過去の体力を過信せず、現在の体力や体調を考慮した上での登山を 島崎三歩の「山岳通信」 第317号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年10月5日に配信された第317号では、高齢の登山者の遭難事故について言及。過去の体力を過信せず、現在の体力や体調を考慮した上で登山を楽しむようアドバイスしている。

 

10月5日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第317号では、期間中に起きた10件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月16日から、単独で京ヶ倉に入山した54歳の男性が、9月19日に行方不明となっていることを確認した山岳遭難事故。安曇野警察署山岳遭難救助隊員などが捜索を行なっていたところ、21日に捜索中の警察本部機動隊員および安曇野警察署山岳遭難救助隊員が登山道から外れた山中の斜面で男性の遺体を発見。県警ヘリで収容して、身元が判明した。

  • 9月25日、北アルプスの小蓮華岳で、3人パーティで23日から入山していた49歳の女性が、25日に白馬岳から白馬大池に向けて縦走中に足を滑らせて転倒して負傷する山岳遭難が発生。県消防防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月25日、北アルプスの天狗沢で、2人パーティで入山した65歳の女性が、西穂高岳から奥穂高岳に向けて縦走中に転倒して負傷したために、同行していた65歳の男性と天狗のコルから天狗沢を下山したものの途中で道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊隊員が出動して2人を救助した。

  • 9月26日、北アルプスの涸沢で、単独で25日から入山していた73歳の女性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中にバランスを崩して転倒し、負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊隊員および県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 9月26日、北アルプスの前穂高岳で、単独で24日から入山していた50歳の男性が、奥穂高岳から岳沢に向けて重太郎新道を下山中にバランスを崩して滑落し、負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊隊員および松本警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月27日、八ヶ岳連峰の西岳で、2人パーティで入山した49歳の女性が、西岳から不動清水に向けて下山中に疲労により体調不良となり、行動不能となる山岳遭難が発生。諏訪広域消防特別救助隊員および茅野警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 9月28日、北アルプスの槍沢で、2人パーティで25日から入山していた70歳の男性が、槍沢から上高地に向けて下山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員および松本警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月28日、北アルプスの涸沢で、16人パーティで27日から入山していた73歳の男性が、横尾から涸沢に向けて登山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員、長野県山岳遭難防止常駐隊員および北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月28日、八ヶ岳連峰のにゅうで、単独で入山した73歳の男性が、にゅうに登頂後に下山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。29日、佐久警察署員および警察本部山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 9月30日、北アルプスの横尾本谷で、3人パーティで入山した65歳の男性が、本谷右俣から南岳に向けて登山中に浮き石をつかんで滑落して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス・横尾本谷での遭難現場/長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況(週報)10月2日付
  • 9月30日、恵那山で、単独で入山した28歳の男性が、山頂から下山中につまずいてバランスを崩して転倒し、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

9月5週は、10件の遭難が発生しました。
9月は、48件の遭難が発生し、うち半数以上が滑落、転倒によるものです。また、10月1日現在では、前年比+19件と大幅に増加傾向にありますので、安全を心がけた登山をお願いします。

5週は、70歳代の登山者による道迷いや発病などの行動不能遭難が4件発生しました。登山は、幅広い年代に親しまれるレジャーですが、コースによってはマラソンと同じくらい負荷のかかるスポーツでもあります。持病をお持ちの方は、事前に病院に相談し、自身に見合った山域を選び、無理のない行動を心掛けましょう。
若いときに登られていた方からは「過去に登ったことがあるから・・・」といったような言葉を耳にしますが、体力を過信せず、現在の体力や体調を考慮した上で登山を楽しみましょう。

今週末は、三連休となります。県内の山域では、徐々に紅葉が色づき始め、見頃となるところが多くなり、紅葉を見に登山を計画されている方が多いと思います。
週末の天気は、秋雨前線の影響で気温が下がり、天候が安定しない予報となるため、標高の高い山域では、冬並みの寒さとなるところもあります。事前に天気予報を確認し、悪天候が予想される場合は、登山を中止する判断も大切です。
日没も早まってきていますので、登山の鉄則「早出・早着」を心がけ、日帰り登山であっても防寒対策装備とビバーク装備は必ず携行しましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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