【10月27日更新】南アルプス・北岳ではライチョウが換羽を始め、山麓の広河原は紅葉たけなわ。秋山紅葉情報2023

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シーズン最後の北岳登山&紅葉情報をお届けする

構成=山と溪谷オンライン、写真提供=南アルプス市産業観光部観光施設課

北岳山荘から見る感動的な朝焼け。10月20日撮影
北岳山荘から見る感動的な朝焼け。10月20日撮影

北岳周辺の山小屋は、今シーズンの営業終了近づく

日本第2位の高山、南アルプス・北岳(3193m)の今期登山シーズンの終わりが近づいている。北岳肩の小屋は10月28日まで、両俣小屋は10月30日まで、北岳山荘、白根御池小屋、広河原山荘はいずれも11月4日の宿泊を最後に今シーズンの営業を終了する。6月に始まった北岳の登山シーズンもいよいよ最後の週末を迎える。この時期、北岳山麓の燃えるような紅葉と3000mの稜線付近の新雪が見せる絶景が私たち登山者の心を強く惹きつける。美しい南アルプスの山上はすでに冬の季節にあり、十分な準備と計画をもって最後の北岳登山に臨みたい。また、北岳に登らずとも甲府駅〜南アルプス市営芦安駐車場経由の山梨交通・南アルプス登山バス(11月5日まで運行)に揺られ、広河原に遊び、野呂川周辺の秋の散策を終日楽しむのも編集部のおすすめプランのひとつだ。

北岳稜線はすでに冬山。アイゼン等、万全の装備で

南アルプス市観光施設課と北岳山荘からの情報によると、10月22日(快晴)の北岳山荘付近の最高気温は3℃、最低気温は−10℃となっている。11月4日で営業を終了する北岳山荘と白根御池小屋は、11月1日~4日は素泊まりのみの利用となるので注意したい。山小屋の利用は完全予約で、南アルプス山岳観光予約システム「南ぷすリザーブ」で予約する。

凍結する大樺沢上部。10月23日撮影
凍結する大樺沢上部。10月23日撮影

広河原から白根御池、北岳までの登山道の状況は以下の通りだ。天候が崩れると完全に冬山となるので、山行計画に当たっては天候判断を慎重に行ない、雪山装備を整えて登山をしてほしい。

登山道の状況およびアドバイス

  • 大樺沢左俣の御池分岐~二俣間は通行止め。二俣~八本歯のコル間は例年より浮石・落石多め
  • 大樺沢二俣~八本歯のコル間はザレ斜面、ハシゴなどが続く中級者向けのコース
  • 大樺沢上部は一部凍結。冬靴と6本爪以上のアイゼンを必ず装備
  • 間ノ岳、北岳ともに山頂付近は積雪あり。天候次第ではさらに積雪も
  • 朝晩は氷点下につき、十分な防寒対策を
  • 日没が早くなり活動可能時間が短いので、山小屋に14時到着を目安に登山計画を

稜線のライチョウは換羽を始め、北岳山麓は紅葉まっさかり

その見た目の美しさとは逆に、日一日と厳しい冬山の様相へと変わりつつある北岳だが、北岳山荘のスタッフからライチョウの姿を捉えたすてきな写真が届いた。ライチョウの毛は季節の進行とともに彼らの捕食者から自身を守る「保護色」に変わる。ライチョウは年に3回換羽をするのだが、初冠雪の声を聞くようになると3回目の換羽が始まり、ご覧の写真のとおり、黄褐色の毛と白色の毛が混じったまだら模様のライチョウが姿を見せる。北岳のライチョウは「ケージ保護」などの地道な保護活動により生息数が少しずつ回復している。冬毛に変わるこの時期のライチョウに出会えたら、あなたはラッキーだ。

ライチョウも冬支度を整える北岳稜線とは打って変わり、山麓の広河原は紅葉まっさかり。雪山装備で北岳山頂に登らなくとも、山梨交通の南アルプス登山バスに乗り、雄大な北岳山麓の自然美をバスの車窓で楽しみ、広河原と野呂川周辺の秋色に浸るだけでも一日はあっという間に過ぎていく。あと一週間という限られた時間のなかで、北岳に登るもよし、広河原周辺の落葉広葉樹林の輝きを満喫するのもよしだ。

換羽を始めたライチョウ。北岳山荘付近にて10月23日撮影
換羽を始めたライチョウ。北岳山荘付近にて10月23日撮影
野呂川の秋の渓谷美。広河原にて10月27日撮影
野呂川の秋の渓谷美。広河原にて10月27日撮影

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この記事に登場する山

山梨県 / 赤石山脈北部

北岳 標高 3,193m

 日本で富士山に次いで高い山は白峰の北岳である。白峰は通称白峰三山と称し、3000mを抜く山5座が、南アルプスの北部に連なっている。すなわち北岳(3192m)、中白峰(3055m)、間ノ岳(3189m)、西農鳥岳(3050m)、農鳥岳(3026m)である。  この連山の最北にある故、北岳。当を得た山名である。古くは『平家物語』に「手越を過ぎて行きければ、北に遠ざかりて、雪白き山あり。問へば甲斐の白根と云ふ」と出ているが、果たして東海道筋から見えたであろうか。時代は下がり、『甲斐国志』(文化11年―1814年編)によれば「白峰、此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。国風ニ詠スル所ノ、甲斐ヶ根コレニシテ(中略)南北ニ連ナリテ三峰アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス」と記している。  同書によれば、「山上ニ日ノ神ヲ祀ル。其像黄金ヲ以テ鋳ル。長七寸許、容ルニ銅室ヲ以テス。高貳尺貳寸廣方八寸、其四隅ニ鈴ヲ掛ク、風吹ケハ声アリ」と大日如来を祭ってあることを載せている。明治41年7月、この頂に立った小島烏水は「奉納大日如来寛政七年乙卯六月(1794年)」と彫られた小鉄板のあったことを記録している。となれば『甲斐国志』の記事も本当かも知れない。  明治4年、地元、芦安村の行者、名取直江が里宮、中宮、奥宮を造営して開山したという。  登山者として最初にこの頂を踏んだのはウエストンで、明治35年8月23日のことであった。積雪期の初登頂は大正14年3月22日、京都三高山岳部のメンバーで、西堀栄三郎、桑原武夫、多田政忠、四手井綱彦の4人。野呂川両俣から右俣に入り、間ノ岳を経て頂上に立った。次いで3月28日、山梨の平賀文男が広河原から第2登を飾った。  最近は交通の便がよくなり、おそらく南アルプスの山の中で、一番人気のある山ではないだろうか。登山基地の広河原まで車で入れば、1泊2日でゆっくりと往復でき、雪渓あり、お花畑あり、しかも展望絶佳ときている。  展望は南、眼前にどっかと腰をすえた間ノ岳、これに重なり合うは、塩見岳や悪沢岳。南東の櫛形山の上に富士山、東側には鳳凰三山の上に奥秩父。その左には八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。遠く白馬三山から槍・穂高、その左にずんぐりと仙丈ヶ岳、御岳山、中央アルプスが堪能できる。  登山コースは広河原から大樺沢二俣、小太郎尾根経由で6時間、同じく二俣から八本歯のコル経由で5時間強の登りで登頂可能。

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