GW中は滑落事故が多発。装備を整え、余裕のある日程で登山を楽しみましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第299号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年5月12日に配信された第299号では、ゴールデンウィーク中に多くの滑落事故が起きたことについて言及。装備を整え、余裕のある日程で登山を楽むことの重要性を説いている。

 

5月12日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第299号では、期間中に起きた22件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 4月27日、甲武信ヶ岳で、2人パーティで入山した40歳の男性が、甲武信ヶ岳に向けて千曲川源流遊歩道を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 4月28日、北アルプスの涸沢で、2人パーティで入山した44歳の男性が、上高地から涸沢に入山してテント泊中に発病・心肺停止状態で発見される事象が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員が出動し、県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。

  • 4月28日、中央アルプスの浄土乗越で、4人パーティで日帰り予定で入山した25歳・25歳・26歳・51歳の男性4人が、浄土乗越から千畳敷に向けて下山中に装備不足などにより行動不能になる山岳遭難が発生。パトロール中の駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員、中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して4人を救助した。

  • 4月28日、入笠山で、3人パーティで入山した64歳の女性が、山頂から下山中に浮石でバランスを崩して転倒し、負傷する山岳遭難が発生。諏訪広域消防本部特別救助隊が出動して女性を救助した。

  • 4月29日、八ヶ岳連峰の白駒池で、4人パーティで入山した26歳の男性が白駒池付近を散策中に圧雪路で滑って転倒し、負傷する山岳遭難が発生。佐久広域消防本部の消防署員が出動して男性を救助した。

  • 4月30日、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した63歳の男性が、常念岳から蝶ヶ岳に向けて登山中に何らかの原因で心肺停止状態になり倒れている状態で発見される事象が発生。救助したものの死亡が確認された。

  • 4月30日、金峰山で、2人パーティで入山した68歳の男性が、山頂から下山中に木製階段で足を滑らせて転倒し、負傷する山岳遭難が発生。佐久広域消防本部員が出動して男性を救助した。

  • 5月1日、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した81歳の男性が、北穂高岳東稜を登山中に技量不足により行動不能になる山岳遭難が発生。本人からの救助要請を受け、長野県警察本部機動隊山岳遭難救助隊員及び北アルプス南部地区山岳遭難対策協議会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月2日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した47歳の男性が、槍ヶ岳山頂付近を登山中にアイゼンが外れて紛失してしまい、行動不能になる山岳遭難が発生。本人からの救助要請を受け、北アルプス南部地区山岳遭難対策協議会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月2日、北アルプスの前穂高岳で、単独で入山した54歳の男性が奥明神沢を行動中に滑落。北アルプス南部地区山岳遭難対策協会救助隊員及び県警ヘリなどが出動して男性を救助したものの死亡が確認された。

  • 5月2日、北アルプスの前穂高岳で、52歳と64の男性が奥明神沢を行動中に、滑落登山者に巻き込まれる滑落遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難対策協会救助隊員及び県警ヘリなどが出動して救助しましたものの、男性(52歳)の死亡と男性(64歳)の負傷を確認した。

  • 5月2日、佐久市志賀地籍の岩場で、ロッククライミングのために3人パーティーで入山した70歳の女性が、クライミング中にバランスを崩して転倒、滑落する山岳遭難が発生。佐久広域消防本部の消防署員らが出動して女性を救助した。

  • 5月3日、北アルプスの焼岳で、単独で入山した54歳の女性が、焼岳から新中の湯ルートを下山中に滑落・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで女性を救助した。

北アルプス・焼岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月8日付

  • 5月3日、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した24歳の男性が、蝶ヶ岳から三股登山口へ下山中に技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。パトロール中の安曇野警察署山岳救助隊員が登山口まで同行下山して男性を救助した。

  • 5月3日、南アルプスの仙丈ヶ岳で、2人パーティで入山した22歳の男性2人が、仙丈ヶ岳から下山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで2人を救助した。

  • 5月4日、北アルプスの布引山で、5人パーティで入山した26歳の女性が、扇沢登山口から入山して鹿島槍ヶ岳を経由して縦走中にスリップして滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで女性を救助した。

北アルプス・布引山での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月8日付

  • 5月4日、北アルプスの北穂高岳で、3人パーティで入山した23歳の男性が北穂高岳へ登山中に落石に遭い負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが男性を救助した。

  • 5月4日、高妻山で、2人パーティで入山した24歳の男性が高妻山から下山中にスリップして滑落、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで男性を救助した。

高妻山での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月8日付

  • 5月4日、北アルプスの前穂高岳で、2人パーティで入山した63歳の男性が前穂高沢を下山中に滑落して、シュルンド(クレバス)に転落する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会隊員が出動して男性を引き上げた後、県警ヘリで救助した。

  • 5月5日、北アルプスの奥穂高岳で、2人パーティで入山した71歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山途中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。

  • 5月5日、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した79歳の女性が、赤岳から下山途中に疲労によりつまづいて転倒し、行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 5月5日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した26歳の男女が、装備不備・技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県警山岳遭難救助隊員が出動して2人を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

4月5週は7件、5月1週は15件の山岳遭難が発生しました。

態様別では滑落が9件と最多を占め、うち3件が死亡遭難となっています。天候が安定した大型連休ということもあり、各山域で多くの登山者でにぎわい、山岳遭難も前年同期比+24件と増加傾向にあります。
北アルプス槍穂高連峰や後立山連峰等をはじめとする標高の高い山域には、谷筋を中心に雪が残っています。残雪の状況により登山道も変わるため、予定しているコース上に残雪が見込まれる場合は、事前に付近の山小屋等にコース状況を確認するなどしてください。

その他、技量不足や装備不足により下山できず、救助隊員が出動する遭難が多発しています。残雪期は、通常の夏山ルートとは異なり沢筋を直登するため、非常に急峻なルートもあります。そのため、アイゼンやピッケルを装備して、安全に正しく使いこなす技術が必要です。

新緑の季節で過ごしやすい時期ですが、高山にはまだまだ残雪があり朝晩の気温差も激しいことから、装備を整え、余裕のある日程で登山を楽しみましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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