雪山登山に欠かせない計画づくり。なにから決めればいい?

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雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、雪山登山の計画づくりの方法を紹介したページを紹介しよう。

文=野村 仁、写真=PIXTA

雪山登山の計画

雪山登山は事前にしっかりと計画を立てることが重要だ。登山を実現するために必要な情報がわかるだけでなく、遭難対策の第一歩にもなる。

目標ルートを決める

最初に、行きたい具体的な山を決めることが始まりになる。

たとえば八ヶ岳の赤岳、北アルプスの白馬岳など。赤岳なら登るルートはほぼ決まっており、地蔵尾根または文三郎道が登れるかどうか、技術面が問題になる。しかし、白馬岳の場合はもっと選択肢が広い。最も登りやすいのは4月下旬からの残雪期、ルートは栂池からの往復が容易だ。

目標ルートを決めるときにまず考慮するのはグレード(難易度)ということだ。ルートによって難しさが変わるのは当然だが、雪山は季節によってグレードが大幅に変わる。年末年始と5月連休は営業する小屋が多く、小屋泊まりの雪山登山ができる。小屋利用が可能になるとグレードは低くなり、登りやすくなる。

雪山のグレードはいろいろな要素を組み合わせたもので、複雑でわかりにくい。そのなかで、あまり背伸びせずに、自分にとって少しだけ挑戦的であるようなルートを選ぶのが、雪山登山を成功させ、楽しめるコツである。

雪山登山のグレード例(本書での考え方)

体力グレード=おもに所要時間によるが、テント泊の重荷や、ラッセルの可能性も考慮する
技術グレード=ピッケル、アイゼン、ロープ使用頻度と、トレース状況などを考慮する

グレード 体力 技術
入門 日帰りで5時間以下。ラッセルなし ピッケル、アイゼンを使用しない。ほぼトレースがある容易なコース
★★ 初級 ラッセルなしで5時間超~8時間以内。またはラッセル主体で5時間以下 短い区間でピッケル、アイゼンを使用する(1~2時間)。またはルートが一部不明瞭な箇所がある
★★★ 中級 ラッセルなしで8時間超~10時間以内。またはラッセル主体で5時間超~8時間以内 ピッケル、アイゼンを長時間使用する(3時間以上)。またはルートの不明瞭な箇所が多数ある
★★★★ 中~上級 1泊2日までで、最長の日が10時間超。またはラッセル主体で8時間超~10時間以内 コース中に2~3カ所程度の危険箇所があり、少なくとも初・中級者に対してロープ確保が必須
★★★★★ 上級 2泊3日以上で、最長の日が10時間超。またはラッセル主体で8時間超~10時間以内 コース中に多数の危険箇所があり、スタカット、コンティニュアスなどの技術を駆使して登攀する
実力から大きく乖離しないルートを選ぼう
実力から大きく乖離しないルートを選ぼう

メンバーを決める

目標の山とルートが決まり、必要日数から日程も決まる。次にいっしょに行くメンバーを検討するが、このときに、初級者の友達を連れていくことは慎重に考えよう。初級者が加わったら、ルートも初級者がこなせるものにする必要がある。その結果、自分が登りたいルートは諦めることになるかもしれない。グループ内の最も弱いメンバーが参加できることが、雪山にかぎらず登山の大原則だ。自分のチャレンジか山友達と楽しむのか、目的をはっきりさせることが重要である。

ルートの選定ではメンバーの技術や経験をしっかり考慮する
ルートの選定ではメンバーの技術や経験をしっかり考慮する
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プロフィール

野村仁(のむら・ひとし)

山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。

雪山登山入門

雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。

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