ルポ・奥穂高岳。ガイドツアーで歩いた涸沢・穂高3泊4日

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中部山岳国立公園を間に挟み、松本市街地と高山市街地を繋ぐルートの新たな観光圏としての確立をめざす「松本高山Big Bridge構想実現プロジェクト」。その取り組みの一つとして、2022年9月に、奥穂高岳・涸沢を歩く3泊4日のモニターツアーが松本市アルプス山岳郷により行なわれた。“北アルプスという日本最高峰の山々に立ち入ることへの「理解」や「学び」を得られる旅”をテーマに、上高地~横尾~涸沢~奥穂高岳を登山ガイドとともに歩いた。記事ではツアーの様子をお伝えする。

文=山と溪谷オンライン部、写真=花岡 凌

DAY3:穂高岳山荘~涸沢

翌日の行程はかなりのんびりだ。上高地までのコースタイムは約6時間半なので、1日で下山する人が多いのだが、我々はこの日は涸沢泊まりなのだ。奥穂高で話したおじさんには「ブルジョワなの?」と驚き交じりに言われたが、贅沢には違いない。

時間があるので、展望は望めないものの、涸沢岳に登頂。晴れていれば、北穂高岳方面へ続く険しい岩稜が見えるのだが、この日は真っ白。

DAY3:涸沢岳山頂。なにも見えない!
涸沢岳山頂。なにも見えない!

雨の中、涸沢まで下山した後は、涸沢ヒュッテの部屋や食堂で山の話や仕事の話をしたり、ときおり外に出てみたりと、のんびりと過ごした。3日目ともなると、かなりみんな打ち解けた雰囲気だ。

DAY3:涸沢ヒュッテで山バッジなどのお土産を購入
涸沢ヒュッテで山バッジなどのお土産を購入
DAY3:就寝前まで暖をとりつつ、いろんな話をした
就寝前まで暖をとりつつ、いろんな話をした

DAY4:涸沢~横尾~上高地

最終日は、ついに上高地に下山だ。この日は朝からずっと雨。

雨の日の加集さんおすすめアイテムは折りたたみ傘。ともすれば当たり前のような話だが、実際のところは、登山道では傘は使わない、という人が多い。風が強い稜線や、すれ違いの際に邪魔になる狭い登山道などではNGだが、それ以外の場所ではかなり快適だ。各自おすすめの軽量折り畳み傘の話も盛り上がった。

DAY3:傘がずらりと一列に…
傘がずらりと一列に…

そんな雨の道中のお楽しみが、徳澤園での食事だ。定番の野沢菜チャーハンやソフトクリームをはじめ、近年は新メニューも加わった。窯焼きピザや手作りプリンなど、各自好きなものをたっぷり食べ、上高地までの元気をチャージした。

DAY3:徳澤園の本格的な窯焼きピザ
徳澤園の本格的な窯焼きピザ

明神からは梓川の右岸に渡り、岳沢湿原を経て、河童橋前にゴール。楽しいメンバーとともに過ごした4日間の旅が無事に終わった。

DAY3:雨が降る河童橋前で健闘を称えて記念撮影
雨が降る河童橋前で健闘を称えて記念撮影

登山ガイドと行くツアー登山のススメ


今回の参加者は20代~30代の4名で、全員ツアー登山は初参加だった。出発前には、どんな人が来るのか不安を感じたそうだが、4日間を過ごした後は、すっかり意気投合。登山ガイドから歩行のアドバイスや、コースの知識などを教わりつつ、新しい山仲間と出会って交流を深められる。いつもはソロや友人と、という人も、ツアー登山を体験してみてはいかがだろうか。
登山ガイドと行くツアー登山のススメ
「初のツアー、初の涸沢、楽しかったです。いろんな人の話を聞いて、いろんな山の楽しみ方があるんだなと思いました。自分なりの発見がありながら登れてよかったです!(参加者/イダさん)」
登山ガイドと行くツアー登山のススメ
「技術講習会などは参加したことがありましたが、ツアーは初めてでした。いつもはわからなかったことなどを登山後に自分で調べものをしていたのですが、ガイドさんと登るとその場で聞けて楽しいなと思いました。(参加者/イナバさん)」

「ツアーに参加した人が仲良くなってくれるとうれしいです。2日間だと難しいのですが、4日間あるといいですよね。みんな地を出して、お互い楽しんでいるのがわかります。知らない人と出会ってから、一緒に過ごして、仲良くなる。そういう経験の手伝いができたかなと思います。(登山ガイド/加集さん)」

関連リンク

アルプス山岳郷 https://alps-sangakukyo.jp/

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この記事に登場する山

長野県 岐阜県 / 飛騨山脈南部

奥穂高岳 標高 3,190m

 奥穂高岳は穂高連峰の中央にそびえる盟主である。標高3190mは富士山の3776m、南アルプスの北岳の3192mに次ぐ日本第3位の高峰で、頂上に造られた2mを超す大ケルンの上に立つと第2位になろうかという高峰なのである。しかも堂々と大きい山容がいい。  山頂で綾線が分岐し、南西に延びる岩稜は馬ノ背からジャンダルムの奇峰を経て、間ノ岳、西穂高岳、焼岳へと延びる。  もう1つの岩稜は南東へ吊尾根となってたわみ、前穂高岳、明神岳となって上高地に雪崩落ちていく。  山稜は硬いひん岩(ひんがん、ひんは「王」偏に「分」の字)の破片に覆われ、岩屑の堆積した山だ。南東側は涸沢のカールが削り取った断崖で、南面は岳沢が急角度に落ち込み、上高地や乗鞍岳が見える展望の優れた山頂である。  山頂から100mほど西へ向かってから右に折れる主稜線を、うっかり見落として直進すると急傾斜にセバ谷に落ち込んでしまう。毎年のように事故を起こす「だましの尾根」だ。主稜線を北に下ると白出乗越で、穂高岳山荘がある。  頂上から南西に延びる岩稜は、奇峰ジャンダルムに続いている。前衛峰、門番といった意味のフランス語だが、むしろ独立峰と呼びたい山で、悠々としてとりとめのない奥穂高岳をきりっと引き締めている。  初登頂は明治42年(1909)の鵜殿正雄パーティで、槍ヶ岳への初縦走の途中だった。彼は大正元年(1912)には岳沢から天狗沢に入り、天狗のコルからジャンダルムを経て奥穂高岳の初トレースをしている。穂高岳開拓のパイオニアとして銘記されるべき人である。  穂高連峰の開拓は信州の梓川側が早く、山小屋もほとんど信州人が占めているが、奥穂高岳だけは、白出乗越に飛騨の名ガイド、今田重太郎が小屋を建てて登山者の安全を期した。1度登山者の不始末で全焼したが再建し、現在では近代的な山荘になっている。  一般登山道は涸沢からザイテングラートの岩尾根を登って白出乗越に出、奥穂高岳へ向かう。涸沢から白出乗越まで2時間、それから奥穂高岳頂上まで1時間。  飛騨側からは、新穂高温泉から蒲田川右俣を白出沢出合まで2時間、白出沢を登って白出乗越まで7時間。静かな谷のいいコースで、下りに使えば白出乗越から5時間30分で新穂高温泉に着き、バス停前の無料温泉で山の汗が流せるので、山好きに好評である。  上高地から岳沢を経て前穂高岳、吊尾根、奥穂高岳のコースは9時間で頂上に着く。少しきついが、登り甲斐のある道だ。

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