゆば料理の専門店で上品な味わいのコース料理を味わいたいと常々思っている。

しかしながら、山帰りに「ゆば料理の専門店」は非常にハードルが高い。埃まみれ、泥で汚れた靴で、風格ある店構えの老舗店や洗練された雰囲気の店に上がるのを躊躇してしまうし、値段もそれなりにする。…それでも、せっかくだから、ゆばそばとかゆばラーメンではなく、ゆばのコース料理が味わいたい。ぜいたくがしたいわけじゃない、煮物とか刺身とかいろいろな調理法のゆばを、できればゆったりと味わいたいんだ。山帰りの私にも食べられるゆばのコース料理はないか。

珍しく事前に検索をして、その店を探し当てた。ゆばをさまざまな調理法で味わえる店があるという。駅に向かう大通り沿いにその店「さん・フィールド」はあった。カジュアルな雰囲気の店構え。やさしい雰囲気のスタッフさんに出迎えてもらってほっとする。店内はカウンターとテーブル席。端っこのテーブル席に腰掛け、迷うことなく「ゆば御膳」をオーダーした。

さほど待たずに「ゆば御膳」登場。さまざまな料理が並んでいるが、どれもゆばを使った料理のようだ。

まずは串ゆばを一口。かりっと揚げたゆばの中に、甘い味噌が仕込んである。ひと工夫がおもしろい、おいしいぞ。おからの小鉢はさっぱりとした酢の物、やや甘みがあっていい感じ。さっぱりしたあんのあんかけゆば、ぜんまいをゆばで巻いた煮物も薄味でやさしい味わい。大きくてひときわ目立つ福ゆばは、ほんのりとした甘みと、ふるふるとしたゆばの食感が際立つ。ゆばのつくだ煮は弾力のある食感、ちょっと濃いめの味でご飯が進む。最後はゆば入りのコーヒーゼリーを味わって、ごちそうさま。　

「ゆばをコース料理で＝いろいろな調理法で味わいたい」という願いが、みごとなまでに叶っている。本当にどれもみんなおいしくてニヤニヤしてしまう。ちなみにゆばのお刺身はゆば御膳に含まれず、別注文となる。何人かで来るなら、1皿頼んでシェアしてもいいかもしれないなあ。いや、ケンカにならないよう、1人1皿でいいか

どの料理も素材をいかした優しい味わいで、工夫が凝らされていた。ひとつずつ、丁寧に作っていることが分かる料理で、ゆばの魅力を満喫できた。いいお店に出合えてよかったな。また食べにこよう。いい感じに日光の山を歩けたら、ご褒美は「ゆば御膳」で決まりだ。