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早池連山で冬期用マットをチェック! シートゥサミット/コンフォートプラスインサレーションレクタンギュラーマット

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2015年10月25日

今月のPICK UP シートゥサミット/コンフォートプラスインサレーションレクタンギュラーマット [キャラバン]

価格:2万2500円+税
重量:約825g
収納サイズ:直径12cm×23cm
※スタッフバッグ、リペアキット付き


メーカーサイトへ >>

誰もいない山麓のキャンプ場から早池峰をめざす

今年は紅葉の訪れが早い。山域にもよるが、例年よりも1~2週間は前倒しになっているようで、ここ東北の北上高地に位置する早池峰山も同様だった。

午前中に登山口まで移動してきた僕は、河原坊キャンプ場で早速テントを張る。早池峰山は日帰り登山が充分に可能な山であり、僕のようにわざわざテント泊を行なう者は少ない。森の中の一部が平らになっているだけの野趣あふれたテント場はじつにひっそりとしており、ちょうど美しい紅葉に包まれていた。

僕はテント泊装備をテントの中に入れると、小型パックだけで山頂を目指した。

あいにく天気はよろしくない。それでも昼近くまでは雨が降っていたのだから、今は濃霧になっているだけ上等である。

コメガモリ沢沿いに標高を稼いでいく。

登山としては遅めの時間に出発したため、前方には誰もいない。すれ違った人ですら、山歩きをほぼ終えて登山口付近にいた数名のみであった。

なんとも印象的な打石を通過。

天気がよければ周囲の景色がすばらしいはずだ。もったいないな。

あっという間に山頂に到着。一般的なコースタイムが3時間半ほどらしいが、わずか1時間少々であった。それにしても霧で濡れた体が強風にさらされると、非常に寒い。体感温度は軽く0℃を下回っているだろう。

この後、山頂の避難小屋を管理している方と、しばし雑談。風が当たらない快適な小屋のなかで、早池峰山に関するいろいろなことを教えていただき、とても有意義だった。

登りとは異なるルートで小田越に向かって下山していくと、やっと他の登山者を発見する。

霧が薄れ、いくぶんか視界が効いてきたのがうれしい。あまり山の雰囲気を楽しめたとはいえない早池峰山だったが、そこかしこで垣間見た草原や岩肌は充分にこの山が本来持っている魅力を伝えてくれ、僕は早くもいつか季節を変えて訪れたいと思っていた。高山植物で有名な山だけに、やはり初夏だろうか。

テント場に戻ると、相変わらず僕以外にキャンプをする人はいない。これは静かな夜になりそうだ。

2層構造の冬期用マットの構造は?

さて、僕が今回テストのために持ってきた山道具は、シートゥサミットの「コンフォートプラスインサレーションレクタンギュラーマット」。今年から日本でも展開し始めた最新のスリーピングマットシリーズのなかで、もっとも断熱性が高いモデルだ。内部にはアルミフィルムを使用した不織布「Exkin Platinum」と、中空の中綿である「サーモライト」という2種の反射断熱材が使われており、厳冬期の雪山にも対応できる断熱性を持っている。今回の山行にはオーバースペックともいえる機能性だ。

実測で収納時は長さ23cm、直径11cmだった。

カタログ的な収納サイズは長さ23cm、直径12cmであり、実際はよりコンパクトに収納できるようだ。

使用時のサイズは、183cm×56cm。

だが空気を抜くと216cm×68cmに広がる。上の写真の左(空気を入れた状態)と右(抜いた状態)を比べると、幅が大きく変わっていることがわかるはずだ。このように総面積が広く、断熱材が使われていることもあり、重量は825gとなるが、雪山でも使える断熱性を考えれば、さほど重いわけではない。

ちなみに、このモデルにはいわゆる「マミー型」も用意されている。肩が広く、足元は絞られており、重量は100g軽くなる。だが、僕は個人的な好みで長方形のこの「レクタンギュラー型」を使った。このほうが寝返りを打ったときにマットの上から足がずり落ちにくく、寒い時期でも安心して使えるからだ。

このマットは最新式だけあり、面白い工夫がいくつも採用されている。例えば、空気を出し入れするバルブは2重構造だ。

空気を入れるときは上のバルブだけを外す(写真左)が、このバルブは空気の通りが一方通行であるため、いったん内部に入った空気は抜けてこない。だがバルブの内側にあるオレンジ色の小さな弁を押すと少しだけ空気を抜くことができ、寝心地を微調整できる。一方、使用後は口径が大きい下のバルブもいっしょに外す(写真右)。すると、空気が一気に抜けて小さくなってしまう。これが非常にスピーディーで、収納時の面倒な作業がとてもラクになるのだ。

