新緑が心地よい山の古刹めぐり 今も昔も変わらない味わいの自家製うどんで一服

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木漏れ日が心地よい季節、奥武蔵で古刹巡り。下山後にたどり着いたのは、素朴な味わいのうどんとスイーツだった。

写真・文=西野淑子

 

写真の説明

竹寺の見事な竹林。散策路が整備されている

ガイドブックの仕事で奥武蔵へ。竹寺から子の権現に縦走した。伊豆ヶ岳から子ノ権現への縦走ルートは好きで何度も訪れているが、竹寺を訪れるのは初めてだった。小殿バス停から山道を進んで竹寺へ。お参りを済ませ、御朱印をいただいてから竹林を散策。見事な竹林の中を歩いているうちに清々しい気持ちになってきた。竹寺は精進料理でも有名。四季の山菜や薬草を取り入れ、竹の器で供される精進料理、いつかいただいてみたい。

竹寺から小さなアップダウンを繰り返しながら山道を進み、子ノ権現にたどり着く。本堂でお参りをし、小さなワラジのお守りを買うのが定番だ。近年は、飯能地方で古くから信仰されている子の権現と竹寺を「霊峰二山」と呼んでいるようだ。霊峰二山をつなぐ縦走で、心身ともに浄化された…ような気がした。

モデルコース:竹寺〜子ノ権現

 

コースタイム:小殿バス停(50分)竹寺(40分)豆口峠(50分)子ノ権現(1時間30分)吾野駅 合計 3時間50分

アクセス:西武池袋線飯能駅からバス50分、小殿下車

古民家で味わう自家製うどんと絶品スイーツ

子の権現でお参りを済ませ、時間は13時過ぎ。浅見茶屋に入れるだろうか。

子の権現から吾野駅に向かう途中に立つ浅見茶屋。コラムでも連載を始めたころに紹介をしている、老舗の茶店だ。名物は素朴な味わいの自家製うどん。歩けば最寄りの吾野駅から1時間かかる山奥にもかかわらず、登山目的でないうどん好きの人たちにも人気が高い。家族で切り盛りする小さな店ゆえに、休日に訪れるとだいぶ待つことも多く、遅い時間に訪れるとうどんが終わってしまっていることもある。

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道沿いに立つ風情あふれる古民家

しかし今日は平日、時間もだいぶ早い。同行のカメラマン郁さんは、浅見茶屋を訪れるのが初めてだという。「おいしいお店なんですよね〜、楽しみです〜」とうれしそうにしている。…こんなにうれしそうにしているのに、満席で入れなかったらどうしよう。少し緊張する。

急ぎ足で下り、お店にたどり着く。車は何台か停まってるけど、外で待っている人がいなくてほっとする。店内に声をかけ、無事入店。ああよかった…。

天気がよいので、外のテーブル席でいただくことにする。郁さんは一番人気の肉汁うどん、私はぶっかけうどんをオーダー。そして忘れてはいけない、食後に天草黒みつきなこアイス。

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昔の暮らしぶりが感じられる店内のしつらえ

安政2年(1855)築の古民家、店内は土間を生かしたテーブル席やカウンター席。広いしつらえでゆったりと食事ができるのがうれしいし、店内に昔の生活用具がさりげなく飾られているのも楽しい。訪れたときは端午の節句の直前、五月人形が飾られていた。

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肉汁うどん(冷)。初めて来たらまずはこちらがおすすめ

さほど待たずにうどん登場。竹の器に盛りつけられた肉汁うどんに、郁さんの目がきらりと輝く。つやつやのうどん、具だくさんの肉汁。一口味わって思い切り笑顔になった。そうだよね、そうだよね。おいしいよね、とニヤニヤしてしまう。うどんがおいしいし、甘辛の肉汁との相性もいいんだよ。

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ぶっかけうどん。いろいろな具とともに味わえる

こちらはお初のぶっかけうどん。うどんの上にかつおぶし、のり、ごま、大根おろし。揚げ玉はサクサク感が楽しめるように別添えになっているのが嬉しいじゃないか。つゆをざっとかけて一口。ふふふ、このうどん、本当においしい。もっちりと存在感のある太めのうどん。シンプルにうどんだけで味わうのが好きだけど、いろいろな具とのハーモニーを楽しむのも楽しいよね。

あっという間にうどんを食べ終えて一息。でも今日はこれで終わりじゃないのだ。

食べ終えたちょうどよいタイミングで「お待ちどうさまでした」と天草黒みつきなこアイスが登場!

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甘みと爽やかさのバランスが絶妙、天草黒みつきなこアイス

浅見茶屋のもうひとつの名物が、天草黒みつきなこアイス。お店の方いわく、いらっしゃったお客さんのほぼ全員が注文するという。自家製の寒天とバニラアイスに、きなこがたっぷりかかっている。

「黒蜜ぜんぶかけていいですかね〜」とうれしそうに言いながら別添えの黒蜜をたっぷりかけて、郁さんが一口。またもや思い切り笑顔。…黒蜜ときなことバニラアイスは相性抜群、美味しくないわけがないのだ。そして自家製の寒天がまたすばらしい。ほどよい弾力、さっぱりとした風味。なんてバランスのよいスイーツなんだろう。食べながら「おいしいよね」の言葉しか出てこない。

お店のみなさまに「おいしかったです、ごちそうさまでした」と声をかけて、お店を後にする。ご主人が笑顔で「また来て下さいね」と声をかけてくださった。

吾野駅に向かう道沿い、山の斜面にシャガが群生していた。初めてお店を訪れたころは先代のご主人が「このあたりは5月になるとシャガがたくさん咲くから。その頃にまた来てね」と来るたびに笑顔で声をかけてくださった。やっとこの時期に来られたなあ。本当にきれいだなあ。幸せな気持ちで駅に向かった。

店名:浅見茶屋

子の権現から吾野駅に向かう道中に建つ茶店。風情あふれる古民家で、自家製うどんやスイーツを味わえる。

電話:042-978-0789

住所:埼玉県飯能市坂石1050

アクセス:西武秩父線吾野駅から徒歩約1時間

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

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