一歩のつまずきが命取りになることも。アイゼン歩行は確実に
アイゼン歩行は雪山に登る上で欠かせない技術だ。雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、アイゼン歩行の基本を紹介する。知識を得たら安全な斜面で繰り返し練習して、確実な歩行技術を身につけよう。
文=野村 仁、イラスト=江崎善晴、イメージ写真=PIXTA
基本のアイゼンワーク
ピッケルを手に持ち、フラットフッティングで登り下りする。斜面の形に応じてさまざまに体勢を変えていく。
直登・直下降
比較的緩やかな斜面では、両足のつま先を平行にそろえて登り下りする。傾斜が急になってきたら、斜度に応じてV字につま先を開き、靴底を雪面にフラットに置いて登る。つま先を開く角度が大きくても、安定して立っていられるなら問題ない。
下りはつま先を正面前に向け、ピッケルを真下に突き刺せるように構え、両足の間隔を約10cmあけて下る。
【まっすぐに登る(直登)】
①ピッケルと反対側の足で支え、一歩前へ
②もう一歩前へ
③ピッケルを突き替えて①へ戻る
【まっすぐに下る(直下降)】
①ピッケルと反対側の足で支え、一歩前へ
②もう一歩前へ
③ピッケルを突き替えて①へ戻る
斜登高・斜下降
斜登高・斜下降ではピッケルを山側の手に持つ。そして、山側の足のつま先を進行方向に向け、谷側の足は谷側へ少し開いたV字にする。靴底を雪面にフラットにおいて、10本の爪が雪に刺さるようにする。両足のかかとの間を約10cmあけて運ぶ。
一定距離を進むと方向転換とピッケルの持ち替えが必要になる。方向転換はとくに決まった方法はなく、安定した形でできればよい。方向転換のポイントで一時停止し、山側の真横にしっかりとピッケルを突き刺して、それを支点にしながら方向転換する。転換後は逆の手にピッケルを持ち替える。
【斜めに登る(斜登高)】
①ピッケルを一歩前の位置にしっかり刺す
②谷側の足を一歩踏み出す
③山側の足も一歩踏み出す。安定したらピッケルを突き替えて①に戻る
【斜めに下る(斜下降)】
①ピッケルを一歩前の位置にしっかり刺す
②谷側の足を一歩踏み出す
③山側の足も一歩踏み出す。安定したらピッケルを突き替えて①に戻る
トラバース
ピッケルはつねに山側の手に持つ。山側の足のつま先を進行方向に向け、谷側の足は谷側に少し開いたV字にする。フラットフッティングで全部の爪をきかせるようにし、両かかとの間を約10cmあけて運ぶ。
トラバースのときは山側の足首が深く折り曲げられ、ステップが不安定で難しく感じるものである。急斜面のトラバースはとくに難しい。斜面の状況によっては山側の足のつま先も谷側へ向けると安定することがある。
①ピッケルを一歩前の位置にしっかり刺す
②谷側の足を一歩踏み出す
③山側の足も一歩踏み出す。安定したらピッケルを突き替えて①に戻る
フロントポインティング
60度以上の急斜面は、前爪を蹴り込むフロントポインティングで登ってもよい。斜面に正対して、キックステップの要領でつま先を蹴り込む。ステップができるか前爪が効いたら、乗り込んで立ち上がる。下降も同じ方法で行なう。
あまり急でない斜面では、片方の足を横向きにして内側の爪を効かせて立つ方法も有効だ。片足ずつ休ませながら登れる。つま先が開く形から「スリーオクロック」と呼ばれている。
フロントポインティング
ピッケルはピックを刺してホールドにする
スリーオクロック
フロント+横爪を使い、片足ずつ休めて登れる
プロフィール
野村仁(のむら・ひとし)
山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。
雪山登山入門
雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。
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