さらに、この2重構造のバルブは、マットの裏表の2カ所につけられている。

これはどういうことか。じつはこのマット、内部全体もアッパー層とボトム層に分けられており、それぞれに空気を入れる仕組み。表面に穴が空き、もしも一方の層が完全に潰れたとしても、もう一層は弾力を保ち、最低限の寝心地は確保するというアイデアなのである。

こちらは、試みに片方の層だけに空気を入れてみた状態だ。

一方から完全に空気が抜けていても、充分に厚みを保っていることがわかる。ただし、空気の層が2つからひとつになるため、断熱性は格段に落ちるに違いない。

そして一方の層に過度に空気を入れてしまうと、マットはかなりの波を打つ。

これでは体が心地よく支えられない。寝心地を良くするためには、2層へ均一に空気を入れるべきだろう。

実際に使ってみてわかる使い心地

ところで、このときにマットに合わせた寝袋は、同社の「マイクロMCⅢ」というモデルであった。快適に使用できる設定温度は4℃である。

今回の夜の気温はちょうど4〜5℃くらいだった。もしも寒くて眠れないことがあれば、マットの断熱性がイマイチだと考えることができそうだ。

強い雨が再び降り始めた。テントの下に水が流れ、マットがない部分はとても冷たい。水は空気に比べて20倍以上の熱伝導率があり、たとえテントの生地越しであっても、どんどん体温を奪われていく感じがする。

だがこの夜、僕は途中で一度も起きることなく、すっかり熟睡してしまった。「就寝中」のマットの弾力性と断熱性はまったく問題ないようだ。ただし、それはあくまでも就寝中のこと。寝る前にテント内で寛いでいたときには、いくらかの問題を感じた。ずばり「厚み」が足りないように思うのだ。

このマットの厚みは6.3cm。本来ならば、充分すぎるともいえるほどである。

上の写真は、マットを斜め横から撮影した状態。これを見るとわかるように、たしかにいちばん厚い部分は6cm以上だ。だが弾力性を高めるために取り入れた「エアスプリングセル」という凹凸の構造を持つために、薄い部分は半分ほどの厚みになってしまう。このため、テント内で胡坐をかいて体重がお尻の部分にかかるような座り方をすると、マットが潰れて体が地面に接してしまう。肘をついて寝転んでいるときも同様である。こうなると地面の冷たさがダイレクトに伝わるようになり、どうしてもひんやりと感じるのだ。

このマットは断熱性能を表す「R値」でいえば5もあり、厳冬期の雪山でも対応できる断熱性をもっている。しかしそれは寝転んでいるときの話であり、座っていると少々冷たさを感じるかもしれない。

エアスプリングセルに関して、もうひとつ気になることがある。この凹凸部分に細かなモノがたまりやすいということだ。

上の写真のように、今回はダウンの中綿や埃のようなもので、とくに支障があるわけではない。だが、これが雪だったらどうだろうか? 雪山でテントを張っていると、出入りの際に内部に多少の雪が入り込むのは避けられない。マットの上に雪がかかるのも当たり前だが、そのまま眠ると体温で雪が溶け、寝袋が水分で濡れてしまう。だから就寝前にマットの上の雪を払い落としておく必要がある。しかしマットに深い凹凸があると、雪をとるのがかなり面倒そうなのである。

最後に触れたいのは、表面生地のことだ。このマットには表裏ともに40Dの繊維を使った薄いリップストップナイロンが使われ、その外側には耐久性アップと滑り止めの効果があるPUコーティングがなされている。イメージ以上に強靭さを感じる素材となっており、とても好感が持てる。金属製のギアなどを引っかけない限り、破損の心配をしなくてよいだろう。しかも先に述べたように内部は2層。たとえ何かのトラブルがあっても、最低限の暖かさを保てるということは、これからの季節で最優先したいことである。

標高が低い場所の紅葉も終わりに近づき、山はますます寒くなっていく。

コンフォートプラスインサレーションレクタンギュラーマットには、いくつかの問題点がないわけではない。だが、暖かさへの安心感がとても高いのはありがたいことだ。これは冬山で使うマットの選択肢のひとつになりそうである。

テント用品 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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