抜群の使いやすさ! 最新型ヘッドランプ ペツル/アクティック コア|高橋庄太郎の山MONO語りVol.105

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山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、ペツルの「アクティック コア」です。

文・写真=高橋庄太郎

照射レベルごとの光の違い

では、光の違いを見てみよう。

ボタンを1回押した状態がこちら。

照射レベルは「弱」で、照射力は7ルーメン、照射距離は10m、照射時間は100時間。

ボタンを2回押すと、照射レベルは「中」になる。

照射力は100ルーメン、照射距離は60m、照射時間は7時間だ。

ボタンを3回押すと、照射レベルは「強」に。

これで照射力が最大の600ルーメンになり、照射距離は115m、照射時間は2時間だ。

この最大600ルーメンというのは、コアを使ったときのスペックである。コアではなく、単4電池3本の場合は450ルーメン。450ルーメンは姉妹モデル、アクティックの最大の光の強さでもあるが、そのアクティックもコアを使えば最大600ルーメンにアップする。つまり、コアのほうが単4電池3本よりもパワーがあるということ。なお、乾電池を使った際の最大450ルーメンのときは、照射距離は100m、照射時間は2時間だ。

このような光の強さの違いは、アクティック コアがバッテリーに合わせて自動的に判断している。このあたりが“ベーシックでいて高機能”な わけだ。

便利な蓄光リフレクターと赤色光

アクティック コアのライトの周りには蓄光リフレクターが使われている。

そのため、ライトを消しても薄ぼんやりとグリーンの光を放っている。“蓄光”ゆえにいつまでも明るいわけではないが、ライトを消してもヘッドランプがどこにあるのかわかりやすく、とても便利である。

ボタンを長押しするとアクティック コアのライトは、赤色光に変身する。目を刺激しない優しい光で、消灯して真っ暗になった山小屋の中などでは就寝中の他の人に迷惑をかけずにすむ。

また、さらにもう一度押すと、赤い光のままピカピカと点滅。これは700m先からでも視認できる明かりだといい、しかも400時間も光をキープする。緊急時はシグナルライトとして活躍してくれるだろう。保管中に間違って点灯しないように、ロック機能もあることもお伝えしておきたい。

ナイトハイクでテスト。実力は?

このような機能をもつアクティック コアの実力を確認すべく、初冬のある日、ナイトハイクを行なった。

新月に近い夜だったが、街がそれほど遠くはないため、頭上の空はぼんやりと明るい。

だが、肉眼で歩けるほどの光ではなく、凹凸の激しい地面の上ではヘッドランプなしで行動できなかった。

そんなわけで、以下は照射レベル「弱」で見た森の中だ。

周囲の木立はほとんど見えない。

次に「中」。

これで樹木の本数が数えられる程度の明るさとなった。

最後に「強」。

強力な明かりで、背の高い樹木だけではなく、低木や草の様子もわかる。

今度は視線を地面に移し、再び「弱」。

薄っすらと地面の様子はわかるが、これでは歩きにくくて危険だ。

次に「中」。

石や草の状態がわかるようになり、これなら安心して歩けそうである。

最後に「強」。

思いのほか「中」とは大きく変わらないが、場所によっては光が強すぎて地面の細かな凹凸が見えにくくなることさえあった。

改めて「弱」。

7~8m先に道標があるはずなのだが、よくよく注意しないとわからない。

次に「中」。

これだけの光があれば、道標の場所もしっかりとわかる。

最後に「強」。

山中でいちばん視認性がよいのは、やはり「強」だ。顔さえ上げて歩いていれば、道標を見失うことはないだろう。

とはいえ、山中の夜間行動でもっとも有用なのは照射レベル「中」だった。「弱」ではあまりにも視覚から得られる情報が少なく、異物を踏んで転んだり、道標を見失ったりする可能性が高い。一方、「強」は“前方”に対しては「中」以上によく見えるが、“下方”となると明るすぎて、地面が白飛びする場合がある。至近距離の地面を見るのであれば、「中」のほうがかえってよい。

「強」は2時間しかもたないが、「中」であれば7時間。行動休止中は「弱」にすれば、一晩は使える。薄暗い光であっても、夜にトラブルが発生したときなどは朝まで充分に役立ってくれるはずだ。

