北アルプスで滑落や転倒による遭難が続発、集中力を切らさずに行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第314号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年9月14日に配信された第314号では、北アルプスにおける滑落や転倒による遭難が相次いでいる現状について取り上げ、集中力を切らさないようにゆとりを持った行動をすることを提言している。

9月14日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第314号では、期間中に起きた6件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月8日、北アルプスの燕岳で、単独で6日から入山していた47歳の女性が、7日に山小屋に宿泊中のところ、体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。8日、安曇野警察署山岳遭難救助隊員および警察本部山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月9日、南アルプスの甲斐駒ヶ岳で、単独で入山した70歳の男性が、駒津峰から甲斐駒ヶ岳山頂へ向けて登山中に岩場で足を滑らせて転倒して負傷する山岳遭難が発生。伊那警察署山岳高原パトロール隊員および南アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して県警ヘリで男性を救助した。

  • 9月10日、北アルプスの五竜岳で、3人パーティで9日から入山していた61歳の男性が、遠見尾根を下山中に滑落する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が救助活動し、12日に長野県消防防災ヘリにより男性を救助したものの死亡が確認された。

  • 9月10日、北アルプスの前穂高岳で、6人パーティで9日から入山していた47歳の女性が、明神岳から前穂高岳経由で上高地へ下山中にバランスを崩し、滑落して負傷する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊および北アルプス南部地区山岳遭難対策防止協会救助隊が救助活動後、11日に長野県消防防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月10日、北アルプスの奥穂高岳で、単独で9日から入山していた54歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けてザイテングラードを下山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで男性を救助した。

  • 9月10日、四阿山で、3人パーティで入山した64歳の男性が、山頂から下山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。上田広域消防本部消防署員が出動して消防ヘリで男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

9月2週は、6件の遭難が発生し、北アルプスにおける滑落や転倒による遭難が相次いでいます。
北アルプス槍・穂高連峰や後立山などでは、ちょっとしたスリップやたった一歩バランスを崩して転倒や滑落をすれば、場所によっては、大ケガや命を落とす致命的な遭難につながってしまいます。下山するまで集中力を切らさないようにこまめに休憩を取り、ゆとりをもった行動を心掛けてください。
登山道は、岩や木の根、石など足場が不安定なところがあるため、日頃から登山道を意識し、里山などで歩き慣れておくことも必要です。

9月に入り、標高の高い山域では、徐々に最低気温が低くなり、朝晩の冷え込みが厳しくなります。
この時期の登山は、行動中に汗をかくと、汗冷えによって低体温症に陥ることもあります。休憩中は防寒着を羽織ったり、目的地に到着した際は、汗で濡れた衣服をすぐに着替えるなど、低体温症の予防にも気を付けましょう。
日帰り登山を計画されている方も、万一に備えて必ず防寒着・ヘッドランプ・ビバークセット(ツエルト、非常食・飲料など)を携行してください。

9月3週末は、三連休になります。長野県の山へ登山を計画されている方は、ゆとりある計画を立て、事前に天気予報を確認し、登山の鉄則「無事、下山する」を念頭に安全を第一に心掛けた行動をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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