疲労・体調不良による遭難が増加傾向、ゆとりある計画とこめまな休憩で対策を 島崎三歩の「山岳通信」 第308号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年8月4日に配信された第308号では、疲労や体調不良による遭難が多発している状況を踏まえ、ゆとりある計画、こまめな休憩、意識して水分やカロリーを補給するなどの対策をすすめている。

 

8月4日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第308号では、期間中に起きた21件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

 

  • 7月24日、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、6人パーティで入山した64歳の男性が、桜平に向けて下山中にスリップしてバランスを崩し、転倒・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

八ヶ岳連峰・硫黄岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月1日付

  • 7月24日、北アルプスの唐松岳で、登山案内人としてパーティを引率していた72歳の男性が、下山中に発病して体調不良となる山岳遭難が発生。富山県警ヘリおよび長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月24日、北アルプスの白馬大池で、4人パーティで入山した62歳の男性が、白馬岳から栂池方面へ下山中に靱帯を損傷する山岳遭難が発生。山小屋従業員が出動して男性を救助したのち、自力下山不能のために25日に大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月25日、北アルプスの南岳で、単独で入山した65歳の女性が、槍ヶ岳から南岳に向けて登山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員および岐阜県消防防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 7月25日、黒姫山で、単独で入山した49歳の男性が、山頂から下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。長野中央警察署員および長野市消防局鳥居川消防署員が出動して男性を救助した。

  • 7月25日、北アルプスの横尾谷で、7人パーティで入山した58歳の男性が、涸沢から横尾谷へ下山中に足を痛めて行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員および県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 7月25日、北アルプスの大天井岳で、12人パーティで入山した60歳の男性が、大天井岳に向けて登山中に滑落・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 7月26日、中央アルプスの中岳で、2人パーティで入山した75歳の女性が、千畳敷から入山して中岳山頂付近を登山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。駒ケ根警察署山岳遭難救助隊員および中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月28日、八ヶ岳連峰の根石岳で、学校登山のために入山した14歳の女性が、根石岳から下山中に脱水などで体調不良となり行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 7月28日、北アルプスの針ノ木岳で、単独で入山した79歳の男性が、針ノ木岳から扇沢に向けて下山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリおよび大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

北アルプス・針ノ木岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月1日付

 

  • 7月28日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した46歳の女性が、大雪渓から白馬岳に向けて登山中にスリップし、転倒して負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月29日、御嶽山で、2人パーティで28日から入山していた63歳の男性が、剣ヶ峰山頂から黒沢口に向けて下山中に岩場でバランスを崩して足を負傷する山岳遭難が発生。木曽地区山岳遭難防止対策協会救助隊および県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 7月29日、北アルプスの白馬岳で、3人パーティで入山した74歳の女性が、下山中に発病により体調不良となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月29日、根子岳で、単独で入山した51歳の男性が展望台付近を登山中に発病して倒れて亡くなる山岳遭難が発生した。

  • 7月29日、北アルプスの白馬乗鞍岳で、2人パーティで28日から入山していた68歳の男性が、白馬乗鞍岳を経由して栂池高原に下山中に、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月30日、北アルプスの南岳で、2人パーティで入山した33歳の男性が、天狗原から南岳に向けて登山中に疲労により足を痛めて行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員および県警ヘリが出動して男性を救助た。

  • 7月30日、八ヶ岳連峰の権現岳で、単独で入山した62歳の男性が、権現岳から赤岳に向けて縦走中に足を滑らせ転倒したことにより負傷して、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

八ヶ岳連峰・権現岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月1日付

 

  • 7月30日、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した56歳の女性が、北穂高岳から涸沢に向けて下山中に足がもつれて転倒し負傷する山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊が出動して女性を救助した。

  • 7月30日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、単独で入山した76歳の男性が、福島Aコースを下山中にバランスを崩して転倒し、左目付近を負傷する山岳遭難が発生。木曽地区山岳遭難防止対策協会救助隊員、警察本部山岳安全対策課救助隊員、木曽警察署山岳高原パトロール隊員が出動し、31日に救助した。

  • 7月30日、小川山で、ロッククライミングのために29日から8人パーティで入山した78歳の女性が、ロッククライミング後、廻り目平の岩場から下山途中に足を踏み外して滑落し負傷する山岳遭難が発生。31日に佐久広域連合消防本部消防署員が出動して女性を救助した。

  • 7月30日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、単独で入山した33歳の女性が、木曽駒ヶ岳から木曽福島町方面に下山中にルートを誤って麦草岳方面に進み、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。31日、県警ヘリが出動して女性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月5週は、1件の死亡遭難を含む、21件の遭難が発生しました。県内は梅雨明けとなり、連日厳しい暑さが続いています。標高が高い山域でも、日中は気温が高くなり、疲労による行動不能や、大量の発汗により、循環器系などの疾患リスクが高まります。また、暑さと疲労で集中力が低下することにより、転倒や滑落のリスクも高まります。

登山者の皆さんは、日常生活での疲れを抱えたまま登山に来てはいませんか?夏季の登山では、体調管理を万全にし、ゆとりある計画を立てるとともに、行動中はこまめに休憩を取り、意識して水分やカロリーを補給するなど、暑さ対策をしましょう。

なお、夏季は午後になると、雷が発生する場合があります。稜線の行動は落雷の危険が伴うため、「早出・早着」を心掛け、事前の天気予報で悪天候が予想される場合は、登山の中止や延期の判断をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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