寒さや防風対策のために、ダウンやフリース、手袋などの装備を携行しましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第316号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年9月27日に配信された第316号では、県内は徐々に気温が下がり、標高の高い山域では氷が張るほど冷えてきていることを説明。寒さや防風対策のために、ダウンやフリース、手袋などの装備の携行を促している。

 

9月27日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第316号では、期間中に起きた6件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月19日、京ヶ倉で、単独で16日に入山したと思われる54歳の男性が、19日に行方不明となっていることを確認。安曇野警察署山岳遭難救助隊員などが捜索を行なっている。

  • 9月20日、北アルプスの爺ヶ岳で、2人パーティで19日から入山していた81歳の男性が、山頂から柏原新道を下山中に発病して体調不良となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助したものの、21日に搬送先の病院で死亡が確認された。

  • 9月21日、中央アルプスの空木岳で、2人パーティで20日から入山していた74歳の男性が、山頂から池山尾根を下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。駒ケ根警察署山岳遭難救助隊が出動して男性を救助した。

  • 9月23日、北アルプスの乗鞍岳で、8人パーティで入山した59歳の男性が剣ヶ峰から畳平に向けて下山中に転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 9月24日、北アルプスの白馬岳で、単独で23日から入山していた65歳の男性が、白馬大池から白馬岳に向けて縦走中、浮石によりバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して県警ヘリで男性を救助した。

北アルプス白馬岳での遭難現場の様子/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)9月25日付
  • 9月24日、北アルプスの前穂高岳で、単独で23日から入山していた24歳の男性が、明神岳から前穂高岳に向けてバリエーションルートを縦走中に膝をひねり負傷して、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

9月4週は、1件の死亡遭難を含む6件の遭難が発生しました。9月に入ってから、毎週死亡遭難が発生しています。

京ヶ倉は人気のある里山ですが、「馬の背」と呼ばれる場所は登山道の両側が絶壁で切れ落ち、険しくなっています。里山は標高が低いため、危険箇所が少ないイメージを持たれがちですが、急斜面での滑落や道迷いなど多くのリスクが潜んでいますので、行動中は慎重な行動を心掛けましょう。

空木岳の遭難は、長時間行動していたことにより日没となり、さらに疲労も蓄積して行動不能となってしまった事案です。遭難者は、雨で体が濡れて低体温症の危険もある状況でしたが、救助隊が夜間出動したことにより無事救助されました。
登山中における夜間行動は、視界が利かないだけでなく、気温が下がり体が冷えるなど多くのリスクをもたらします。
万一、予定していた行動よりも大幅に遅れてしまったり、悪天候に見舞われてしまったときには、安定した場所や風雨をしのげる場所でビバークする判断も必要です。

県内では、徐々に気温が下がり、標高の高い山域では、最低気温が2度となり氷が張った場所もありました。
日中は日が当たれば暖かく感じることもありますが、稜線上で風に吹かれると体が冷えて、手がかじかんだり寒さで足が震えるなど行動にも影響が出てしまうこともあります。
登山を計画されている方は、普段携行している装備にプラスして、「寒さ」や「防風」対策にダウン、フリース、手袋などの装備を携行しましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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