緊張が緩んだ瞬間に遭難は発生しやすいことを理解し、下山まで慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第315号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年9月21日に配信された第315号では、連休もあって週末を中心に遭難が多発したことについて取り上げ、遭難の多くは緊張が緩んだ時に発生しやすいことを指摘し、慎重な行動を意識することを促している。

 

9月21日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第315号では、期間中に起きた20件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月12日、車山で、9人パーティで入山した72歳の女性が、山頂付近を登山中にバランスを崩し、転倒して負傷する山岳遭難が発生。諏訪広域消防本部特別救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月12日、北アルプスの唐松岳で、単独で入山していた49歳の男性が、11日に白馬岳周辺の山小屋に宿泊したのち、翌12日朝に唐松岳方面へ向かって縦走中のところ、下山予定日を過ぎても帰宅せず行方不明となっていることを確認。大町警察署山岳遭難救助隊員などが男性を捜索中している。

  • 9月14日、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、2人パーティで入山した67歳の男性が、木曽駒ヶ岳へ向け登山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。駒ヶ根警察署山岳遭難救助隊員および中央アルプス地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月14日、北アルプスの赤岩岳で、登山者が西穂高岳から赤岩岳に向けて縦走中の滑落する男性を目撃。岐阜県警ヘリが出動して捜索したところ男性を発見し、16日に県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。男性は単独で入山していた61歳の男性。

  • 9月14日、北アルプスの湯俣川で、3人パーティで入山した20歳の男性が、髙瀬ダムから入山して湯俣川を沢登り中、落石により負傷する山岳遭難が発生。群馬県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月14日、北アルプスの白馬乗鞍岳で、単独で栂池高原から入山した56歳の女性が、白馬乗鞍岳で疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月15日、北アルプスの小嵩沢山で、単独で島々谷から入山した64歳の男性が、小嵩沢山から霞沢岳に向けて登山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス小嵩沢山での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月19日付
  • 9月16日、北アルプスの燕岳で、2人パーティで中房登山口から入山した48歳の男性が、合戦尾根を下山中にバランスを崩して滑落、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月16日、北アルプスの槍ヶ岳・北鎌尾根で、単独で入山した43歳の男性が、北鎌沢を経由して槍ヶ岳に向け登山中に足を踏み外してバランスを崩して滑落し負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月17日、北アルプスの前穂高岳で、単独で入山した57歳の男性が、岳沢に向けて重太郎新道を下山中に登山道から滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス前穂高岳での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月19日付
  • 9月17日、北アルプスの中山で、2人パーティで16日から入山していた47歳の女性が、中山から東天井岳に向けて縦走中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

北アルプス中山での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月19日付
  • 9月17日、北アルプスの爺ヶ岳で、2人パーティで16日から入山していた46歳の女性が、爺ヶ岳を経由して柏原新道を下山中にバランスを崩して転倒し負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月17日、北アルプスの前穂高岳で、4人パーティで入山した61歳の男性が、奥又白から前穂高岳の岩場に向けて登山中に落石を受けて負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス前穂高岳での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月19日付
  • 9月17日、北アルプスの涸沢岳で、北穂高岳から涸沢岳にむけて縦走中の登山者が滑落する様子が目撃され、県警ヘリが出動し登山者を救助した。男性は単独で入山していた50歳の男性。

北アルプス涸沢岳での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月19日付
  • 9月17日、南佐久郡川上村の烏帽子岩で、4人パーティでロッククライミングのため入山した54歳の女性が、懸垂下降中にバランスを崩して転落し負傷する山岳遭難が発生。県防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月17日、北アルプスの常念岳で、単独で16日から入山していた60歳の男性が、蝶ヶ岳から常念岳へ縦走中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。救助活動を行なった。

  • 9月17日、北アルプスの槍ヶ岳・北鎌尾根で、3人パーティで入山した54歳の女性が、北鎌沢を経由して槍ヶ岳に向けて登山中に、浮き石をつかんで転落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月17日、北アルプスの前穂高岳で、3人パーティで16日から入山していた6歳の男児が、前穂高岳に登頂後に重太郎新道を岳沢に向けて下山中に技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。警察本部山岳遭難救助隊員が同行して近くの山小屋まで救助した。

  • 9月18日、北アルプスの涸沢で、単独で17日から入山していた70歳の男性が、横尾から涸沢に向けて登山中にバランスを崩して滑落し、負傷する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊隊員が同行下山して男性を救助した。

  • 9月18日、北アルプスの涸沢で、4人パーティで16日から入山していた55歳の男性が、テントで宿泊中、腰痛のため行動不能となる山岳遭難が発生。19日に県警ヘリで男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

9月3週は、1件の死亡遭難を含む20件の遭難が発生し、北アルプスでの遭難が多発しました。県内の山岳遭難発生件数は、前年同期比で+18件と大幅に増加しています。

3週は、週末を中心に遭難が多発し、転倒や滑落による遭難が大半を占めましたが、疲労や技量不足などによる行動不能遭難も発生しています。そのほか、遭難には至っていませんが下山中に足をくじいてしまい、テーピングなどで固定して自力下山した方の話では、原因は「危険箇所を通過後、目的地が見えて、“ほっ”としてバランスを崩してしまった」とのことです。遭難の多くは、緊張が緩んだ時に発生しやすいので、こまめに休憩を取るとともに、慎重な行動を意識しましょう。

3週は、バリエーションルートでの遭難が2件、クライミング中の遭難も1件発生しました。バリエーションルートでは、体力はもちろんのこと、それに加えて登攀技術・経験・ルートファインディング、判断力が求められるため、充分な下調べをし、自身や仲間の技量などに見合った計画を立てましょう。

標高の高い山域では、日没が早まり朝晩の冷え込みも徐々に厳しくなってきています。汗や雨で濡れると、低体温症に陥ることもありますので、着替えや防寒着などを活用して防寒対策をしましょう。

登山は、非日常のレジャーですが、思いがけないケガやトラブルはつきものです。登山におけるリスクを認識した上で、無理のない行動をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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