バッテリーの残量がわかるように、アクティック コアにはインジケーターもつけられている。ライト部分の角にあるグリーンの光の部分だ。

インジケーターは点灯時と消灯時に機能し、バッテリーにまだ余裕があればグリーンで、消耗していくとオレンジになり、最後はレッドに。残量の目安として有用だ。

さて、光の角度を360度、変えられるのがアクティック コアである。

通常、光の向きを目線よりも上にして使うことはまずない。しかし夜間の動物や昆虫観察の際などにはあり得るかもしれないと、ライトを上に向けた写真も撮影してみた。

その結果、思いがけず「弱」「中」「強」の差がもっともよくわかる画像になったので、ここでお見せしておきたい。

まずは「弱」。

ほぼ、何も見えない。

次に「中」。

これで10m以上もある樹木の上のほうまで見えてきた。

最後に「強」。

おお、「中」と「強」がこんなに使うなんて! 「強」はたんに遠くまで光が届くだけではなく、これほど広範囲を明るくすることができるわけである。また、光にムラがなく、きれいに照射できていることもよくわかった。

アクティック コアはバッテリーの種類を自動判断するなど、ベーシックでいながらも現代的なヘッドランプである。最近は高度過ぎるほどの機能をもつヘッドランプも登場しており、山岳レースやアルパインクライミングなどの分野では活躍しているが、一般登山の分野では不要な機能がないわけでもない。その点、まさに“必要充分”な機能を備えているのがアクティック コアなのである。

テント周りではバッテリーが長持ちする「弱」、夜間行動中は「中」、道迷いしそうな危険箇所などの要所では「強」と使い分け、小屋内では「赤」も利用できる。緊急時には「赤点滅」も用意されている。光にムラがないのも長所だ。光の強さのわりにバッテリーが長持ちするうえ、乾電池が使えるのもありがたい。特別に変わった機能があるわけではないが、ベーシックな機能をブラッシュアップさせているのがすばらしい。

360度回転の利便性

最後に、僕が便利だと感心した“機能”をお伝えしよう。それは「本体が360度回転して、上から下まで照らせる」ことに起因するポイントだ。

下の写真のようにボタンを上にして使うのが“通常”だろう。それはヘッドバンドの「PETZL」の文字が天地正しく見えることからも明らかである。

この場合、ボタンは人差し指で操作することになる。

次の写真は、アクティック コアを上下反対にした状態だ。

こうするとボタンは下の位置になり、親指で押せるようになる。

さて、僕はなにを言いたいのか?

本体が360度回転するアクティック コアは、たとえ上下反対のままで頭に取り付けたとしても、まったく支障なく前方も下方も照らせる。ただ、ボタンの位置が上にあるか、下にあるかの違いだけだ。

大半のヘッドランプは操作ボタンが“上”にあるが、ボタンは下にあるほうが使いやすいと僕は考えている。頭につけたヘッドランプに手を伸ばしたとき、人差し指よりも親指のほうが力は入りやすく、スムーズに操作できるからだ。少なくても僕の場合、アクティック コアは上下反対に取り付けたほうが、むしろ断然使いやすかった。

また、ヘッドランプというものは、とかく上下反対に間違って頭に取り付けやすい。とくに暗いときは間違えやすく、頭に取り付けてから光の方向を調整しようとしたとき、下方を照らしたいのに角度が上にしか向かず、わざわざ頭から外して付けなおさねばならなかった……という失敗は誰でも経験があるだろう。しかしこれなら適当に頭に取り付けても絶対に光を下方に向けられる。ただ、ボタンを人差し指で押すか、親指で押すかの違いだけだ。本質的な機能とはかけ離れた点かもしれないが、僕はこんな点も大いに気に入った。

ペツルには本体が同様に360度回転するヘッドランプが複数ある。そのなかで最も高機能なモデルがアクティック コアだ。現在いちばん山で使いやすいヘッドランプのひとつであることは間違いなさそうである。

今回のPICK UP

ペツル
アクティック コア

ペツル/アクティック コア
重量 88g
価格 12,540円(税込)
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プロフィール

高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)ほか著書多数。
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