羽黒杉の木立に包まれた道から国宝の五重塔をめぐり、羽黒山山頂へ
羽黒山は庄内平野の南東に位置し、月山、湯殿山とともに出羽三山の一つ。標高414mの山頂部には出羽三山神社があります。江戸時代、北方からの文化や情報の伝達を修験者(山伏)が担っていたといわれています。今回は、厳かな空気に満たされた羽黒山を歩いてみたいと思います。
写真・文=斎藤政広
随神門(随身門)をくぐって一歩足を踏み入れると、神域に入ったように、静かな山道が始まります。継子坂に入り、石段を一段一段と下りて、羽黒杉に包まれるようにして進みます。とてもいい雰囲気の参道です。谷底に下り、祓川を渡ります。
さあ、いよいよここから羽黒山への道の始まりです。参道を進むと、川を挟んだ右手には、江戸時代、月山から水を引いて造られたという須賀の滝が現れます。しばらくして、左手に巨大な爺杉が見えてきます。
爺杉からすぐで、五重塔への分岐となります。五重塔は平安期、平将門によって建立されたといわれ、1608(慶長13)年に出羽山形の藩主最上義光が修造。地・水・火・風・空の五大にかたどって5層に造った仏舎利を祭る塔で、東北地方唯一の国宝五重塔です。不思議なくらいの静けさと爽やかさがここにはあります。
五重塔を後にして一の坂の階段に入っていきます。続いて二の坂に入り、茶屋がある所でようやく展望が開けます。三の坂の手前には、南谷へ通じる道があります。南谷は、松尾芭蕉がおくのほそ道の旅で泊まった場所。その面影を探しに、ちょっと寄り道するのもよいでしょう。
この時期、茶屋はお休みに入っています
とりわけ急な三の坂を経て、斎館を左に見て広大な山頂部の広がりに出ると、茅葺きの三神合祭殿が迎えてくれます。杉の巨木が目立つ山頂部には、鐘楼と大鐘、手水舎、芭蕉の句碑、蜂子皇子のお墓、出羽三山博物館などがあるので、山頂広場を中心にぐるりと周遊してみましょう。また予約が必要ですが、斎館にて精進料理を味わい、たどってきた羽黒山の山道を振り返るのもいいでしょう。

帰路は来た道を戻りますが、山頂からは、月山へとのびる荒沢寺への静かな参道もあります。杉とブナの美しい混交林を味わえるので、計画の際、帰路の選択肢の一つに入れておいてもよいかもしれません。
(注)2023年~25年春にかけて、五重塔は令和の大改修が予定されています。主にこけら葺き屋根の改修工事ですが、この期間は工事の足場や幕などにより五重塔が見えなくなります。
駐車場~五重塔~羽黒山山頂部~五重塔~駐車場

コースタイム:約2時間25分
プロフィール
斎藤政広(さいとう・まさひろ)
横浜市生まれ、山形県酒田市在住。東北のブナの森や山々をフィールドに歩き、山麓での多彩な自然との出会いを楽しんでいる。おもな著書に『鳥海山・ブナの森の物語』『鳥海山・花と生きものたちの森』『鳥海山・花図鑑』(無明舎出版)、『森のいのち』(メディア・パブリッシング)、『山と高原地図 鳥海山・月山』(昭文社)などがある。
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